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栗東トレセン公開調教ツアーに参加してきました!

  • 2015年04月21日(火) 18時00分
競馬の職人

見学に参加したファンと一緒に



栗東トレーニングセンターで行っているGIレースの公開調教ツアーをお手伝いさせていただきました

 桜花賞の岩田マジックに続き皐月賞ではデムーロマジックがさく裂・・・! 前走の共同通信杯で折り合いを欠きながらも上がり最速33.7秒の末脚を繰り出していた破壊力NO.1の心臓の強さをもつドゥラメンテ号が完勝。前走は勝利するも今回は後1歩及ばなかった2着リアルスティール号との決戦は、東京優駿へ・・・。

 そして土曜日行われた中山グランドジャンプでは人馬そろって初優勝! 4:46.6秒のレースレコードに加え、2着馬に10馬身以上の大差をつける圧勝でジャンプ界の新ヒーロー誕生となりました。林騎手は、騎手生活30年目にしてこのレースに10回目の挑戦で初優勝。おめでとうございます!!

「引退までには何とかGIを勝ちたいと思っていたので夢がかなった」と照れ気味に話す林騎手に拍手です(パチパチ)。年末の中山大障害も勝ち年度代表馬を目指します。と夢は現実へと大きく広がりました。

 大竹柵を飛越するとき、大声で「林先輩。いけー!!」っと叫んでいました。アップトゥデイトはJGI初挑戦で強い競馬を見せてくれました。白い芦毛の馬体に黒いメンコ・・・思わずゴールドシップか? と勘違いするほど豪快に走っていました。年末が楽しみですよね。

 林先輩曰く「遅咲き騎手やな・・・」とも言っていましたが、乗っていたらいつでもチャンスがあるということを証明してくれ感動しました。サッカーの三浦知良選手も最年長ゴールを決めていましたし、アラフィフの大活躍です。

 今週のコラムでは、ファンの方にも登場していただきました。栗東トレーニングセンターではGIレースの公開調教ツアーを行っています。先々週は、桜花賞開催の時。細江純子さん司会で僕も同行させていただきました。先週は、皐月賞の公開調教ということで朝5時30分にトレセン事務所に集合し、マイクロバスで来賓用のスタンドへ同行。アナウンサーの蜂谷薫さんが進行役で僕もお手伝いさせていただきました。さっそく朝いちばんの調教を双眼鏡でのぞくファンのみなさん。今日は競走馬の醍醐味を肌で感じていただきたいと思います。

蜂谷 皐月賞はクラシックレースの始まりなのでとても大事なレースです。今年は、強い馬が多いので予想が難しいですね。皐月賞・ダービー・菊花賞すべてを勝利し3冠馬と呼ばれる馬はセントライト・シンザン・ミスターシービー・シンボリルドルフ・ナリタブライアン・ディープインパクト・オルフェーヴルと7頭しかいない。その仲間入りをするために必要な1冠です。

 皐月賞は仕上がりが早い馬が勝つ。ダービーは運がいい馬が勝つ。そして菊花賞は、強い馬が勝つと言われていますが、みなさんはどう思われますか?

 中山競馬場は、小回りコースでトリッキーになってるためスピード馬が勝つといわれています。栗東トレーニングセンターは山になっているところが坂路といって登り坂のコース。目の前に見えるコースは最内が障害調教コース・Bコースはダートです。Cコースはウッドチップ。Dコースは芝で、一番大外がニューポリトラックと言う人工素材で作られています。

 そして追い切りの時、速い馬は外から前の馬を追いかけていく。こうして3冠馬が作られてきました。

 昔は、輸送に時間がかかり大変でしたが、ドバイなどの海外への挑戦も直行便などが飛んでくれるようになりました。世界各地で馬の取り扱い方が理解されるようになったことでドバイやフランスへの輸送リスクが軽減され凱旋門賞に挑戦できるようになってきました。いつか日本馬が世界最高峰の凱旋門賞を制覇する日が来てほしいと思います。

***

 見学をしている僕たちの所に浜中騎手が駆けつけてくれました。

蜂谷 今年の皐月賞の騎乗馬はキタサンブラックですがどんな動きでしたか?おしえてください。

浜中 3連勝している馬で臨むわけですし、こんないい馬に乗せてもらい光栄です。

蜂谷 サトノクラウンも無傷の3勝馬だから無敗同士の対決はおもしろいね。どっちの馬が連勝を伸ばすのか? それとも中に割って入る馬が現れるのか?すごい対決になりそうだね。

浜中 そうですね。僕の馬(キタサンブラック)も調教で乗って感触を確かめましたが、仕掛けたらビュッと伸びて最後までしっかりハミを取っていい反応をしてくれてしっかり走っていました。馬場が悪くても動けますし、乗りやすい馬ですね。さすがGIに出走予定の馬ですね。他にも強い馬がいますが、いい状態で皐月賞へ出走します。

競馬の職人

駆けつけてくれた浜中騎手と



蜂谷 馬場が悪くても動けるのは頼もしいですね。みなさんと期待しています。ありがとうございました。

浜中 応援よろしくお願いします。ありがとうございました。

蜂谷 3冠馬の話をしていると大久保正陽元調教師が来てくれました。ナリタブライアンは強かったですね。3冠馬の中でも一番強かったんじゃないですか?

大久保 やはり一番思い出に残ってるね。いつもハラハラしながら見ていたが南井騎手と相性が良く、強かったな。あんなに一生懸命に走らんでも頭差くらい先にゴールしたらいいんだよ(笑)。

蜂谷 ナリタタイシンも強かったですね。93年ナリタタイシン、94年ナリタブライアンとナリタの馬で皐月賞を連覇されましたが、あれはすごかったです。豊騎手がビワハヤヒデとウイニングチケットを大外から一気に抜き去ってゴール板へ突っ込んだときは、ファンも騒然としていました。

常石 蜂谷さんはレースの内容まで覚えていてすごいですね。今でもレース実況でレースを再現できそうですね。

蜂谷 あのレースは見ごたえありました。そしてブライアンはもっとすごかったから今でも最強馬でしょう。

大久保 僕はそう思ってるけど池江(泰郎元調教師)はディープインパクトだと言うね(笑)。僕は、引退してからもう10年以上たってるから、条件も調教の仕方もずいぶん変わってきてこれからもっと強い馬がどんどん出ると思う。

常石 僕が印象に残ってるのは、阪神大賞典でのマヤノトップガンとのマッチレースは気迫が違っていました。レース後、いいものを見た心地よい余韻が残り記憶に残るレースです。気性面では、激しかったんですか?

大久保 テンションが高く、特にレース前になるとわかるんだね。興奮するんだ。対策を練ってローテーションの間隔を詰めて多くのレースに出走しエネルギーの発散をさせた。それで興奮度を和らげていった。3歳デビューから4か月間で7回出走させた。

 あとはレースに集中させるために3歳秋(当時の表記)からシャドーロールをつけ下方の視界を遮ることで集中力を発揮するようになった。精神力の強いサラブレッドでした。

常石 そこからの快進撃でブライアンは「シャドーロールの怪物」と呼ばれるようになったんですね。いろいろ対策をされたようですが、デビュー前から高い素質を感じておられていたんですか?

大久保 デビュー戦の直前に調教に騎乗した南井騎手が加速の仕方がオグリキャップに似ているからこの馬は走る、と言っていたこともあって走るという感触を持っていました。デビュー戦は2着に敗れたものの「この馬は強い、物が違う」と確信しました。南井騎手に「ダービー勝てそうか?」と聞くと「まー行けるんじゃないかな」というくらい風格がありました。

競馬の職人

大久保正陽元調教師と



蜂谷 このスタンドすぐそばの天狗山にナリタブライアン像があります。そしてトレセン入口にシンザン像が実物大であるので見ていってください。そして今週は、皐月賞の前に中山グランドジャンプもあります。常石元騎手にジャンプレースのことを聞きましょう。

常石 ジャンプに出走する馬は、騎手が作っていきます。一番中央にあるコースで棒一本をまたぐところから教えていきます。水郷や竹柵などをみせここを飛び越えていくんだよと繰り返しおしえていきます。京都競馬場へも行き練習します。

 中山グランドジャンプのコースは、距離も長く4250m走るのでタフで丈夫な馬でないと走れません。坂の上り下りはジェットコースターのような感じでゴール前200m地点に高低差2.3mの急激な登り坂があり、心臓破りの坂とよばれています。大竹柵は高さもあり幅もあるのでより歩幅を大きく、飛越をより高くしないと越えられません。大小合わせて10個の障害物を飛越します。障害物を飛び越えたときファンの方から拍手をもらうと全馬無事に飛び越えたんだな、とうれしくなります。そして次へと進むことができるのでファンの拍手がパワーになります。

 今日の一番の楽しみは、西谷騎手がマイクをつけて障害調教の様子を伝えるところです。僕もイヤホンをつけて聞きました。飛越の瞬間など心臓がドクッとしましたね。

蜂谷 ジャンプレースは、騎手自身が馬を作っていくので大変ですが面白い面もありますね。せっかくなので質問などもしてください。

ファンA 競馬場とは、全然雰囲気が違うのでびっくりしました。

ファンB トレセンには何頭くらい馬がいるんですか? (常石注:約2000頭います)

ファンC 中山コースにある竹柵の高さは何mくらいありますか? (常石注:大竹柵は高さ160cm、幅205cmあります)

ファンD 競馬の見方が変わります。もっと真剣に考えてレースだけではなく血統などにもこだわっていきたいです。

ファンE ここ何年かは競馬場へ行かなかったけどまた行きたくなりました。

ファンF こんなに広いとは思いませんでした。生で調教を見ることができよかった。

ファンG 蜂谷さんやJRAの方、騎手の方の話はよく分かり、朝早かったけど参加してよかった。

ファンH 調教のコースの中央にはどうやって行くんですか? (常石注:そのための地下馬道があります)

ファンI ハロー掛けの車が狼煙のような旗をつけて馬場を整備するのも驚きでした。

ファンJ 障害飛越の時、高さがあるのと幅があるのではどちらが大変ですか? (常石注:幅があるほうです)

 ファンのみなさん、ありがとうございました。まだまだたくさんの方がいろいろ話してくれました。また機会を作りコラムに載せたいと思います。

***

 大久保先生とは引退されてから初めてお会いし貴重な話が聞けてうれしかったです。ご病気されているとお聞きしましたが競馬の話になると声も大きく顔も和らぎにこやかに話してくれました。

 蜂谷さんもすごい方でした。馬・騎手はもちろんですがレース展開も血統もみんな覚えていました。丁寧な説明で話もよくわかりファンの方も楽しんでいただけたと思います。経歴もすごい方で1分間に1000文字しゃべれるというスピードと歯切れの良い口調で名勝負の実況をたくさんされてきたそうです。またフルマラソンもされていて国内外で170以上のレースに参加。実況も体もタフな先輩です。個人的にゆっくりお話しできなかったのが残念でした。またよろしくお願いします。

 競馬開催時の12R終了後、ファンの方たちに場内のバックヤードツアーの案内をした時に一番喜ばれるのが、地下馬道を抜け本馬場に入った時です。歓声が沸きます。これからもいろんな企画をして競馬の魅力を幅広く伝えていきたいと思います。つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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