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八戸“揮”市場

  • 2015年07月08日(水) 18時00分
八戸展示風景

八戸市場の展示風景


今年の上場馬は54頭。昨年からすると1.5倍の増加で、しかも驚いたことに今年は欠場が1頭も出ず上場率が100%。これは称賛に値する出来事であった

 青森県軽種馬生産農業協同組合が主催する「八戸市場」が7日(火)に八戸家畜市場(三戸郡南部町)で開催された。

 朝から快晴に恵まれ、初夏らしい爽やかな風が吹き抜ける絶好のセリ日和となり、会場には多くの購買者や関係者が詰めかけて、かなりの賑わいであった。

 今年の八戸市場は、「揮」の字が当てられている。毎年八戸と市場の間にこうして一字挿入され、これがその年のキャッチフレーズのようになっている。因みに今年は「いざ東北が力を揮(ふる)うとき」という“副題”が名簿に記されている。

 今年の上場馬は54頭。昨年が36頭にとどまったことからすると1.5倍の増加で、しかも驚いたことに今年は上場率が100%であった。つまり、名簿に記載されている全ての馬が1頭も欠けることなく上場されたわけで、これは軽種馬市場にとっては異例のことでもある。怪我、病気などにより、当日止むを得ず欠場せざるを得なくなる馬がどの市場でも必ず出るのが普通なので、これは称賛に値する出来事であった。

 購買者登録数は85名。前年よりも増えており、計算上では上場馬数の1.5倍も購買者が来場していることになる。

 そのせいか午前10時より始まった比較展示の時から活気があった。八戸家畜市場の展示会場はセリを開催する建物に隣接したちょうどサッカーグラウンドほどの広場だ。そこに54頭を4グループに分割し、1グループ当たり13〜14頭ずつ並べられる。それぞれ展示の後には、各馬が縦列でぐるりと1周〜2周の常歩を見せ、最後に1頭ずつ速歩を披露して終了である。概ね25分ずつ区切られ、次のグループと入れ替わる。

 展示が終わった後は、昼食タイムが1時間設けられており、今年のセリ開始は午後0時40分になった。

 市場主催者の山内正孝組合長が挨拶し、その後すぐに最初の上場馬が入場してきた。数頭主取りが続いたものの、徐々に声がかかるようになり、やがて連続して落札馬が出始めた。価格はそれほど上がらないが、数だけは例年よりもずっと売れている。

 そうこうしているうちに順番がどんどん進み、30番を過ぎたあたりからセリは俄然活況を呈するようになった。複数の購買者が声を掛け合い、どんどん価格が上昇する馬が続出し、630万円、700万円というような落札馬が出てくる。後半に注目馬が集中していたこともあり、驚くような売れ行きとなった。とにかく次々にどんどん売れるのだ。

 最後の上場馬が登場した後から、再上場の手続きを済ませた馬が計4頭再び現れ、落札されて行った。結局終わってみれば、54頭(牡23頭、牝31頭)のうち、31頭(牡20頭、牝11頭)が落札され、売却率は実に57.4%に達した。

 売り上げ総額は税込で9418万6800円。前年と比較すると85.1%増にもなった。ただ、牡馬が23頭中20頭売れたのに対し、牝馬は31頭で落札が11頭。性別による落差が甚だしいセリでもあった。

 平均価格は税込で前年比21万1693円増の303万8283円(牡323万5140円、牝268万0363円)。

 昨年は落札価格500万円を超える馬が出なかったが、今年は一気に5頭が500万円超となった。最高価格馬は756万円(税込)で、34番「クレイジーラブの2014」(牡栗毛、父アドマイヤムーン、母クレイジーラブ、母の父タイキシャトル)と41番「モンテチェリーの2014」(牡黒鹿毛、父トーセンホマレボシ、母モンテチェリー、母の父ホワイトマズル)の2頭であった。いずれも、生産・飼養管理者・販売申し込み者いずれも(株)タイヘイ牧場。クレイジーラブは(有)ディアレストクラブ、モンテチェリーは橋川欣司氏がそれぞれ落札した。

クレイジーラブの2014

最高価格「クレイジーラブの2014」展示時の常歩


クレイジーラブの2014

最高価格「クレイジーラブの2014」の立ち姿



 牝馬の最高価格馬は43番「アプリシエーション2014」(鹿毛、父ストリートセンス、母アプリエーション、母の父Caerleon)の702万円(税込)。生産・販売申し込み者は(有)小島牧場、飼養者はMAXトレーニングファーム。落札者は(有)グランデファーム。

 この八戸市場は近年北海道から遠征してくる上場馬が半数を占める状態が続いていたが、今年に関しては、宮城を含めて地元青森からの販売申し込みが31頭に達し、北海道組の23頭を上回った。落札馬は青森20頭に対して北海道11頭と、価格はともかくも売却率の上では地元馬の方が上回ったことになる。

モンテチェリーの2014

最高価格「モンテチェリーの2014」展示時の速歩


モンテチェリーの2014

最高価格「モンテチェリーの2014」の立ち姿



 ただ、700万円2頭を始め、八戸市場にしては(という表現もどうかと思うが)高額な落札馬が出ていた反面、税抜き落札価格が200万円以下も31頭中13頭に及び、それが祟って平均価格も21万円余の微増にとどまった。

 なお、セリを振り返り、山内正孝組合長は「昨年は8月上旬に開催しましたが、わずか36頭の上場にとどまったことの反省から、今年は北海道のサマーセール(8月下旬開催予定)に向けて追加登録できる今の時期に開催することを早くから決めておりました。景気が回復したとはいえ、その効果が馬主さんのところから私たち生産者にまで波及してくるには1〜2年のタイムラグがあるようで、ようやくそれが形になって表れたのかもしれません。欠場馬がいなかったのも各生産者の努力によるもので感謝したいと思います。名簿に記載された馬が全頭出てくるというのはセリの基本ですし、この姿勢を持続して行けたらさらなる市場振興につながると思います。近年減少し続けていた県内生産頭数も昨年、今年と少しずつ増加に転じているようですし、今後も県内生産者にとって欠かせない市場であり続けるための方策を考えたいところ。最後に、今日のセリには多数の購買者の方々にご来場いただき、落札して頂いたことに対しまして心より感謝申し上げます。また来年のセリにもぜひご来場頂けますようお願い申し上げます」とコメントしていた。

アプリシエーション2014

牝馬の最高価格馬は「アプリシエーション2014」



 今週からいよいよ1歳市場が週替わりで続く。来週はセレクトセールである。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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