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トレヴの全妹など良血も多く上場される海外主要1歳セールの動向

  • 2015年07月08日(水) 12時00分


2年前の「ファシグティプトン・サラトガセール」の上場番号85番がアメリカンフェイロー

「過去最高の品揃え」と、世界各国の関係者の間で話題となっているJRHAセレクトセール1歳部門(7月13日、ノーザンホースパーク)を皮切りに、北半球における1歳馬セレクトマーケットのサーキットがスタートする。

 JRHAセレクトセールの後を受けて開催される米国と仏国の主要セールも、既に上場馬の顔触れが出揃っている。

 8月10日と11日に米国ニューヨーク州で開催される、伝統の「ファシグティプトン・サラトガセール」には、208頭が上場を予定している。

 昨年の165頭、一昨年の152頭に比べると、大幅な増加となった。米国のサラブレッド生産頭数は、3万5千頭を越えた2005年をピークに減少を続けており、今年の1歳世代となる2014年生まれも、前年に比べて4.6%減の2万300頭という暫定値が発表されている。生産頭数が減っているゆえ、セールに上場される馬の数もおのずと各所で減少しているのだが、さすがは老舗市場である。絶大なブランド力で、上場頭数の大幅な増加を果たした。

 2年前のこのセールの上場番号85番が、今年春に37年ぶり史上12頭目の3冠を獲得したアメリカンフェイローで、テイラーメイド・セールスエージェンシーから上場された同馬は30万ドルでインゴート・ブラッドストックに購買されている(実際の購買者は、同馬の生産者であるアーメド・ザヤット氏で、つまりは買戻しだったのだが、セールの記録上は購買成立となっている)。

 今年のカタログの上場番号85番は「欠番」扱いとなっており、アメリカンフェイローの3冠を祝うコメントが記載をされている。母がG1勝ち馬、兄姉がG1勝ち馬という上場馬が15頭スタンバイしている中、血統的にセールの目玉となりそうなのが、父が昨年の全米リーディングサイヤーで、今季の種付け料が30万ドルというタピット、母がG1スピナウェイS勝ち馬アピーリングゾフィーという、上場番号34番の牡馬だ。母以外には目立った活躍馬のいないファミリーの出身だけに、驚くような値段にはなりそうもないが、馬が悪くなければミリオンの声を聞くことになりそうだ。

 G1フィリーズマイル勝ち馬サーティファイ、G1オークリーフS勝ち馬クライアンドキャッチミーと、姉に2頭の2歳G1勝ち馬がいるという、上場番号158番の牡馬(父バーナーディーニ)も、間違いなく購買者の注目を集める1頭だろう。

 今年の1歳が初年度産駒となる北米供用の新種牡馬で、初年度の種付け料が最も高かったのは、レーンズエンドファームにて3万5千ドルで供用されたユニオンラッグスだった。3冠最終戦のG1ベルモントSに加え、2歳G1のシャンパンSを勝っている点が魅力の同馬は、繁殖牝馬にも恵まれているようで、この市場にも、G1BCジュヴェナイルフィリーズ勝ち馬シービーワイルドの半妹にあたる母トラッピンズの牝馬(上場番号6番)や、現在ノーザンファームにて供用中のG1アルシバイアデスS勝ち馬ウィキッドリーパーフェクトの半弟にあたる母ウィキッドリーワイズの牡馬(上場番号21番)といった良血産駒を送り込んでいる。



「アルカナ・オーガスト・イヤリングセール」にはトレヴの全妹やフランケルの初年度産駒が上場

 一方、ヨーロッパにおける1歳プレミア市場の幕開けとなるのが、8月15日から17日まで仏国のドーヴィルで開催される「アルカナ・オーガスト・イヤリングセール」だ。そのセレクトセッションとなる15日と16日の2日間には、選りすぐりの欧州血脈を持つ188頭の1歳馬がスタンバイしている。

 14年が182頭、13年が188頭、12年が186頭だったから、頭数的には例年と変わりはない。だが、思い起こせば1年前、平均価格(14万7864ユーロ)、中間価格(9万ユーロ)、売却率(80.56%)が全て、この市場としての歴代最高をマークし、益々存在感を増しているマーケットだけに、母がG1勝ち馬、兄姉がG1勝ち馬という上場馬が24頭もスタンバイするという、極めて水準の高い品揃えとなっている。

 中でも超目玉と言われているのが、2日目に登場する上場番号176番の牝馬だ。父モティヴェイター、母トレヴィスという血統を聞けば、海外競馬ファンならば既にして感嘆の声を漏らしていることと思う。史上初の凱旋門賞3連覇を目指すトレヴの全妹が、上場を予定しているのである。現役馬としては勿論のこと、将来の繁殖牝馬として計り知れない価値を持つだけに、誰がいくらで購買するのか、関係者ならずともおおいに気になるところである。

 そして、今年の欧州イヤリングマーケットにおける大きな楽しみの1つが、「史上最強馬」フランケルの初年度産駒が上場される点にある。アルカナ・オーガスト・イヤリングセールに上場を予定しているフランケル産駒は6頭。現在社台ファームにて供用中のG1・6勝馬スタセリタの半妹にあたる母ソワニエの牝馬(上場番号159番)、G1ジャンルクラガルデル賞勝ち馬ナークースの半弟となる牡馬(上場番号165番)、G1愛オークス勝ち馬チキータの叔母にあたる母プラトニックの牝馬(上場番号127番)など、活気ある牝系を背景に持つフランケル2世がスタンバイしている。

 セレクトセールが終わった後は、海外の1歳セールの動向にもぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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