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ゴールドシップのスタート問題とゲートボーイ導入論

  • 2015年07月27日(月) 18時01分
教えてノモケン

▲宝塚記念を制したラブリーデイ(左)、出遅れたゴールドシップは15着に沈んだ


 前回の当コラムの更新は6月22日(記事はこちらから)。6日後の宝塚記念で、ゴールドシップがまたも「やらかした」。前回の天皇賞・春はゲート入りを嫌って4分の発走遅延を招いたが、レースはきちんと走り、同馬の馬券を購入した人に迷惑をかけなかった。だが、発走調教再審査明けの今回は、ゲートで立ち上がって大きく出遅れ。早々と圏外に去った。

 この一件を受けて、一部ではゲートボーイ(発走補助者=海外ではゲートクルーと呼ぶことが多い)の導入論が再燃している。発走補助者がなぜ導入されないのか。導入すれば本当に解決するのか。前回はこの部分を十分に触れなかったため、本稿で引き続きゲート問題を扱う。

他馬の接近を嫌って暴発


 まずは簡単に状況を整理しておく。前回の天皇賞・春で発走調教再審査となったゴールドシップは、規定の練習5回を経て、目隠しをした状態で再審査に合格。当日は8枠15番に入り、他馬に先立ってのゲート入りとなった。やはり目隠しをされ、今回は全く問題なくゲート入りし、しばらくは不審な挙動もなかった。

 ところが、14番のトーホウジャッカル、16番のラブリーデイと外寄りの偶数枠が埋まると異変が始まった。昨秋の菊花賞優勝時以来の出走だったトーホウジャッカルが、ゲート内で動きを見せると、「怪獣のような声を出して」(須貝尚介調教師)威嚇し始めたという。

 さらにラブリーデイが入ってゲート入りが終わると、とうとう立ち上がった。最初に立ち上がってから“着地”したタイミングでスターターは発馬機のレリース(握力計のような)を握ったが、作動してゲートが開くまでのタイムラグ(0.37-0.38秒とされる)に、ゴールドシップは再び立ち上がり、降りてからもしばらく膠着に近い形となり、出た時点で既に10馬身ほど離されていた。レースの流れが緩んだため、馬群には取りついたがそこまで。横山典弘騎手は直線ではさほど無理をせず、1頭をかわしただけの15着という結果だった。

 同馬に投じられていた馬券は約117億7190万円で、売り上げ全体の60.1%に上ったが、一瞬にして紙くずと化したも同然だ。レース後、須貝調教師は「練習ではやったことがない。練習と競馬は違う。コイツだけは本当にわからん。こんな奴をいつも応援してくれているファンに感謝。見捨てずに見守ってくれたら」と話した。諦念とも取られるようなコメントで、筆者も直接、聞いていたが、正直、あっけにとられた。

 須貝調教師はまた、(他馬に)「側に来られるのは好きでない」と話している。14、16番の枠が埋まってからの異変の原因は、この辺にあるようだ。当日の全レース終了後、福田正二・JRA審判部長は取材陣を裁決室に招き、ゲート入りの際の詳細なパトロールVTRを開示した。筆者も足を運んだが、この席で福田部長は「1回目に立ち上がってから再び前脚が着地した際、横山典騎手がゲートを開けても良い、との意思表示をした」と説明した。「常に騎手の意思表示を聞くわけではない」とも付け加えた。

 一部では「もう少し待てなかったのか」という意見や、果ては「あのタイミングで開けたのは、(最近、枠入り不良馬が多かった須貝厩舎に対する)嫌がらせでは」と邪推する向きもあった。福田部長の説明は、「ここしかない」タイミングで操作したら、開いた瞬間に馬が立ち上がったことを強調する意図だったと思われるが、横山典騎手から後日、「そういう意思表示はしていない」とクレームがあったという。

再審査は通常の形で


 ゴールドシップに対しては、レース後に発走調教再審査の処分が下った。同馬は6月30日に放牧に出ており、関係者は秋の日程も発表していない。再審査はかなり先になりそうだが、問題は形式である。

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1964年1月19日、東京都出身。87年4月、毎日新聞に入社。長野支局を経て、91年から東京本社運動部に移り、競馬のほか一般スポーツ、プロ野球、サッカーなどを担当。96年から日本経済新聞東京本社運動部に移り、関東の競馬担当記者として現在に至る。ラジオNIKKEIの中央競馬実況中継(土曜日)解説。著書に「競馬よ」(日本経済新聞出版)。

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