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ばんえいで枠連・ワイド導入

  • 2015年03月20日(金) 18時00分


◆地方競馬IPAT参加の大義名分

 ばんえい競馬で、来年度の開幕(4月18日)から、枠複・ワイドが追加発売され、馬券の種類は、従来の単勝・複勝・馬複・馬単・3連複・3連単に加えて計8賭式になることが発表された。

 JRA-IPATで地方競馬の馬券に投票できる『地方競馬IPAT』がスタートしたのは2012年10月のこと。地方競馬の中でも、ばんえい競馬だけはこれに加われないまま今に至り、今回の枠複・ワイドの導入は、地方競馬IPATへの参加を目指してという性格が強いようだ。

 中央競馬と比較して馬券の売得額が少ない地方競馬では、馬券の種類ごとに売上げが分散しないよう(高額投票があったときなど不自然なオッズにならないようにするため)、かつては馬券の種類を絞る傾向にあった。極端な例では、3連複・3連単導入前の時期の高知では、単勝・馬連複・馬連単しか売っていないという時期もあった。また、笠松・名古屋では2012年5月まで、ホッカイドウ競馬では同年9月まで、ワイドの発売がなかったものの、その時期に導入されたのは、地方競馬IPATでの馬券発売に合わせてのものと思われる。ようは中央競馬と同じ種類の馬券を発売するためだ。

 ばんえい競馬で新たな券種を導入することでのデメリットは、先にも触れたとおり券種ごとの売上げの分散だが、特にばんえい競馬はフルゲートが10頭のため、9頭立て、10頭立ての場合は、枠連複と馬連複はほとんど同じ馬券になってしまう。

 ただワイドに関しては、ばんえい競馬の場合、平地の競馬より人気がアテにならない傾向にあるため、それを望むファンの声もよく耳にしていた。

 メリットとしては、地方競馬IPAT参加の大義名分である、中央競馬(や、他の地方競馬)と券種が同じになって、ファンの混乱が少なくなるということだろうか。たしかに、ばんえい競馬の他場発売などで予想イベントをやるときなど、必ず「ばんえい競馬では枠連とワイドは発売されていません」と案内するのはわずらわしい、ということはあった。

 ばんえい競馬では近年、フルゲートの10頭に満たないレースも多く、ならばいっそのこと、枠複導入に際しては、たとえば前半のレースだけでも8頭立てに制限するというのはどうだろう。頭数が減ることによって馬券的な妙味が低下するというリスクはあるが、8頭立て以下なら枠連複の発売がなく、券種ごとの分散を避けられる。

 それにしても地方競馬IPAT発売当初のJRAのリリースで、正確な文言までは覚えてはいないが、「地方競馬IPATでは、ばんえい競馬の発売はありません。今後も発売する予定はありません」という注意書きは、強烈な印象として記憶にある。競馬の種類が違うということのほかにも、さまざまな事情があったのだろう。

 券種を同じにしたからといって、すぐにということにはならないだろうが、これまでの地方競馬IPAT導入による馬券発売の伸びを見れば、なるべく早くに実現されればとは思う。

 さて、今週末(3月22日)は、ばんえい競馬の最高峰、1トンの負担重量で争われるばんえい記念が行われる。今シーズンの古馬戦線は確たる中心馬不在の大混戦が続いているだけに、実績馬が圧倒的に有利なばんえい記念といえども波乱があるのかどうか。

 現地に行かれる方はもちろん、ぜひともネット中継などを通じてでも、年に一度の感動をご覧いただきたい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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