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典さんなら、逃げると思ってました……

  • 2015年04月30日(木) 12時00分


先週日曜日に浜中騎手がキタサンブラックで3着した皐月賞について、デイリースポーツの自身のコラムで、このように述べていた。

「逃げることも考えていたのですが、クラリティスカイがハナへ行ったので2番手から。典さんが逃げるかもしれないとは思っていたので、これは想定内でした」

典さんが逃げるかもしれない……

典さんは逃げるかもしれない……

「典さんの引き出しにはいつだって『逃げ』がしまってある」ことが、浜中に限らず多くの騎手にインプットされているのかもしれない。

クラリティスカイは弥生賞で4番手の競馬を、いちょうSでも3、4番手の競馬をしていて、横山典では先行していたから、逃げは通常よりは想定しやすかったかもしれない。
だとしても浜中騎手から「想定内」というコメントが出たのは、なかなかに興味深い。

そういえば、日経賞でも、横山の典さんはフラガラッハで逃げた。
フラガラッハが逃げて、最初の1コーナーをいい感じで回ったのを見て、自分は「もらった!」(◎でした)と柏手を打った! けれど直線で踏ん張りきれずに5着に敗れた。
馬の力がそこまでだった…で片づけてもいいのだろうけど、典さん特有の不意打ちでの逃げだったし、今までなら勝ってもおかしくないパターンだっただけに、負けたのを見て、ちょっとガックリきた(名手系が突然逃げを打つときは、確信があるときの方が多い)。ただ皐月賞での浜中騎手のコメントで納得だ。

典さんの逃げは、今や想定内。
うむ。もはや、きっと、いつだって、そういうことなんだろう。
そして、それを見越して、行動する騎手がいる。
それが皐月賞の浜中だった。若い!

こうなるとそうそう簡単には逃げられないぞ!
どうする横山の典さん!!
寝耳に水の寝起きドッキリに引っかかる騎手はいなさそうだぞ!

って、なんだか、
横山の典さんがゴールドシップで逃げるって決めつけたかのように書いてしまった。たは!
でも、実際どうなんだろう?

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ゴールドシップは逃げるのか?
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須貝師が横山の典さんにどのような頼み方をしたのか知らないけれど、
ふつうに考えると、天皇賞春と宝塚記念をセットで頼んでいるとは想定できる。

過去2戦2敗の天皇賞春だけど、この2敗戦を経て、過去2戦2勝の宝塚記念に出走している。もし本気で宝塚記念3連覇を狙っているのなら、世間に何を言われようが天皇賞春を使うのが一番だろう。

13年 阪神大賞典1着→天皇賞春5着→宝塚記念1着
14年 阪神大賞典1着→天皇賞春7着→宝塚記念1着
15年 阪神大賞典1着→

だとしたら、逃げは十分考えられる。

典さんは去年の宝塚記念で、ゴールドシップを先行させて1着させた。
つづく札幌記念ではマクって、2着させた。

13年の天皇賞春(内田博)は15-13-6-4の位置取りで5着に負けた。
14年の天皇賞春(ウィリアムズ)は18-18-15-14の位置で7着に負けた。

マクって負けて、追い込んで負けている。
ならば過去にはない戦法で挑むのは、騎手が横山の典さんならふつうに考えられる。
過去の天皇賞春が結果的に差し系の競馬だったのだから、今年も同じように追い込み、もしくはマクリに出るのではないか? とも思わなくはない。けれど、騎手は天下の典さんだ。

いくら宝塚記念が勝負だとしても、天皇賞春で、勝つためのトライをな〜〜んもしないなんてことが、典さんにできるのだろうか?

否。騎手の本能がそれを許さない(はず!)。
それゆえに「逃げ」もありうると見ている。

菊花賞のときのコラムでも書いた。
「横山の典さんは、仮想の敵(1人気が多い)を作って、その馬と真逆の脚質か、同じ脚質(マーク)で勝負する傾向にある」と。

ゴールドシップは、少なくとも天皇賞春では王者ではない。予想でも人気は5人気と出ている。凱旋門賞を除けば、これはデビューして最低の人気だ(皐月賞の4人気が最低だった)。立派な挑戦者だろう。つまり典さんが仮想の敵を見立てるのに十分な立場だとも言える。今まで差して、馬券圏内にも入れなかったのだから、トライするなら先行だろう。

では、どの馬を仮想の敵と見立てるのか?

本来ならばキズナだ。っていうか、キズナであって欲しい。
キズナだと簡単だからだ。

一番後ろのキズナから一番離れたところ、つまり先頭にいる。
うむ、実に簡単だ。

ディープインパクトにリンカーンで挑んだときは、先行して早めに仕掛けて押し切ろうとした。しかし、ディープインパクト武豊の特大マクリにあって、2着に敗れた。

ディープインパクト 16-14-4-1
リンカーン     5-5-4-2

去年も書いたけれど、キズナはディープインパクトとは違う。
ディープインパクトは前走の阪神大賞典で、天皇賞春でのマクリを想定した練習をしていた。しかし、キズナは常に後方〜最後方の競馬で、道中ポジションを上げる競馬をほとんどしていない。

キズナに関しては、勝つ競馬というより、キズナのよさを引き出す競馬に終始している(そういう競馬しかできないという判断か)。だから前が止まらない高速馬場では、勝ち切れないことも当然ある。
特に天皇賞春は、4角5番手以内にいないと勝てない。
(スズカマンボが記録では4角8番手となっているけれど、最内を回って、4角を回ったときには、前との差はわずかで、実質4角4、5番手の位置にいた)

ゆえに思う。今回もキズナは自分の競馬に徹するのではないか。多少位置を上げることはあっても、10番手より前にいることはないだろう。

その真逆のポジションは先行。
典さんの先行で、考えられる戦法は4つ。
1 逃げ
2 途中から逃げ
3 前目の先行
4 後ろ目の先行→動いて4角1,2番手

逃げはイングランディーレでの大逃げ1着、ホクトスルタンでの普通逃げ4着の経験あり。
途中からの逃げはセイウンスカイで3着したときがそうだった。
最初の4コーナーまでは4番手くらいを追走して、直線で外から徐々に先頭に立って、1コーナーで逃げの態勢を整える、典さんがときどき見せる戦法だ。最近ではダイヤモンドSのネオブラックダイヤで使っている(5着)。
先行はリンカーンで2着、後ろ目の先行はサクラローレルで2着したときがそうだった。

天皇賞春だけから拾った、先行競馬なのに引き出しがいっぱいだ。

すべては枠次第だろうけど、外目の枠に入ったら、途中からの逃げをしそうだな…。去年の宝塚記念では逃げなかったけれど、外から先行させて、ゴールドシップを1着に導いているし…。

あ〜なんか見えて来たぞ!

最初の4コーナーまで、3〜4番手を外から追走し、
直線に向いたら、内の馬から距離をとって、遠くから先頭に立ち、
1コーナーに入る時に内ラチを奪って、
先手争いに終止符を打ち、
あとは快適に先頭を走る……。

これだ。きっとそうだ。

ここから、イングランディーレのときのように大きく離して逃げるか、セイウンスカイのときのように2、3馬身離して逃げるか、ホクトスルタンのときのようにふつうに逃げるか、そこはわからない。あとはゴールドシップとのコミュニケーション次第だろう。

とはいえ、すべては、典さんがキズナを仮想の敵と見立てているという前提での話だ。

現在の予想オッズでは、
1人気 アドマイヤデウス
2人気 キズナ

週中の世間の評価はアドマイヤデウスの方が上になっている。
はたして、典さんはキズナをどう見ているのか?
世間の評価はどうあれ、「キズナ侮りがたし」であって欲しい。
っていうか、もうどれが敵でもいい。
書いていたら、ゴールドシップで逃げを打つ(できれば大逃げを打つ)シーンが見たくなっちゃった。

ちなみにアドマイヤデウスは岩田騎手だから、おそらく中団前目の競馬ではないか。
以下は、岩田が天皇賞春で掲示板に乗ったときの馬たちの位置取り。

アドマイヤジュピタ 11-11-10-5 1着
エアジパング    7-7-8-7    5着
トーセンジョーダン 7-7-7-5    2着
アドマイヤラクティ 11-11-14-10 4着

アドマイヤデウスの直近2連勝の競馬と照らし合わせるとトーセンジョーダンっぽい競馬をしそうだ。

とはいえ、アドマイヤデウスを2つの理由でナイガシロにしようと思っている。

1 もし1人気なら、勝てない。あっても3着まで。
天皇賞春は1人気に厳しいレースだ。勝てるのはディープインパクト級の馬だけ。アドマイヤデウスが弱いとは思っていないけれど、ディープインパクト級の力があるとは、まだ思えない。

2 2連勝以上で臨む馬の成績はよくない。
この10年で馬券になったのはビッグゴールドの2着のみ。この馬の2戦はオープンのレースだった。
大阪城S1着→大阪ハンブルクC1着→天皇賞春14人気2着

すべてではないけど、中距離重賞を連勝してくる馬は、その距離こそが適距離だった可能性がある。
しかも、重賞を連勝して来ると人気になる。当然だ。
でもそれで1人気になった馬はみんな馬券圏外だ。

トゥザグローリー 1人気13着
アサクサキングス 1人気9着
アイポッパー   1人気4着
ゴールドシップ  1人気5着(おっと。でも今年は違う)

週末は、キズナが1人気になるとは思うけれど、もしこのままアドマイヤデウスが1人気になったら、危険な人気馬に仕上がってしまうかもしれない。

ちょっと脱線してしまったけれど、
とにかく、
ゴールドシップは逃げる、つーか逃げて欲しい!

たとえ、ここを使って、勝負は宝塚記念だとしても、そんなの関係ないとばかりの競馬を横山の典さんにはして欲しいのであります。

で、振り出しに戻ります。

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典さんなら、逃げると思ってました。
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誰が言うかな?
典さんの逃げを想定した上で、レースを組み立てられる騎手は誰かな?

浜中にもう1回言って欲しいところだけど、自分はデニムアンドルビーのポテンシャルは54キロまでと想定し、阪神大賞典で推奨したから、56キロの今回は推奨できない。手のひら返しは得意な方だけど、今回はやめておく。

田辺(クリールカイザー)

いいね。口に出すかはわからないけれど、心の中では思っていそうだ。
脚質的にバッティングしそうだけれど、先手を典さんにゆずって、ゴールドシップの作る流れを利用して、仕掛けたら、面白そうだ。

川田(ラストインパクト)

浜中のライバル、川田が言う。いいね。ただ川田も寡黙っぽいから、口には出さなそうだ。
思えばここ2戦の鞍上・菱田にはちょっと遠慮があった気がする。
一方、川田は攻めの騎乗ができる。ここは魅力的だ。
松田博厩舎は、とかく最後のダービー、最後のクラシックが注目されがちだけど、G1はすべて最後なわけで、どんなG1でも勝ちたいはず。馬も阪神より京都の方が得意だから、川田が典さんの作る流れに上手く便乗できれば、京都大賞典みたいな結果を導けるのではないか。

田辺、川田、二人とも攻めの競馬ができそうで、頼もしい。
ただ口に出すかはわからない。田辺は口にしてもおかしくないけれど、川田は口に出しそうにない。
口に出して面白そうといえば、やっぱりルメール(ラブリーデイ)か。

ノリ、サン、ナラ…
ニゲル、オモテ、マシタ…(ニカッ!)

内ピッタリにつけて、追走し、最後の4角のコーナーリングで、一気に内から差したアンカツのスズカマンボ、あの競馬。
あれをスムーズにできるのがルメールではないか?

以上の3人はみな中団より前で競馬をしそうだ。
中団より後ろの方で、典さんの逃げを想定して、レースを組み立てられそうな騎手(馬)はいないかな?

北村宏(フェイムゲーム)

典さんの騎乗法を一番近くで見ているのは北村宏ではないか? 蛯名や内田博も関東の騎手だから、当然よくわかっていると思うけれど、今回の主旨的には年齢が近すぎる。その点、北村宏は年齢的にちょーどいい。

実際、ダイヤモンドSでは、典さんの逃げに揺らぐことなく、フェイムゲームを1人気で1着させた。
ダイヤモンドS1着馬は天皇賞春で好走していないけれど、ダイヤモンドSを58キロで1人気1着した馬もいない。
おまけにアルゼンチン共和国杯も57キロで1着している。自分はアルゼンチン共和国杯を57キロで1着した馬を以後、G1では大事にすると決めている(例トーセンジョーダン)。

たとえ過去のデータに合致しなくても、
アルゼンチン共和国杯、ダイヤモンドSの2重賞をレアパターンで勝ったフェイムゲームをナイガシロにはしたくない。

北村宏は今年騎乗停止だらけで、散々だ。今週も騎乗停止明けだ。だから騎乗に遠慮が出る可能性はある。でも、同時にどこかで巻き返したいとも思っているはず。その気概がいい方に出れば、典さんの逃げを後方から利用できる…!?

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天皇賞春・注目騎手
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大注目騎手・横山の典さん 自分は逃げると決めつけたけれど、想定外のレースを見せてくれれば、それでいい。

◎候補
ルメール
北村宏
★候補
田辺
川田

今年の天皇賞には、今のところG1ホースが2頭しかいない。
しかもその2頭が人気を落としている。
こういうときは、人気を落とした2頭で決まることもある。
だから、ゴールドシップ=キズナの馬券だけは抑えておこうかと思っている。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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