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BTC育成調教技術者養成研修第33期生開講式

  • 2015年04月08日(水) 18時00分
開講式集合写真

開講式集合写真


19名の若者が参加した育成調教技術者養成研修第33期生の開講式

 晴れてはいるものの寒の戻りで気温があまり上がらない日になった4月7日(火)。浦河にあるBTC軽種馬診療所2階の会議室にて、今年度の育成調教技術者養成研修第33期生の開講式が執り行われた。

 午前11時。揃いのポロシャツと乗馬ズボンに身を包んだ19名の若者がマイクロバスで会場入りする。開講式に先立ち、まず「起立、礼、着席」の基本動作の練習から始まった。緊張と戸惑いの表情を浮かべる研修生たちに、礼の角度や頭を下げる時間(1、2、3と数え、4で上体を起こすようにという指示である)などが入念にチェックされる。

 集団生活は挨拶から始まる。そして規律ある行動が求められる。19名のこれまでの経歴はさまざまだが、部活などで厳しく鍛えられた若者は別としても、きびきびとした動作で行動したことのない人にとっては、いきなり先制パンチを食らわされたような感覚になっただろう。全員が揃うまで何度となくこの“練習”が繰り返された。

繰り返される規律礼着席の練習

繰り返される規律礼着席の練習



 控室にて待機していた保護者が後ろの席につく。各方面からの来賓も姿を現した。定刻通り、11時半より今年の開講式が開始された。

 佐藤博氏・BTC専務理事の式辞に始まり、来賓が次々に登壇して祝辞を披露する。名取哲哉・日高振興局長、池田拓・浦河町長、山野辺啓・JRA日高育成牧場長が、それぞれ「一流のホースマンを目指して訓練に励んで頂きたい」と研修生にエールを送った。

開講式

開講式の風景



 19名の出身地は、全国各地に分布している。遠くは大分県、福岡県、愛媛県といった九州、四国出身者もいる。大阪府が3人、兵庫県1人、京都府1人。三重県、石川県、静岡県など、中部以西の方が多く、東日本が少ない。地元北海道の出身者は1人のみ。男子17名、女子2名という内訳で、年齢は18歳〜23歳と、今年はかなり平均年齢が若いようだ。

 約30分の式典は無事終了し、記念撮影を終えた後、隣室に移動しての昼食会となった。高松勝憲・BTC所長の開会の辞で幕を開け、富田秀一・HBA日高軽種馬農協理事の乾杯の音頭で昼食会がスタートした。

 宴半ばで、恒例の「研修生自己紹介」が行われた。毎年、ここで研修生は、1分間の時間を与えられ、マイクを持って前に立ち、自己紹介をさせられる。開講式でのあいさつに続き、これもまたひとつの“訓練”というわけである。きちんと前を向き、多くの人々に向かって堂々とスピーチができるようになるのもまた研修の一環なのである。

昼食会

開講式昼食会



 競馬が好きという研修生が多く、それぞれ具体名を上げて「○○のファンです」などと公言する若者もいた。また、そういう時代背景なのか、親の競馬好きを間近で見ているうちに自分も興味がわいてきたと語る研修生もいた。20歳前後の子供を持つ親世代ならば、年齢は概ね40代後半〜50代前半くらいになるだろうか。ちょうど若かりし頃に一大競馬ブームを経験してきた世代でもある。ミスターシービー、シンボリルドルフ、オグリキャップなどをリアルタイムで見た世代とも言える。

 昼食会になってようやく研修生たちの表情が少しほぐれてきた。その中の数人と話した。

 板井将宗君は18歳。大分県出身で、この「親が競馬好きだったので興味を覚えた」という若者だ。また大阪府出身の神野大志君は、苫小牧市のノーザンホースパークで働いていた経歴を持つ。観光乗馬の引き馬などを担当していた由で、自分も乗ってみたいと思い願書を提出したという。翁長抄千子さんも大阪府だが、その名の示す通り、ご先祖は沖縄県の出身のようだ。また、城戸航君は愛媛県出身の18歳で、兄は中央競馬の城戸義政騎手である。

 1人、個性的な名字の若者が隣のテーブルにいた。静岡県出身の栗毛野貴祥君22歳。「くりげの」と読む。まさに馬業界向きの名字という他なく、すぐに名前を覚えてしまった。また折々に、研修生の訓練を見せて頂くつもりでいる。

 ところでこの研修制度は今春修了式を迎える32期生を含めると、これまで461名の修了者を送り出してきた。発足は平成4年。生産地の騎乗者不足を解消しようと、即戦力として働ける若者を育ててきた実績を持つ。平成11年〜14年までは宮崎でも研修を実施したが、現在は、ここ日高だけである。研修期間も当初は半年間だったが、現在は1年間。春に入講し、翌春に修了式を迎える。通常の学校とは逆に、開講式の後、修了式となるのは、この時期、1年先輩と約10日間、ともに在籍して作業手順その他を教えてもらう「引き継ぎ」があるからだ。

 ちなみに修了式は17日(金)。昨春入った32期生たちは、今、JRA育成馬の展示会(4月13日予定)に向け、訓練もピークを迎えている。この日、JRA職員とともにJRA育成馬の公開調教に騎乗することになっているからである。

 開講式のこの日も、千六馬場では、職員に交じって育成馬に騎乗する32期生を見かけた。

育成馬に騎乗する32期生

育成馬に騎乗する32期生



 本番まであと数日。来週月曜日には育成馬展示会、そしてその週の金曜日には32期生の修了式である。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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