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ばんえいの新年度に向けて

  • 2015年03月27日(金) 18時00分


◆若い世代、古馬ともにスター候補が名乗り

 ばんえい競馬は、29(日)、30(月)の開催を残しているものの、先週日曜日のばんえい記念をクライマックスとして、2014年度の開催をほぼ終えた。

 ここのところ、このコラムでばんえい競馬の話題が続いているが、シーズンの変わり目というのはさまざまに総括することがあるので、必然的にネタになることが多い。中央や南関東でも有馬記念、東京大賞典が終わると一区切りという感じはあるが、そのまま競馬は続いて年が変わるだけというふうでもあり、対してばんえい競馬やホッカイドウ競馬は、シーズン最大のレースが開催最終日近くにあり、それで一旦開催がリセットされる。そして新たなシーズンの開幕前には能力検査が行われ、開幕と同時に2歳戦もスタートする。ばんえい競馬やホッカイドウ競馬の年度替りは、小学校や中学校で経験した、学年がひとつ上がると同時にクラス替えもある、みたいな感覚にも似ている。

 さて、2014年度のばんえい競馬は明るい話題が多かった。何よりのニュースは、シーズン終了を前にして、帯広単独開催となった2007年度の売上げを上回り、帯広単独開催後では最高の数字を記録したことだろう。ばんえい競馬以外の地方競馬は、前回も触れたように2012年10月にスタートした地方競馬IPAT(JRA-IPATでの地方競馬の馬券発売)によってかなり売上が上がったが、ばんえい競馬だけはその恩恵にあずかれていない状況での売上げ回復だ。

 22日に行われたばんえい記念も、1着賞金が800万円までに戻った。かつてばんえい競馬の売上げが安定していた時期は、ばんえい記念=1000万円というのがひとつの象徴だった。それが2013年(2012年度)には300万円にまで下がり、しかし昨年が500万円、そして今回の800万円は、これも帯広単独開催後では、その初年度の700万円を上回る最高額となった。

 出走手当でも、一時期はかなり金額が下がっていたものが、2014年度には最下級条件でも開催替りで月に2走すれば、1か月の預託料の半分ほどはまかなえる程度にまでは回復している。

 こうした売上げの回復は、開催日程や時間帯の組み方に攻めの姿勢があっての結果と思われる。2014年度は、ナイター開催が過去最高となる110日間。薄暮開催が30日間で、デイ開催は13日間。ちなみにすでに発表された2015年度の開催日程では、ナイター開催がさらに増えて112日間。薄暮開催が37日間で、デイ開催は正月1〜3日のわずか3日間のみとなる。

 ネットでの馬券発売が大きな割合を占めるようになった今、特にその割合が大きい地方都市の地方競馬の場合、いかに他場と重ならない日程や時間帯に馬券を売ることができるかで、売上額が大きく左右される。たとえば佐賀競馬では、時期や曜日によって開催時間帯やメインレースの発走時刻を微妙にずらしている。また通年ナイターの高知競馬では、メインレースのレース番号を日によって大胆に変えたり、南関東がデイ開催となる1〜3月は平日に開催を集中させている。今シーズンのばんえい競馬では、日曜日よりも月曜日のほうが売得額が大きいことがたびたびあったが、これも他場と開催が重ならないことが理由だ。

 場内発売が馬券発売の大部分を占めていた時代であれば、日によってレースの時間帯やメインレースの時刻を変えるなどは、ファンサービスという観点では考えられなかったこと。それだけ時代や人々の生活が劇的に変化しているともいえる。

 近年、ばんえい競馬では正月開催を除いて重賞は日曜日にしか組まれていなかったものが、すでに発表されている2015年度前半9月までの重賞日程では、9月20日(日)に銀河賞、翌21日(祝・月)に岩見沢記念が組まれ、日月の連続重賞開催となる。これも馬券売上げに対する、新たな攻めの姿勢のひとつだろう。

 そして一時期は2歳馬の入厩頭数が減り、そのまま減少が続けば競馬の開催自体が危ぶまれるところだったが、売上げや賞金額の増額にともなって2歳新馬の入厩頭数も回復傾向にあると聞く。新年度第1回の能力検査は4月11日に予定されており、その登録締め切りは4月2日とのこと。1年前に行われた今年度第1回の能力検査に出場した2歳馬は142頭だったが、新年度はおそらくその頭数よりは増えるのではないか。

 今シーズンのばんえい競馬では、2歳シーズン(明け3歳)のチャンピオン決定戦、イレネー記念をセンゴクエースが無敗のまま制し、またばんえい記念では、前年に1番人気に期待されながら5着に敗れていたキタノタイショウが雪辱ともいえる勝利となり、あらためて古馬戦線の中心的存在であることをアピールした。

 若い世代、古馬ともにスター候補が名乗りを挙げたばんえい競馬の、新たなシーズンに期待大だ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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