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今年も2歳馬ゲート試験で様々なドラマ/吉田竜作マル秘週報

  • 2015年05月27日(水) 18時00分


◆「坂路の動きもいいし、走ってくると思う」(川江助手)と厩舎の評価も高い即戦力候補とは…

 新馬戦スタートまで2週間を切ったとあって、さすがにゲート試験受験馬の数が一気に増加。水面下では試験をめぐる泣き笑いのドラマが繰り広げられている。

 当コラムで何度となくお伝えしているように、若駒にとって「ゲート」とは非常にやっかいなもの。その狭さは閉塞感があり、おまけにスタートの際には大きな音までするのだから…。いずれは慣れるものだとしても、そこに至るまでには「人」の助けだけでなく、ともに切磋琢磨する「馬」の存在も必要になる。

 現在、山内厩舎にはダンツプリウス(牡=父ブライアンズタイム、母ストロングレダ)とエキドナ(牝=父スタチューオブリバティ、母マーゴーン)と2頭の2歳馬が入厩。それぞれがお互いを頼りにしながら練習を積んでいるのだが、習得までの時間には微妙に差が出てくる。

「練習をしていても、前扉が開いたら自分から出ようとするからね。これならすぐに受かると思った」と川江助手が評価していたのはエキドナの方。一緒に練習をしていても、先に出るのは常にこちらだった。しかし2頭で調教を行っている以上、「相乗効果」がなくては意味がない。まして2頭で受験した時に、どちらかがちぎってしまうと、ちぎられた方は不合格になる可能性が高くなる。それゆえ厩舎関係者はゲート試験の時には非常に気を使うものなのだ。

 先週の21日。2頭は初めてゲート試験に臨んだ。「速く出る」エキドナにまたがった川江助手は、ダンツプリウスに合わせてあげなくてはならない。しかし、この気遣いが結果的に裏目に出てしまったようだ。

「試験では2回スタートするんだけど、1回目はやっぱりこっち(エキドナ)が速く出た。だから2回目は合わせるように手綱を引っ張って出したんだ。ところが今度はダンツプリウスに勢いがついてしまって、こっちが置かれた。ヤバいと思っておっつけたんだけど、今までそんなことされたことがないから、嫌がって尻っぱねをしてしまって…。馬から落ちそうになるのを何とか踏ん張ってムチで叱った。(山内)先生からは『ムチなんて入れるから尻っぱねするんだ』って言われたけど順番が逆。跳ねたから叱ったんだ」と川江助手は苦笑い。結果、ダンツプリウスが合格し、エキドナの方が不合格になってしまった。

 こうなると、難しくなるのが2回目の試験。パートナーが先に受かってしまったため、これからは1頭で受験しなくてはいけなくなった。もっとも「気性が前向きだし、本来はこっちの方が(ゲートを)スムーズに出るんだから。大丈夫だと思う」と川江助手。次こそは合格し、ダンツプリウスに追いついてほしいものだ。

 ちなみにこのエキドナは現在、地方交流重賞でJRA馬たちと互角に渡り合っているハッピースプリントの半妹。「坂路の動きもいいし、走ってくると思う」(川江助手)と厩舎の評価も高く、即戦力として期待できそうだ。

 さて今週はいよいよ日本ダービー。青葉賞の覇者レーヴミストラルを送り込む松田博調教師にとっては“最後のダービー”となるが、当の本人は「どんどん切れ味が鋭くなっているだけに怖いのは故障。来年になれば走るのだし、無事に帰ってきてくれればそれでいい」とまったく欲がない。

 一方、皐月賞2着のリアルスティールに騎乗する福永は「ダービーは父が“一番勝ちたかったレース”と言っている。福永家としてそれを達成できるのはジョッキーの自分だけ。気負っても仕方ないが、結果そうなればいい」と時折“熱い言葉”も交じっていた。

 果たして競馬の神様は誰にほほ笑むのだろうか。無欲の人? 一族の宿願を背負った男? 可能な人はぜひライブで熱いダービーを楽しんでいただきたい。

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