スマートフォン版へ

「スターホースを作っていくのが調教師の仕事」矢作芳人調教師にインタビュー

  • 2015年04月07日(火) 18時00分
競馬の職人

矢作芳人調教師



矢作芳人調教師「遊びが充実してないといい仕事もできない」

 さあー始まりましたね、春のGIシリーズ。6月28日の宝塚記念まで続くと思うと気分がウキウキしてきます。

 C・ルメール騎手がJRA騎手になって初勝利を初重賞で飾るという鮮烈デビュー。同期のM・デムーロ騎手もデビューの週に阪急杯を制覇していましたね。これからの活躍が楽しみです。今週は、高松宮記念に出走のダイワマッジョーレ、桜花賞に出走のアースライズなど有力馬を多数管理する矢作調教師にインタビューしてきました。

常石 遅くなりましたが昨年のリーディング獲得(JRA54勝)、おめでとうございます。地方を加えると56勝ですね。開業初年度からここまで毎年多くの勝利を挙げてきていますよね。すごいことだと思います。今日はよろしくお願いいたします。

矢作 ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。

常石 先生は『厩舎の合言葉-よく稼ぎ・よく遊べ』とおっしゃっておられます。そして『信は力なり!!』『怒の連闘!!』などの合言葉が厩舎スタッフみんなに熟知されています。担当のトラックマンや記者の方も矢作先生の事を語ると『よく稼ぎ・よく遊べ』が出てきます。このスローガンの意味を教えてください。

矢作 この言葉の通りですよ。遊びが充実してないといい仕事もできない。スタッフもONとOFFのけじめをつけ、仕事の時はきっちり仕事をし、遊ぶときは思いっきり遊ぶ。管理馬にも調教・運動・休養とONとOFFの意識を身に着けさせる、ということは大事な事だと考えています。

 リーディングを取るには年間60勝くらいしないと取れないと思っていました。昨年はおかげさまで念頭から順調に勝ち星を挙げていたので、途中からスタッフにも伝えみんなで頑張りました。馬主さんを始めファンのみなさんや何より頑張って走ってくれた馬のおかげだと思います。60勝という大きな数字には届きませんでしたが、開業10年目の節目に目標を持ち、一鞍一鞍積み上げてきました。開業当時は、数字は意識しないで一つひとつ競馬と向き合っていこうと思ってやってきました。暑いときも寒いときもお正月休みもなく、早朝からしんどい仕事をするのは何を目標にするのか、と考えたらやはり勝つ喜びがあるからでしょう。公言すると追われるようなこともあったりし、かなりきつかった時もありましたがスタッフのモチベーションも高まりみんなよく頑張ってくれました。

競馬の職人

矢作厩舎のロゴマーク



常石 今年も順調に勝ち星を挙げておられますね。先日はM・デムーロ騎手鞍上のダイワマッジョーレで阪急杯の優勝おめでとうございます。強い競馬でしたね。

矢作 強かったですね。雨が降る不良馬場だったし出負け気味のマッジョーレは後方からの競馬になりました。コパノリチャードやミッキーアイルなど強豪が相手でしたので僅差ではありますがゴール寸前に差し切り勝つことができました。一時期勝てなくなってしまった時期もありましたが、よくここまで戻ってきてくれました。

常石 どこが変わってきましたか?

矢作 阪神Cでの調教から馬に気持ちが入ってきていたので阪神Cは勝ってくれるかな、と期待したけれど惜しかったですね。

 一昨年は、GIにあと一歩というところまで近づきながらその後不振が続いてしまいもう終わりかな、と思ったくらいでした。ですが外国人騎手のビュイック騎手に乗り替わり出走したチャレンジカップで久々の掲示板となる5着に入り、C・デムーロ騎手で阪神C3着、M・デムーロ騎手が騎乗した阪急杯では1年10か月振りの優勝までしてくれました。優先出走権を獲得したので高松宮記念に出走します。(取材は3月25日)

常石 高松宮記念に向けての仕上がりはいかがですか?

矢作 徐々に仕上げていくという調整をしたので上積みはあると思います。精神的にも落ち着いて馬もふっくらしていて状態の良さを表しているね。今回初めて1200mを使うことで新しい)面がでてくるかもしれないな。楽しみにしています。

 最近はスタートが上手くないのでうまく出てくれたらいいと思うが、騎手には指示はしない。騎手に任せるよ。1200mなのでレース当週は強い調教をしました。これで気合が入ってくると思います。

常石 今回もやはりM・デムーロ騎手ですか? M・デムーロ騎手とはご縁があるんですね。

矢作 そうなんです。グランプリボスでうちの厩舎が初めてGIタイトル(2010年朝日杯FS)を取った時の騎手ですね。今回の高松宮記念もチャンスですし、JRA騎手になって初GIのタイトルをプレゼントできたらと思います。『ミルコマジック』に期待します。応援よろしくお願いします。

 担当の甲斐助手にダイワマッジョーレを見せていただきました。馬房に入ると自分の世界に入ってる感じがして、馬の目にやる気モードが出ていました。小さい馬だけど、こんな馬は走ると思います。

競馬の職人

馬房でのダイワマッジョーレ



常石 世界をめざし挑戦している先生の展望をお聞かせください。

矢作 スターホースを作っていくのが調教師の仕事だと思っています。ダンスインザダーク・サッカーボーイ・サクラバクシンオーなど好きな種牡馬の血統で凱旋門賞など海外のレースに挑戦したいと思っています。

常石 先生の夢は世界に広がっていますね。今日は長時間ありがとうございました。

***

 いつもおしゃれな矢作先生。デザインもカラーも豊富なハットの帽子が厩舎の事務室・愛車の中・自宅と数えきれないほどあるそうです。どうしてですか? と伺ったところ「もちろん競馬はイギリスから来る皇室の競技だからいつも礼儀を正していたい」とおっしゃっていました。

 桜花賞も応援しています。つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング