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桜花賞展望記者座談会『ルージュバックの信頼度、評価真っ二つ』

  • 2015年04月05日(日) 16時00分
おじゃ馬します!

▲馬サブローのトラックマン、左から澤田記者、加藤記者、竹村記者、安里記者


去年の暮れに実施した好評企画、競馬記者によるレース展望座談会。今回はパワーアップし、栗東美浦それぞれから馬サブローのトラックマンが集結。確かな相馬眼と自信の情報を持ち寄り、「桜花賞」「皐月賞」「天皇賞・春」「NHKマイル」の激論を繰り広げます。今週は桜花賞展望。ルージュバックという最注目馬を、プロたちはどう評価するのか。

(出演メンバー:栗東から竹村浩行記者、安里真一記者、美浦から加藤剛史記者、澤田裕貴記者、司会:赤見千尋)



見ただけで「この馬はすごいな」と


赤見 竹村さんと安里さんは前回に引き続きのご参加で、加藤さんと澤田さんが初参戦。過去2回は栗東メンバーでの座談会でしたので、今回は東西の熱いバトルを期待しています!

一同 よろしくお願いします!

赤見 早速ですが、はじめに声を大にして言いたいのがですね、前回「GIはやっぱり関西馬でしょ」と言われてしまいました…。それが、ふたを開けてみれば、2歳GIはどちらも関東馬が勝利ですよ!! ねぇ、竹村さん、安里さん!

竹村 いやいや、だからね。うん、まぁ…、たしかにね、ダノンプラチナが1週前に栗東に来て、ブライトエンブレムと併せて追い切ったんですけど、「物が違うかな」とは思いました。ねぇ?

安里 そういや、あの馬、ジャパンCの日に500万下(ベゴニア賞)を勝っていて、ちょうど東京にいたので生で見てたんですよね。気性が怪しそうだけど強い競馬だった。とは思ったんですけど……、座談会の時にすっかり頭から抜けてました(苦笑)。

竹村 ショウナンアデラも、強かったしなぁ。あれは強かった。僕、レッツゴードンキを推してましたけど、ドンキはほぼ完ぺきに乗ってきて、それをさらに後ろから差したんだからね。

澤田 「本当にここから勝つの?」っていう位置でしたもんね。4コーナー回ってからワープして来たんじゃないの? みたいな感じで。

赤見 それだけに、骨折での戦線離脱は残念ですね。

澤田 たぶんレースが終わった時点でもう、脚が痛かったんだと思います。全治半年以上、復帰までにはちょっとかかりますね。

赤見 澤田さんはショウナンアデラやキャットコインの二ノ宮厩舎、ルージュバックの大竹厩舎、皐月賞のサトノクラウンの堀厩舎のご担当ということで、このクラシック戦線は大忙しですね。

澤田 いやいや。でも、いろいろと調べてきましたよ。

安里 僕もいろいろと調べた上で、ルージュバックが強くないということだけは分かった!

竹村 えぇっ、うそやん!? いきなりそんなこと……。

安里 人気ほどって意味も含んでるけどね。

竹村 そうかそうか。僕はルージュバックが勝って、スーパーアイドルになって欲しいと思うんですけどね。

赤見 早速気になる発言も出ましたが、まずはルージュバックをいつも見ている美浦のおふたりの評価はいかがですか?

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▲赤見「注目のルージュバックに気になる発言。みなさんのご意見を伺いたいです」


加藤 ルージュバックは走らせてると、他の馬と走り方が全然違うんですよね。それを見ただけで「この馬はすごいな」って感じるぐらいのレベルの走り方をする。それに、エンジンのかかり方もすごいですね。走るのがうまいというか。

竹村 可動域が広いよね。走ってると重さなんか全く感じさせない。飛んでるようだもん。

加藤 相当体がやわらかいんでしょうね。マンハッタンカフェの産駒のなかでも、どちらかというとスピードタイプの体型なんですよね。気性的にも、ちょっと危うい部分はあるんですよ。でもそこを我慢できているし、1600mは絶対向く馬だと思いますね。

赤見 ここまで1800m、2000m、1800mと3戦していて、今回が初の1600m。阪神も初めて。それが唯一の不安かなって?

加藤 逆に向いていると思いますよ。デビュー2戦は脚を溜める競馬で弾けてたんですが、前回はテンに気合いを付けてもちゃんと折り合えて、早めに動いて抜け出したのですから。僕は何の不安もなく、ルージュバックでいいかなと思います。

澤田 同じくです! 言うことないです。

赤見 これまで見てきた馬と比べて、ルージュバックはどれくらいの名馬級ですか?

竹村 僕はディープインパクト級かなって思うけどな。

一同 おぉ〜。

竹村 いやいや、希望も込めてね。スターホース、出てきてほしいじゃない。それこそ2戦目の百日草特別を見た時は、「こんな走り方する馬、見たことない!」って思ったよ。

安里 たしかにデビュー2戦の競馬はインパクトがあった。けど、この前のきさらぎ賞は「ホンマにそこまで強いんかな?」っていう疑問が残る。

竹村 あぁ…、前走はたしかにな。あれは「大丈夫か?」って一瞬思った。

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▲きさらぎ賞優勝時のルージュバック、安里記者・竹村記者の不安点とは


今年の桜花賞の一番のポイントは


赤見 それはどういうことですか?

竹村 この前は馬込みで、内目での競馬をしたじゃないですか。そしたら、飛んで行くまでに思ったより時間がかかったんです。それを考えると多頭数の阪神マイルで、それこそ内枠を引いてゴミゴミでもしたら…。

澤田 ちょっと出遅れましたしね。僕はそれでも、外に出して勝てるんじゃないかって思いますけど。

竹村 そうそう、外に出せればね。外枠当たって普通にのびのび走って来たら、突き抜けるんじゃないかと思います。ただ、枠順次第で勝率は変わってくるのかなと。

赤見 桜花賞の傾向で言うと、外枠の方がいいんですか?

竹村 結構外枠も買えるっていうか、むしろ外枠有利かなぐらいです。

安里 うん。桜花賞は外差しが決まるからね。

竹村 馬群で包まれてモゴモゴしてるより、スムーズに回って内の馬を押し込めるぐらいの方が上位に来るので。ルージュバックもそういう競馬ができればいいんでしょうけど。

安里 今年の桜花賞の一番のポイントは、馬場だと思うんです。ルージュバックってこれまで軽い芝でしか走ってないでしょ?

竹村 今の阪神って、ねちっこい馬場だもんな。例年の傾向だったら、桜花賞は軽くなるんですよ。

安里 そう、軽くなる。大阪杯の週からBコースに変わるから、それでどうなるかは皆さんにもよく見といてもらって。もしも今のままの馬場だったらどうなのかなと。

竹村 例年でいけば、Bコースに変わったら馬場が軽くなって、それこそ32秒台の上がりが出るぐらいの年もある。なんせ去年までは、Aコースの終わりの最終週ぐらいには、ちょっとずつ速い方に馬場がシフトしていったんだけど、今年はなんだかまだねちっこいんですよね。Bコースに変わったからってすぐに軽くなるのかっていうと、どうか分からないし。

安里 しかも、最近って急に馬場の傾向変わるでしょ。高松宮記念の週も、外側の芝を刈って前の週とは全然違ったもんな。いや、僕もね、今回の座談会は「ルージュバックでしょ!」ってしゃべってればいいよなって思ってた(笑)。けど、馬場を考えると、今の阪神の適性がどうなのかなという気はしてる。

それと、きさらぎ賞はどんな時計で走ったのかよくよく見てみたら、時計自体はたいしたことないのよね。それに比べて、同じ京都の前日のエルフィンSを勝ったクルミナル(栗東・須貝尚介厩舎)、距離の違いがあるとはいえ、こっちの時計の方が間違いなく内容が上だから。どちらかのレースで2頭が出ていたら、勝っていたのはクルミナルだったと思う。

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▲好タイムでエルフィンSを制したクルミナル、穴派の安里記者がイチオシ!


竹村 ラスト3ハロンのレースラップが11秒2-11秒2-11秒5。それを6番手から楽に差し切ったからね。10秒台のラップを2ハロン刻んでいるかも。いくらスローペースとはいえ、これはすごい。

※参考
ルージュバック:きさらぎ賞(京都、芝1800m、良)、タイム1:48.6、上がり34.4(前半ペース36.3-48.9-61.6、上がり3Fラップ11.7-11.6-11.6)
クルミナル:エルフィンS(京都、芝1600m、良)、タイム1:35.3、上がり33.5(前半ペース36.2-49.1-61.4、上がり3Fラップ11.2-11.2-11.5)

安里 2つは距離が違うけど、たとえ1ハロン延びて余分に1秒見積もったとしても、クルミナルの数字の方がすごい。僕は、ルージュバックじゃなくて、クルミナルで高配当を狙います。もちろん例年通りの軽い芝になればの話ですけど。

赤見 クルミナルは、チューリップ賞の時にあまりにもらしさが無かったのが気になりますが?

安里 なんで11着に負けたかというと、それはもう馬場ですよ。あのチューリップ賞って、もともとねちっこい芝に直前の雨が影響して、適性の差がはっきりと出る馬場になった。参考にはならないと思います。

赤見 そんなこと言って、勝ったココロノアイ(美浦・尾関知人厩舎)が関東馬だからじゃないですよね(笑)?

チューリップ賞 着順
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安里 違う違う違う! むしろ、ココロノアイは一番素直なレース運びで、一番強い競馬をした。ただ、あのチューリップ賞で一番評価できるのは2着のアンドリエッテ(栗東・牧田和弥厩舎)だと思いますけどね。3コーナーでラチにぶつかるような不利があって、しかもあの馬場で、それでも最後大外から伸びて来てるから。小柄なディープ産駒だけになおさら高く評価したいですよね。

竹村 うん。桜花賞が良馬場だったら軽くは扱えないなって思う。それにしてもアンドリエッテって、2走前のクイーンC(4着)で、賞金を加算できなかったのは痛かったね。まあ、自信があっての遠征だったんでしょうけど、小柄な馬で大幅減。あれはこたえたんじゃない?

安里 あの時はマイナス12キロか。

竹村 で、前回が馬体を戻してプラス10キロ。遠征後にもかかわらず、前走のタフな馬場で好走したのは評価できるけど、この2戦で消耗してないか、ちょっと心配が残る。

加藤 メンタル強いんですかね。普通は来ないですよ。しかも、鞍上に川田ジョッキーを持って来てるわけでしょう? 厩舎の姿勢を見ても、この馬相当走るんだって思いますよね。

でも僕は、アンドリエッテより、クイーンCで先着してるミッキークイーン(栗東・池江泰寿厩舎)の方が全然上だと思う。走りがデニムアンドルビーのイメージとかぶるんですよね。ミッキーは体戻ったんですか? クイーンCが20キロ減でしたけど。(※ミッキークイーンは抽選により除外になりました)

竹村 ふっくらしたとはとても言えない。ただ、クイーンCのパドック時ほど細くは見えないから、回復傾向にはあると思う。それでも2着に来るんだからなぁ。ディープ産駒って、大幅減でもまあまあ来るけど、それにしても減り過ぎてた。

加藤 逆にもう、ちょっとかわいそうだなっていう体つきでした。

安里 まあ、そうだけども、桜花賞出れても出られなくてもいいからクイーンC一本、あとのトライアルは絶対使わないって決めてたからね。早めにローテーションを確定させてたのは評価できるかな。それに、前回は東京に連れて行く前から減っていたからね。10キロ以上は減ってた。当時よりも食いが良くなっているそうだし、プラス体重での出走は間違いなさそう。

無敗の馬が3頭も!


赤見 今回ルージュバックの他に、クイーンズリング(栗東・吉村圭司厩舎)やキャットコイン(美浦・二ノ宮敬宇厩舎)も無敗ですね。

竹村 今年の桜花賞、めっちゃおもしろいと思うわ。すごいメンバーだもん。

澤田 同じ負けてないでもキャットコインとかは、ちょっとイメージが違うかなとは思いますけどね。クイーンCって社杯だけど、キャットコインの馬券買えた人、少なかったじゃないですか(苦笑)。

クイーンC 着順
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竹村 分かるわ〜。「強い」って感じがないもんな。

加藤 そうなんですよね。あの馬が走る理由っていうのは、見ても分からない。厩舎は走るって?

澤田 いや。最初の話はそこまででもなかったです。

加藤 そうだろう? アンドリエッテが強いって言うと、クイーンCのレベルが高いということになって、キャットコインが相当強いということになりますけど、いいですか??

竹村 ん〜。競馬が上手なのか、いつもドンピシャの位置にいるのか。

加藤 そう。ドンピシャの位置にいるんですよ。

澤田 2戦目のひいらぎ賞もハマったんだって思うと…。この中間、ちょっと体調面の不安があったんです。でも大事には至らなくて、無事に栗東に出発しましたからね。その辺りになって、ようやく厩舎から前向きな話も聞けるようにはなったんです。

竹村 関東馬が栗東に入ってくると、仕事増えるわ〜(苦笑)。

赤見 ルージュバックは美浦にいますよね?

澤田 そうですね。美浦で調整して結果を出したいっていう厩舎の方針もありますので。

竹村 桜花賞終わったらどうするの? ダービー行くの?

澤田 ダービーは登録してないです。オークスから凱旋門賞かなって思いますけどね。

赤見 ルージュバックは単勝1倍台でしょうかね。

安里 軽い芝になってスムーズな競馬したら来る気もするけど…、僕はまだ分からないんじゃないかなって。そんな、単勝1倍台の馬じゃないでしょ。

赤見 ディープ級って意見もあるのに(笑)。

竹村 いやいや、それぐらいのインパクトっていう意味でね。能力値うんぬんじゃなくて、“走る”ということに対してのセンスはズバ抜けてると思う。

安里 ブエナビスタ級?

加藤 ブエナだったら勝っちゃいますね。

澤田 たしかに、ジョッキーの間でも「ルージュバックがいるから、桜花賞行ってもしょうがないでしょ(笑)」っていう声もあるくらいです。

赤見 2番人気ってどの馬になるんでしょうかね?

加藤 クイーンズリングですかね。

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▲フィリーズRを勝利したクイーンズリング、無敗で桜花賞奪取を狙う


安里 うん。普通に考えたら、この前のフィリーズRは強い競馬だったけどな。距離も1800m、1600m、1400mって、変な使い方じゃない。以前ジョッキーに聞いたことがあるんだけど、本番前のレースが1ハロン長いか短いか、どっちが本番で乗りやすいかっていったら、短い方がいいって言ってた。トライアルは牧場サイドの使い分けでもあったし、そういうローテでも結果出して来てるし。

竹村 僕も、次点はクイーンズリングかな。フィリーズRは、外の芝が長くて脚を取られるような感じだったけど、それで外回って勝ったしね。この時体20キロ減ってたけど、そこまで細くは見えなかった。ちょっと頭は高いけど、フットワークはいいし、推進力もあるよね。

フィリーズR 着順
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赤見 ルージュバック以外関西馬の名前が多いですが、関東馬はどうですか? ココロノアイは?

加藤 ココロノアイ自身は、前回出して行ってもちゃんと折り合いついたし、確実に成長しているなという雰囲気が伝わりました。

竹村 パドックでも阪神JFの時は2人曳きで、この前は1人で曳いてたけど落ち着いてたし。その辺で成長してるのかなって思った。雨降ったらいいかもしれないね。

加藤 評価はしてあげたいんですけれども…、ココロノアイとキャットコイン、ステイゴールドのこの2頭は分からないです。何でそこまで走ってるのか、ちょっとつかめない。なので、関東から推すならテンダリーヴォイス(美浦・萩原清厩舎)にします。

安里 アネモネSですよ!?

アネモネS 着順
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加藤 ええ。トライアルとしては評価高くないですけど、テンダリーヴォイス自身は良い物持ってますよ。経験豊富だし、競馬がうまくて崩れない。

澤田 夏の北海道で奮闘したトーセンラーク、ノットフォーマルも当時とは見違えるほど成長しています。経験豊富で、タフな馬場も得意とする馬たちですので、極端な馬場になった時にはぜひ押さえていただきたいですね。

赤見 分かりました。関東馬にも、ぜひがんばってほしいです!

(次回は皐月賞の展望をお届けします)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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