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船橋ナイター雑感

  • 2015年06月19日(金) 18時00分


◆夜の大人の遊び場としてはかなり条件が揃っている

 船橋競馬のナイター開催『ハートビートナイター』がスタートした。残念ながら初日の6月15日には行けなかったのだが、重賞の京成盃グランドマイラーズが行われた17日に足を運んだ。

「船橋競馬場でナイター開催」ということを想像することはできていたが、実際にJR京葉線の南船橋駅から競馬場へと向かう歩道橋の上から夜空に明るく浮かび上がる船橋競馬場を見たときはちょっと感動した。その歩道橋は複合商業施設『ららぽーと』へもつながっており、普段は競馬に興味を持たないという人たちにも、かなりインパクトがあるのではないか。

 南関東は、これで開催日数の少ない浦和競馬場を除く3場が冬期を除いてナイター開催となり、開催日のほとんどがナイター競馬で行われることになった。

 地方競馬全体で見ても、門別、高知が通年ナイターで、ばんえい帯広も冬期の一部開催を除いてほぼナイター開催、南関東のうちの3場、そして園田の金曜開催と、地方競馬では7場でナイター開催が行われるようになった。逆に昼間開催のみ(薄暮開催はある)の競馬場は、盛岡、水沢、浦和、金沢、笠松、名古屋、佐賀の7場(地方競馬としての登録はあるものの現状、開催が行われていない中京、姫路は除く)。ナイターをやっている競馬場とやっていない競馬場が同数となり、もはや地方競馬では、ナイター競馬は特別なものではなくなった。

 日本では1986年7月に初めて大井競馬場でナイター競馬が行われ、徐々に増えてここまでになった。地元住民や警察関係との折衝があったにしても、ほかのところでももっと早くにナイター競馬をはじめればよかったのではと思われるかもしれないが、時代の変化というのは大きい。大井でナイターが始まったあとの80年代、とある地方都市の主催者で薄暮開催をためしにやってみたものの、まったくお客さんが入らずすぐに頓挫したという話を聞いたことがある。当時はまだまだ家族そろって夕餉の食卓を囲むという時代で、その時間になると多くのファンが帰ってしまったのだと。それは昭和の時代の話というわけでもなく、ばんえい競馬が2007年に帯広単独開催となってナイター開催を始めたときにも同じことが問題となっていたようだった。核家族化が進んだ首都圏とは違い、田舎、といっては失礼かもしれないが、地方都市では夕食は家族揃って食べるもの、という習慣はまだまだ残っている。

 旭川でのナイター競馬を引き継いで、門別単独開催となったホッカイドウ競馬が通年ナイターでひとまずの成功を収めたのは、商圏の大きな南関東のナイター開催と後半3レースを相互発売する、いわゆる『スクランブルナイト』の効果によるもの。

 ところが次に通年ナイターで成功した高知は、まったく逆の視点によるものだった。いかに他の競馬場でやっていない日程、時間帯に開催するか。この成功はネット発売の普及によるところが大きい。続いてこの流れに乗ったのがばんえい競馬のナイター開催で、昼間開催だけだった頃を思えば、土日よりも月曜日の売上が大きくなるなどとは、誰が想像しただろうか。

 話がだいぶ飛んでしまったが、船橋ナイターに戻る。ナイター開催を始めるにあたって、実はちょっと心配していることがあった。タレントなどがトークイベントをするということのほかには、施設的なこと、飲食的なことでの目新しい情報が聞こえてこなかったからだ。しかしフタをあけてみれば、スタンド裏には今までになかったテーブルと椅子が多く設置され、ビヤガーデン的に賑わっていたことはよかった。


 初日から京成盃グランドマイラーズが行われた3日目までの入場人員は、順に11,320人、4,408人、7,197人というもの。もの珍しさと宣伝効果があったとはいえ、初日の1万人超は、連休中好天のかしわ記念時に匹敵するもの。ちなみに昨年度船橋競馬場の1日平均の入場人員は3,134人だった。

 総売得額では、初日から順に、7億5974万2880円、8億2821万9300円、11億5093万2180円。初日が少なかったのは、月曜日は地方競馬IPAT(JRA-IPAT)での発売がなかったためと思われる。ちなみに昨年度の船橋競馬場の1日平均の売得額が6億6千万円余りであったことを考えると相当に多い。入場人員については、最初のもの珍しさもあっての上積みはあっただろうが、ネット発売が多くの割合を占める馬券の売上げについては、最初だからという上積みはそれほどはないものと思われる。

 船橋競馬場は、近隣がある程度の住宅地で、道路を挟んで向かいには複合商業施設『ららぽーと』があり、さらにはJR京葉線で数駅のところに幕張新都心があるということでは、夜の大人の遊び場としてはかなり条件が揃っている。そういう意味では待ちに待ったナイター開催であり、今後の期待もできそうだ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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