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天皇賞・春展望記者座談会(前半)『ゴールドシップ、キズナ、フェノーメノ実績馬3頭を大分析』

  • 2015年04月19日(日) 16時00分
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▲美浦担当の澤田記者と加藤記者、3連覇がかかるフェノーメノの評価は?!


前回の皐月賞座談会で加藤記者が「今年のダービー馬!」と明言したドゥラメンテが、見事皐月賞を完勝。ダービー制覇への可能性が広がりました。次に検討するGIは天皇賞・春。2006年にディープインパクトが勝って以降、1番人気連敗中。歴戦の古馬たちが勝利を逃すシーンも多いだけに、読みの難しい一戦でもあります。そんな難解な天皇賞の展望を、2週にわたってお届け。前半の今回はゴールドシップ、キズナ、フェノーメノの実績馬3頭について、じっくり分析していきます。

(出演メンバー:栗東から竹村浩行記者、安里真一記者、美浦から加藤剛史記者、澤田裕貴記者、司会:赤見千尋)



闘争心が薄れてしまったのでは


赤見 さて、3歳GIに続きましては、伝統の古馬GI、天皇賞・春です。

加藤 3歳の話ならいくらでもできるんですけどね。天皇賞はなかなか難しいです。ある意味、一番興味ないGIですから。長いレース苦手なんです。

竹村 いや、分かるよ。展開によっても全然違うしな。

赤見 京都の3200mという距離も特殊ですし、それだけに読みも難しい…。

安里 一流馬が集まらないし、今のニーズに合っていない気はするけど、歴史のあるGI戦。関西の中でも天皇賞と菊花賞はお客さんも入るからね。盛り上げていかないと!

赤見 そうですね! ぜひとも、攻略のヒントを教えていただきたいです。ちなみに去年は1着フェノーメノ、2着ウインバリアシオン、3着ホッコーブレーヴでした。人気どころでは、キズナが4着、ゴールドシップが7着という結果。

2014年天皇賞・春 着順
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安里 あ〜そうそう、ホッコーブレーヴが人気薄で突っ込んできて、あわや勝つかって競馬だったよな。

赤見 すごい勢いでしたね〜。今年はフェノーメノのレース史上初の3連覇がかかっていますので、まずはその可能性から考えていきたいと思います。

澤田 僕は関東馬のフェノーメノ、応援したいですね。

安里 勝てば3連覇か。ここのところサッパリでも、得意の条件になると急に走り出す馬っているからね。

赤見 一昨年は日経賞を勝っての天皇賞優勝でしたが、去年は日経賞5着から天皇賞を連覇しています。

加藤 僕はデビューからダービーまでフェノーメノをずっと◎。この馬を熟知していると自負しています。去年の天皇賞当時の状態は、ハッキリ言って8割以下。それでGIを勝てるわけがないと思っていましたからね(苦笑)。

赤見 そう考えると、今年の日経賞は8着でしたが、もう一度巻き返しということもありますかね!?


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▲日経賞のゴール前、岩田騎手のアドマイヤデウスが重賞連勝を飾った


日経賞 着順
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澤田 今年の日経賞は馬なり中心の調整だったので、中身ができてなかったんじゃないかって思うんですよね。得意の舞台なら、変わってもおかしくないと。

加藤 いやぁ、去年とはちょっと違うんじゃないですか。今年の日経賞の競馬を見た限りでは、フェノーメノは人気になりようがないです。

竹村 たしかに、昨年の日経賞は5着といっても、勝負所と直線で唸って行くような感じがあったもんね。けど、今年は馬群に包まれたとはいえ、直線も淡泊だったからな。

赤見 でもフェノーメノって、いざ競馬になると「さすがGI馬」という仕上がりで出てきますよね。

加藤 昨秋から、見た目にはどこも悪くないんです。でも、中身が終わっちゃったんじゃないかと思います。

赤見 それはどういうことですか??

加藤 秋はリズムが悪くて結果を出せずに終わって、競馬に対する闘争心が薄れてしまったんでしょうね。だから、フェノーメノはもう、この先は厳しいんじゃないかなと思いますよ。

中山阪神の鬼、京都はマイナス


赤見 フェノーメノについてはなかなかシビアな評価でしたが、ゴールドシップはいかがでしょうか? 前走の阪神大賞典は岩田騎手が騎乗して、同レース3連覇を達成。現時点で天皇賞の出否は決まってないようですが、出るとしたら横山典騎手でと。

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▲こちらも岩田騎手の手綱、阪神大賞典はゴールドシップが3連覇


阪神大賞典 着順
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澤田 出るならば、急遽予定を変えての参戦になりますからね。なにより長距離は鞍上の手腕がものを言うだけに、横山典マジックに期待がもてますね。

安里 ファンの多い馬だからね。ただ、どうしても、京都のあの硬くて時計の出やすい芝が合わないんじゃないかなっていう不安はあるよね。タフな馬場での消耗戦を得意とする馬だから。

竹村 そこなんだよね。う〜ん、もちろん強い馬だし、好走の可能性も十分あるとは思うんだけど、なんせ京都の緩急のある流れは得意じゃない。それこそ、勝負所で流れが激しくなる展開なら、その1歩も2歩も前からふかしていかないと駄目なタイプだからね。

澤田 阪神大賞典の勝ち方は、昨年と比べると不満は残りますけど、有馬記念の後にAJCCを挟むローテーションだったことを考えると、よく立て直したなと思いますけどね。そういう評価はできるかなと。

安里 う〜ん、勝つには勝ったけど、阪神大賞典が得意とする馬場だったし、これまでの実績を考えると、もっと強い勝ち方をしても良かったかな…とは思うんだよね。もう、一番強かったころのパフォーマンスはできないんじゃないのかなっていうか。

加藤 それは間違いない。さらにズブさも強調されてきて、全盛期の迫力がないですからね。中山、阪神の鬼ですし、今回の京都はマイナスです。

安里 たしかに、阪神は鬼。なのに前走、最後に一瞬つかまるんじゃないの…って思わせた。これまでだったら、そう思わせることすらなかったでしょう?

竹村 なかったな。得意の阪神で一瞬でも「差されるの?」と思ったのは、初めてかもしれない。ただ、2着のデニムアンドルビーが相当走ってたと思うけどね。

赤見 逆にデニムの好走が目立ったと?

竹村 うん。昨秋あたりは力のいる馬場で伸び負けしてたのに、あそこまで追い詰めたからね。ここにきてさらに力をつけたかも。スタミナがあるのは証明したし、パンパンの良馬場なら本番でも侮れないと思うな。

キズナは左回り巧者なのか


赤見 ゴールドシップに対しても厳しいジャッジ…。となると、キズナの評価が気になるところですが。

安里 去年の天皇賞は4着で、直後に骨折が判明したんだよな? 京都記念の復帰戦でも「おっ」っていう競馬は見せてくれたからね。ロンシャンの芝で結果を出しているし、あのタフな馬場でも大阪杯は勝ってくれるかと思ったんだけどね。

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▲不良馬場の大阪杯、1番人気のキズナは2着、勝ったのは牝馬のラキシス


大阪杯 着順
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赤見 ラキシスに2馬身差の2着と。

竹村 去年はエピファネイアをきっちり差したけど、あの時はエピファネイアが本調子じゃなかったでしょう。だから、レベルはさほど高くなかったと思う。なので今年はそんな簡単に行くのかなって思ってた。で、ラキシスに内から差し切られたわけでしょう。下が緩かったにせよ、最後は離されてたからなぁ。本番に向けてはちょっと、物足りない内容だったと思う。

澤田 馬場を意識して早めに動いたにしては脚を使ったんだけど、内から差されるあたり、本来の切れ味が戻っていない印象は受けますよね。それは、馬が骨折した時のことを思い出して、もう1段階ギアが上がらないのかなという気もするんですよ。

竹村 そうそう。脚をかばいながら加減して走っているんじゃないかという疑いだよね。もちろん、個人的な考えではあるんだけど。

加藤 あとは、距離に対する不安があるのかなっていうのも感じます。キズナは、3歳春の頃なんかは「なぜNHKマイルじゃないのか?」って思っていたくらいで。

赤見 そうなんですか!? デビューから1800m以上しか走ったことないですけど、マイル向きではないかということですか?

加藤 個人的に、馬体はマイラーという見立てですね。今期はより筋肉質の体つきに変わってきているので、なおさらそう感じます。大阪杯で一気に伸びてきた脚の速さはさすがでしたが、最後は止まってしまいましたから。

安里 たしかに最後は止まったけど、今の阪神は後ろから外を回って差し切れるような馬場じゃないからね。あれはコース取りと馬場適性の差じゃないの? それでも外から押し上げていく脚はさすがだったし、地力は見せたと思う。これまでの実績も考えたら、天皇賞でもいいところはあるんじゃない?

赤見 評価が高いですね。

安里 古馬になってからはどんどん走りに凄みが出ているし、さすがだなって思うけどね。馬券には入れておかないといけない一頭でしょ!

竹村 キズナってさ、左回りの方が絶対いいと思うのよ。去年の天皇賞の追い切りで手前を変えてなくて、「あれ?」みたいにちょっと話題になったじゃない? 京都記念でも大阪杯でも、右手前の時はすごい勢いがあって伸びてきたのに、左手前に変えた途端、切れが鈍ってるからね。京都記念はそれこそ残り200mを切るぐらいのところまで変えなかった。大阪杯はそれより早く変えたけど、手前を変えて4、5完歩したあたりから急に鈍ったからね。直線向いた時「これは勝ったな」って思ったぐらい勢いがあったのにだよ。

安里 手前の変え方は、馬の個性とかレースでの疲労とかいろいろ要因もあると思うけど、実際、どっちの手前の方が得意だ…ってコメントはよく聞くもんね。そういう見方もあるのかもしれないな。

竹村 長距離戦では重要だと思うんだけどね。まあ個人的には復帰2戦を見て左回り巧者というのがより強まったのと、それ以外で考えられるのは、さっきも言ったように加減して走っているんじゃないかという疑い。もちろん軽視はできないけども。ここ2戦の内容、手前変え、右回り3200mという舞台とかを考えると正直、突き抜けるイメージはあんまり湧いてこないな。

赤見 となるとみなさん、本命はこの3頭以外ということになりそうですね。ちなみに、天皇賞の最近の傾向と言いますと?

安里 今の京都って、外差しをあんまり見ないような気がする。内ばっかり。特に芝は時期を問わずだね。まあでも、今はどこの競馬場も来るのは内ばっかりだなぁ。

竹村 たしかにそう。馬場を保つ技術とかも昔と全然違ってるからね。

安里 芝が剥がれても叩いて固めてるから、結局は内の馬ばっかり伸びるんだよね。

赤見 茶色っぽく見えても、逆に良かったりしますもんね。

安里 やっぱり当日の馬場の傾向って重要だもんね。直線は内外、どこを通る馬が伸びるとか、今日は時計が速すぎるから後ろからの馬はいらないな…とか。

赤見 当日の馬場の傾向も大事なんですね。今回、前哨戦の中では、どのレースを重要視されますか?

安里 この春の阪神は雨が多くてタフさを要求される馬場だったし、特殊すぎて参考にならないと思う。って考えると、日経賞がつながって来るのかなっていう印象かな。

竹村 特に今年の日経賞は、びっくりするぐらいの時計だったもんね。素直に評価できる前哨戦だったと思う。

(つづく)

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▲馬サブローのトラックマン、左から澤田記者、加藤記者、竹村記者、安里記者

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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