スマートフォン版へ

「今一番ほしいものはジョッキーとしての経験」小崎綾也騎手にインタビュー

  • 2015年05月19日(火) 18時00分
競馬の職人

小崎綾也騎手(右)



小崎綾也騎手「馬からのメッセージをしっかり受け止められるような騎手を目指します」

 日曜日に行われたGI・ヴィクトリアマイルは6歳牝馬ストレイトガールの強襲!! アパパネが勝利した2010年と同タイム、レースレコードタイでの勝利。強かったですね。京都競馬場の大型ターフビジョンで見ていましたが、見ている客席の方へぶっ飛んできそうな迫力がありました。気持ちの強い馬ですね。

 大事に育てて、目標のレースへきっちり仕上げ、イメージ通りの勝利に持っていく藤原英調教師の手腕に感激です。おめでとうございます。

 もう一つの話題は02年に初来日して以来、13年ぶりに短期免許を取得した女性騎手のリサ・オールプレス騎手が新潟11RのショウナンマルシェでJRA通算5勝目を挙げましたね。二ノ宮調教師が管理するナカヤマナイトやヒアカムズザサンで2着2回と悔しいレースをしていたのでちょっと気になっていました。日本でも女性騎手も若手もがんばってほしいですね。より競馬が華やかになると思います。

 今週は期待の若手騎手、小崎綾也騎手を取材しました。少し前に取材をしたのですが現在落馬負傷で休んでいます。復活を願っています。

常石 小崎騎手といえばジャンパーの背中に書かれている「-3」や「-2」という数字が気になるんですが?

小崎 あーこれですか。きゅう舎でお世話になっている重田さんからのプレゼントなんですよ。僕の所属する村山きゅう舎カラーにデビュー時「-3キロ減量」という意味です。デビューしてから30勝を超えたので「-2」になりました。皆さんに応援してもらっています。だから1つでも勝って背中のマークを変えていきたいです。

競馬の職人

小崎騎手の着ているジャンパー



常石 背中のマークが印象的なので勝利数に変えていってください。

小崎 それもいいアイデアですね。頑張ります。

常石 騎手になるきっかけって何ですか?

小崎 やっぱり父の影響ですね。きゅう舎で育ったようなものですから。小学校5年生から乗馬を始めました。その時騎手になると決めました。馬に乗るのが楽しかったですね。小さいから背が高くなったように思うでしょう。

常石 そうそう僕もそうだったわ。僕の兄が背が高いのでうらやましかったし、悔しい思いをしましたね。だから馬に乗れた時は、めちゃめちゃ嬉しかったよね。共感です。競馬学校では大活躍をしましたね。

小崎 恥ずかしいですね(笑)。模擬レースの成績をポイント化して争う競馬学校チャンピオンシップで優勝しました。でもそのあとが大失敗。デビューに向けての調教中に騎乗馬が暴れて馬の頭部が顔面に激突してしまいました。星がいっぱい散らばり、眼底骨折で入院することになりました。騎手免許交付を目の前にした出来事だったんでかなりショックでした。みんなデビューしていくのでかなり焦りはありましたがきちんと治さないといけないと思いました。

 厩舎所属のコパノリッキーがフェブラリーSを勝った時は、病室で大声をあげ飛び跳ねていましたよ。競馬学校時見習い研修でずっと見ていた馬がGI制覇には興奮しました。元気をもらいました。早く治して僕も乗りたいという思いでいっぱいでした。退院してからはずっと競馬場へ行きレースを見ました。見るのはとっても勉強になります。

 怪我も治り、4月19日阪神1レースが初騎乗となりました。馬に乗れる実感を味わいましたが、みんなよりデビューが1か月以上遅れたから頑張らないと、と思い騎乗しました。この日の7Rで父の管理馬ケルンフォーティーで初勝利することが出来ました。勝つことだけを考えず、いかに指示通り乗るか、どう乗ったら馬の能力を生かせるか、VTRを見てスタッフさんの話を聞いて馬の事だけを考えました。

 この馬は、研修生の時にたくさん調教させてもらっていましたので癖も少し知っていました。ステッキを入れるとちょっと寄れる癖があるので直線まで我慢し、直線の入り口でステッキを入れた後は、手綱を強く握りゴールへ向かいました。ですが、僕に余裕がなくステッキを入れるタイミングを逃していたというのが本音です。見るのとレースで乗るとの違いを強烈に感じました(苦笑)。

 直線で「綾也ガンバレ!」という友達の声援はしっかり聞こえました。やっぱり嬉しいですよね。

常石 デビュー当日に勝つのは、冷静に判断出来ていたんだと思います。そこから小崎君の活躍が始まっていったんですね。調教とかはどれくらい乗っていますか?

小崎 調教に乗れることが嬉しいので1頭でも多く、そして馬に対して素直に乗っていきたいです。地方から移籍してくる騎手の方々は乗る数が多いじゃないですか。そういうこともあってうまいですよね。僕もたくさん乗せてもらえることが嬉しいです。馬はそれぞれ1頭1頭違うから乗らないとわからないですよね。乗っていると「あれーこの馬って…」と持っていた印象と違った感じがするとワクワクします。自分の中でそんな風に見極められるように1頭でも多く乗って、実感して行きたいし、行くことが大事だと思っています。

競馬の職人

調教に騎乗する小崎騎手



常石 背中で「この馬走るぞー」って感じる時ってゾクゾクしますよね。4コーナー回るまで手応えのいい馬はなかなかいないけどそんな馬に出会ったときは、自分でも上手くレースができるように思いますよね。

小崎 そうですね。でもそうでない馬でも自分の乗り方や馬のことをよく理解し勝たせるように持っていきたいです。まだまだですが調教にいっぱい乗って勉強していきます。

常石 研究熱心ですね。好きな競馬場とか距離などありますか?

小崎 まだまだ分からないことだらけなのでもっと勉強していきたいです。夏の北海道が好きです。馬にいっぱい会えるし、調教も1日中出来ますしね。

 今一番ほしいものは休暇でも彼女でもない。ジョッキーとしての経験です。経験がないといろいろやりたくてもできないでしょう。昨年はいっぱい勝たせてもらいましたが、僕の騎乗ではなく馬の力です。いい馬に乗せていただいたおかげです。僕がうまく御したレースはほとんどありません。馬からメッセージをもらうことで、(馬に)助けてもらっています。

常石 馬のメッセージが多くわかるようになるのが上手くなっていくコツですよ。馬が懸命にメッセージを送ってくれているのに気づかず乗ると次からは馬が鞍上のいうことを聞いてくれなくなりますからね。

小崎 はい、よくわかります。乗っていると耳の動きと背中の感触がよく伝わってきます。馬からのメッセージをしっかり受け止められるような騎手を目指します。

 僕がエゴイストで10勝目を挙げた時(2014年6月15日・函館2R)の事ですが、パドックでオッズを見たら110円(レース確定時は120円)と圧倒的な人気でした。それを見たら体全体が固くなってしまって・・・「あー、これが緊張か? プレッシャーか?」と実感しました。今後のためにはいい経験をしたと思っています。僕が「うまく乗って勝たせたなー」とみなさんに言ってもらえるように頑張ります。

常石 ライバルも活躍するとお互い励ましあっていいレースにつながっていくと思うよ。

小崎 こいつには(松若騎手)負けたくないなー(爆笑)

松若 なんだとー(爆笑)。(小崎騎手とは)プライベートではよくご飯も行きますし、一緒にいることも多いです。

競馬の職人

仲良くじゃれあっている小崎騎手と松若騎手



常石 仲がいいですね。嬉しい時も辛い時も仲間ってホンマにいいですよ(実感)。お二人ともあんちゃんの時のように丸坊主ですね。

小崎 こだわりません。これが気持ちいいです。

常石 よく似合っていますよね。

小崎 ありがとうございます。

常石 最後にファンへのメッセージと夢を聞かせてください

小崎 まだまだ未熟ですが調教にいっぱい乗って「小崎だから勝てた」と言われるような騎手を目標に頑張りますので応援してください。外国からもたくさん騎手が来られて活躍しているので僕も先生と一緒に外国へ行き活躍したいです。所属の村山厩舎にもいい馬がたくさんいます。厩舎の所属馬も応援してください。

常石 今日は長い時間、ありがとうございました。

***

 とってもハキハキした好青年です。物怖じもせずにどんどん前に進んでいるなと感じました。現在は落馬負傷していますが、元気で明るい小崎騎手がターフを駆け抜ける姿をもうすぐ見ることが出来ると思います。僕も若い騎手の活躍にパワーをもらいます。皆さんも応援してください。つねかつこと常石 勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング