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日本人調教師が送り出したグレイトジャーニーの仔が仏特別を優勝!

  • 2015年05月14日(木) 18時00分


 今年の凱旋門賞の最初の登録馬、出ましたね。凱旋門賞の登録料は7200ユーロ(日本円で約97万円、1ユーロ=135円で計算)。10月1日が締切の追加登録は120000ユーロ(日本円で約1620万円)と高額のため、メンバーはほぼこの最初の登録を行った馬たちの中からとなります。

 ちなみに凱旋門賞の登録料はこれだけでは済みません。最終的に出走を希望する場合はレース直前に11000ユーロ(約149万円)、出走を取り消す場合は段階的に1200ユーロ(約16万円)から21000ユーロ(約284万円)がかかります。その前に、そもそもフランスの競馬を走らせるための競走馬の登録もしなければならなかったり。とにかく、手続きだけでも多額の費用がかかるし輸出も含めてすべてが大変。それでもわざわざ日本から、毎年一線級のメンバーが挑みます。

 誰が、どの馬がいちばん最初に日本から凱旋門賞馬となるのか!?また今年もハラハラドキドキさせられそうですね。

 さて、実はこの春はドバイ取材のあと、フランスにも足をのばしたのですが。その際、先日お伝えしたとおり、シャンティ競馬場に伺い、さらにシャンティで開業しているフランスの調教師である小林智さんの厩舎におじゃましました。

 かつては日本の牧場に勤めていたという小林さん。2002年に渡仏してリチャード・ギブソン厩舎のアシスタントトレーナーに、さらに2008年に日本人ではじめてフランスギャロの調教師になった方です。メイショウサムソン、オルフェーヴル…いまや凱旋門賞を目指す馬たちはここを拠点にしていますよね。

小さな丘の上にある小林厩舎の風景



 地形を利用した小さな丘の上にある厩舎には、日本人オーナーや日本にゆかりのある方々が所有する競走馬が十数頭、暮らしていました。アルゼンチンの年度代表馬やGI勝ち馬、イタリアオークス3着の馬らも在厩していましたよ。「堅実に勝負になるレースを選びたい」という小林さんは実に素直な方という印象でした。中には日本にゆかりのあるユニークな名前の馬もいまして。昨年、横山典騎手が凱旋門賞の前にシャンティ競馬で騎乗したモモノセック、それからグレイトジャーニー産駒のススキノなど。両方とも牝馬なんですが、女の子にススキノとは(苦笑)。名前のとおり、とても気の強そうに見える女子でした。

2014年、横山典騎手がシャンティ競馬で騎乗したモモノセック


 そして、そのススキノですが。5月13日にサンクルー競馬場で行われたコロンブ賞というハンデキャップレースをハナ差で優勝!ほんの少しだけですが、フランスで取材させていただいた、しかもあのグレイトジャーニーの子供が日本の特別に相当するようなレースを勝つなんて、すごく嬉しいニュースでした。

 ちなみにススキノは66戦して、これが3勝目。2歳にデビューしたあとは入着どまりで初勝利は4歳6月でした。日本のように未勝利戦をクリアできなければさようなら、というシステムではない点にもココロが温まりました。

馬房から顔をのぞかせるススキノ



 小林さんがフランスへ行き、調教師を目指した理由はとてもシンプル。「日本人で誰もフランスギャロの調教師になった人がいなかったから」だそうです。日本人は最初の一歩を苦手とする方が多いですよね。誰かが先にやって、その様子を見て私も、みたいな。でも、小林さんは違うんです。「言葉もフランスへ行く前に本で特訓して覚えた」というし、思い立ってから行動すると決めたら努力あるのみ。お話をうかがうかぎり、無駄なためらいがあまりない印象でした。

 ただ、頭の中で考えたり、批評するのは誰でもできる。でも、実際に行動に移して実現するのがどれだけエネルギーの要ることか!それをやってのけた小林さん、すごいなぁ。尊敬します。これからもコツコツ堅実に頑張っている姿を見習っていきたいと思います。

デジタルレシピ研究家。パソコン教師→競馬評論家に転身→IT業界にも復帰。競馬予想は卒業したが、現在も栗東トレセンでニュースやコラム中心の取材を続けている。“ねぇさん”と呼ばれる世話焼きが高じ、AFPを取得しお金の相談も受ける毎日。公式ブログ「ねぇブロ」(http://ameblo.jp/takako-hanaoka/)

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