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「是非ドゥラメンテで凱旋門賞に挑戦したい」ミルコ・デムーロ騎手にインタビュー

  • 2015年06月16日(火) 18時00分
競馬の職人

ミルコ・デムーロ騎手



M・デムーロ騎手「10軒ぐらい回って朝帰り(苦笑)。でも奥さんに叱られたね。うちの奥さん裁決委員より怖いね」

 いよいよ6月28日には上半期の締めくくりを飾る宝塚記念が行われます。私たちファンが投票によって参加し、出走馬を決めることができる実力No.1決定戦です。毎年、活躍馬が多数いる中で『この馬1頭』と絞り切るのは中々難しいですよね。

 皆さんは、どの馬に投票されましたか? 投票した馬が入っていますか? そんな中1位に選ばれたのはやっぱりこの馬でした。

 ゴールドシップ号。天皇賞・春ではGI6勝目を挙げ、昨年に続き今年もトップでした。前人未到の3連覇への夢もかかっています。得意とする阪神で視野も大きく広がってきました。横山典騎手も栗東へ調教にきて熱が入っています。

 昨年のダービー馬、ワンアンドオンリーには今年のダービージョッキー、M・デムーロ騎手が騎乗と、ここも見逃せない1頭です。キズナやエピファネイアなど有力馬が回避し残念ですが他にも楽しみな馬がいっぱいで初夏の阪神がアツイ日になりそうです。皆さんも阪神競馬場へ出かけ一緒にアツくなりましょう!!

 今週はドゥラメンテで第82回日本ダービーを制したM・デムーロ騎手に直撃インタビューしました。皆さん、常石は英語できるんか? と心配してくださったでしょう? でも大丈夫。M・デムーロ騎手の日本語のうまいこと。ますます上達しています。あの感動を・・・もう1度皆さんにお届けします。

常石 日本ダービー制覇おめでとうございます。素晴らしかったですね。扱いが難しい馬を見事にゴールまで持っていくパワーは何ですか? 勝った後の打ち上げですか?(笑)

ミルコ ありがとうございます。やりました(満面の笑顔)。これからも頑張っていっぱい勝つから応援してくださいね。勝った後の打ち上げは最高。その時初めて『勝ったんだ!』と実感が湧きますね(爆笑)。

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表彰式で有村 架純さん、瑛太さんと並んで記念撮影をするM・デムーロ騎手(撮影:下野 雄規)



常石 勝ったその日に行ったんですか?

ミルコ そうそう・・・みんなとね。おともだちいっぱいとね。うれしかったですよ。お酒美味しかったよ。10軒ぐらい回って朝帰り(苦笑)。でも奥さんに叱られたね。うちの奥さん裁決委員より怖いね(爆笑)。

常石 上手い!日本語の極みも心得ていますね。奥さんとお嬢さんの写真見ましたがおきれいな方ですね。お嬢さんはいくつになられましたか?

ミルコ 素敵な奥さんとかわいい娘2人。2歳と7歳です。もうすぐ日本に来ます。7、8月頃になるかな。やっぱりうれしいです。

常石 家族が一緒になってにぎやかになりますね。これからの競馬では奥さんパワーも入ってもっと強くなるミルコ騎手を見ることができますね。楽しみです。改めて日本ダービーでのドゥラメンテは強かったですね。今でもあのシーンが目に浮かびます。日本ダービー制覇は2勝目ですが今年はJRAの騎手になって1年目の制覇、見事です。ドゥラメンテはどんな馬ですか?

ミルコ いい子だよ。まだまだ若いからたまに突然やんちゃをすることがあってびっくりするね。気を緩めないで気合を入れて乗っています。素質を十分持った面白い馬ですよ。破壊力抜群の脚をもってるから強い。たのしみいっぱい持ってるね。

常石 キングカメカメハの血統とサンデーサイレンス牝馬の組み合わせは、2010年のローズキングダムが2着、2011年ベルシャザールが3着、昨年のトゥザワールドが5着と優勝まであと1歩届かなくて悔しい思いをしていたんですが、見事うっぷんを晴らしてくれました。

ミルコ ドゥラメンテのお母さんはアドマイヤグルーヴだから、やっぱり強い血統の力持ってるね。

常石 皐月賞の時とは全く違った走りでしたが、作戦はありましたか?

ミルコ 追切の感じは良かったし、ネオユニヴァースによく似た所もあるからちょっと楽しみにしていました。4コーナーでファンの観声が聞こえたときびっくりしてしまい危なかったし怖かったけど、最後までよく頑張ってくれました。テンションが高いけどその分走る強い馬です。

常石 日本ダービーでは、その通りになりましたね。淡々とした流れの中で直線を向くと後続が殺到しましたが馬群を割って抜け出したのがドゥラメンテ。坂を上がっても脚は衰えませんでしたね。サトノクラウンはゲートで出遅れたこともあって、最初の1コーナーでリアルスティールとサトノクラウンより前でレースをしていましたね。この2頭より前でレースをするドゥラメンテを見たとき、『あ、これは勝つかも』と思いました。

ミルコ 4コーナーで接触があり折り合い面では難しかったけど我慢することも覚えてくれたのでこれからもっともっと強くなるよ。

常石 2冠達成し秋には3冠ですね。いやいや凱旋門賞かな? ネオユニヴァースで2冠を制した時、すでに短期免許期間として3か月騎乗してしまったので今までのルールならば騎乗出来なかったんですが、特例※が制定され菊花賞に騎乗したものの3着でしたね。
※ミルコデムーロ騎手の2冠制覇をきっかけに『短期免許取得期間中、同一馬でGIを2勝した場合に限り期間外に来日して、その同一馬に騎乗可能』という特例が制定され、同年の菊花賞とジャパンカップにはこの特例で騎乗しました。

ミルコ ネオユニヴァースの時は差も少しだったので残念でした。僕が言うことではないですが(クラシック)3冠もほしいけど、まだ手が届いていない凱旋門賞に是非ドゥラメンテでチャレンジしたいです。日本馬は優秀で力はあるけど、あと1歩というところまでで終わっています。頑張りたいです。

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日本ダービーゴール後、ガッツポーズをするM・デムーロ騎手(撮影:下野 雄規)



常石 素晴らしい成績を残していますがメンタル面で何かやっていますか?

ミルコ おもいっきり遊んでます(爆笑)。力も必要ですが体の柔らかさが大事なので柔軟さを保つようにトレーニングしています。心も体もね(笑)。

常石 やっぱり・・・心がかなり柔らかそうですね(笑)。パフォーマンスも楽しいですよね。あの飛行機スタイル抜群です。

ミルコ 裁決委員から叱られました。罰金も払ったしね。

常石 そうだったんですか。でもドバイで日の丸を羽織ったシーンも印象的でした。天皇賞の時も下馬し天皇皇后両陛下に向かって最敬礼されたときも感動しました。やっぱり紳士的で最高のスポーツなんだと確信しました。

ミルコ いつも裁決委員に叱られていますが勝った時はみんなで感動を伝えたい。馬の頑張りを認めてほしいです。また勝った時はやります。

常石 1994年のデビューの時から活躍し、翌年には79勝を挙げて最優秀見習騎手に。日本には1999年初来日以来、毎年来日し重賞35勝、うちGIは12勝と、素晴らしい成績です。なかなかできない記録です。

ミルコ 日本の騎手としてもっと勝ちたいです。いっぱい勉強します。

常石 騎手免許も見事合格し日本ダービー制覇、そして夏には待望のファミリーで暮らせる楽しみも待っています。ドンドン強くなるミルコ騎手のエネルギーは、どこから来るんですか?

ミルコ 馬しか知らない。馬に乗る日が一番楽しい。友達といっぱい遊ぶ。美味しいものいっぱい食べる。

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C・ルメール騎手など仲良しの仲間達とトレセン内でくつろぐ様子



常石 日本ダービーの前、甲子園球場での阪神タイガースと楽天イーグルスとの試合前に始球式をしましたね。

ミルコ あれだめだったね(苦笑)。馬に乗るのがいちばんいい。

常石 弟のクリスチャンも今年のイタリアダービーを制覇したんですよね。おめでとうございます。妹のパメラ・デムーロさんも騎手から調教師になられ競馬一族で皆さん活躍し素晴らしいです。

ミルコ 小さいころから馬に乗ってるからね。いつも馬といたから。

常石 ミルコといえばテントウムシが浮かぶんですがどんな出会いがあったんですか? 僕もキャップをいただき、大事にしています。

ミルコ イタリアでは幸運を運んでくれるアイテムだから大事にしています。若い頃はちょっとだけ生意気だったからね。これ内緒、いい話しましょ(笑)。競馬好きだからテントウムシのようにかわいくなっていく。みんなに好かれる騎手になりたいね。

常石 日本でもテントウムシは素敵なアイテムです。日本語もどんどんスキルが上がっていきますね。僕の日本語よりうまいです。いつも楽しいパフォーマンスでファンを楽しませてくれます。日本ダービーの時も正面のファンにお礼し、左右そして後ろにも最敬礼をしていました。感動を思いっきり表現する姿勢は素晴らしいと思います。最後にファンの方へメッセージをお願いします。

ミルコ ドバイワールドカップをヴィクトワールピサで勝った時、日本は震災で大変でした。何とか日本のために頑張りたいと思っていたので勝てて嬉しかったし、日の丸を着てウイニングランの時は僕も幸せでした。いつもみんなの幸せを願っています。これからも応援してください。

競馬の職人

M・デムーロ騎手「これからも応援してください」



常石 今日はありがとうございました。

***

 豊さんと松田騎手にミルコの印象をお聞きしました。

武豊 誰よりも日本を愛する騎手、そして努力を惜しまないジェントルマンだよ。日本語もうまいしね。僕もミルコに習おうかな?(笑)

松田 ポテンシャルがどんどん上がってるすごい騎手だと思う。でも? 遊んでるときはめちゃめちゃ面白いですよ。仲良しだからよく出かけるんですが、この間も大阪へ寿司を食べに行ったわ。自分のポリシーを大事にしてますね。

常石 ありがとうございました。

***

 ずっと日本語で通訳の方がいなくても大丈夫と話してくれて、エピソード性があって明るく楽しい。まだまだ未知数で話題が山ほどあります。僕にも丁寧に話してくれて『ヨーロッパは乗馬が盛んだから頑張って』と応援してくれました。凱旋門賞を是非日本馬で勝ちたいというミルコ騎手。その時は、第2弾のコラムを書きたいですね。つねかつこと常石 勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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