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「偉大なホッコータルマエ」が着差以上の完勝/帝王賞

  • 2015年06月25日(木) 18時00分


G1(格)を9勝の記録はまだまだ延びる可能性がある

 上半期を締めくくる芝のビッグレースが同時期の「宝塚記念」なら、ダート界の前半戦のチャンピオンを決定するビッグイベントは「帝王賞」。

 ここまでにG1(格)のビッグレース8勝を記録し、史上最多タイの9勝目のかかった6歳牡馬ホッコータルマエ(父キングカメハメハ)が期待に応え、見事に大記録を達成した。すでにG1(格)の重賞を9勝しているチャンピオンは、2002年生まれのヴァーミリアン(父エルコンドルパサー)、2005年生まれのエスポワールシチー(父ゴールドアリュール)だが、8歳時に記録を達成した2頭と異なり、ホッコータルマエはまだまだ十分に若い6歳馬。記録はまだまだ延びる可能性が十分にある。

 3歳春の新馬戦からダート戦(2014年ドバイWCのみオールウェザー)に出走し、2度のドバイ遠征を含めこれで31戦【16-3-5-7】。制したビッグタイトルは、「帝王賞」2勝、「東京大賞典」2勝、「川崎記念」2勝、「チャンピオンズC」、「JBCクラシック」、「かしわ記念」である。特筆すべきは、本物になった4歳以降、南関東で行われたビッグレースには7回出走して、【7-0-0-0】。パーフェクトなのである。

 近年の大レースでは、とくにJRA所属馬の場合、再三再四の鞍上チェンジも珍しくないが、ホッコータルマエの制したビッグレース9勝は、すべて幸英明騎手(39)とのコンビ。幸英明騎手は、2003年の3歳牝馬3冠を制したスティルインラブとのコンビで知られ、また、2010年、2012年。2度にわたりJRAの年間最多騎乗回数記録を更新したことでも知られるが、これで「ホッコータルマエというなら、幸英明」と同義になった。

 馬場状態は「良馬場」だったが、この時期だけに時計の速いコンディション。行く馬はいないとみて先手を奪った岩田康誠騎手のクリノスターオー(2番人気)を、途中から少しかかり気味になった武豊騎手のクリソライト(4番人気)が2コーナー過ぎから並びかけるように接近。強気に3コーナーで先頭を奪ったため、レース全体のバランスは前後半の1000m「59秒9-62秒8」=2分02秒7。非常にきびしい流れになった。2011年の帝王賞を2分01秒1のレースレコードで独走している武豊騎手は、そのスマートファルコンで飛ばした2010年の東京大賞典を、2000mの日本レコード「2分00秒4」で、フリオーソに勝っている。

 今回も、時計勝負になりそうな馬場コンディションを読んで、ことダートのビッグレースではきびしいラップを踏んでこそ勝機が訪れる。そんな武豊騎手の果敢な先行だった。そのため、自身(クリソライト)の上がり3ハロンは「12秒8-12秒5-13秒6」=38秒9に落ち込んだが、当然、早めにスパートすることを余儀なくされたホッコータルマエの上がりも「38秒6」を要しているから、クリソライトの果敢な先行が全体時計を速くした(帝王賞史上3位)と同時に、レース全体が大きく盛り上がることになった。

 レベルの高いダート戦では、「流れが…、展開が…」などの他に敗因を求めることができない。文字通り力と力の総合力勝負になるから、ダートチャンピオンの形容は、「偉大なホッコータルマエ」で十分である。きびしい流れを自らスパートして出たホッコータルマエも、最後はかなり苦しかったが、世界のビッグレースに2度も挑んだ自信が他を寄せ付けなかった。着差以上の完勝だったろう。

 大井2000mの記録を2分02秒台にまで短縮したホッコータルマエは、秋にはJBCクラシック(11月3日。大井2000m)を展望している。4歳以降、南関東のビッグレースでは「無敗」。まだまだチャンピオンの記録更新に期待していい。

 このきついペースで、ホッコータルマエに4分の3馬身しか負けなかった5歳クリソライト(父ゴールドアリュール)は、その母クリソプレーズ(父エルコンドルパサー)が、2006年のジャパンCダートなどを制しその年の最優秀ダートホースに輝いたアロンダイトの全姉。一時のスランプは完全に脱した。秋にはさらにパワーアップするはずである。

 一気に進出してきた4コーナーの勢いから、勝ち負けに持ち込めるのではないかと思えた4歳ハッピースプリント(父アッミラーレ)は、ゴール寸前、前の2頭と同じ脚いろになってしまったが、3歳暮れの東京大賞典、今春の川崎記念より大幅に地力強化が認められた。ベストは1600m〜1800mかもしれないが、祖母の父はセクレタリアト(ハイセイコーと同期の1970年生まれ)。母マーゴーンのいとこには、種牡馬スキャターザゴールドもいる。2000mまでは守備範囲に考えていい。


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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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