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負ける要素が見当たらないアメリカンフェイローの始動戦

  • 2015年07月29日(水) 12時00分


競馬の枠を大きく飛び出した国民的英雄・アメリカンフェイロー

 今週日曜日(8月2日)にニュージャージー州のモンマスパーク競馬場で行われるG1ハスケルインヴィテーショナル(d9F)に、3冠馬アメリカンフェイロー(牡3、父パイオニアオヴザナイル)が出走する。彼の実戦は6月6日のG1ベルモントS(d12F)以来8週間ぶりで、すなわち、3冠馬としての出走はここが初めてとなる。

 今やアメリカンフェイローは、競馬の枠を大きく飛び出した国民的英雄である。3冠期間中に拠点としていたケンタッキー州のチャーチルダウンズから、本拠地のカリフォルニアに戻ってきたのは6月18日だったが、オンタリオ空港からサンタアニタ競馬場まで、アメリカンフェイローが乗った馬運車を地元警察の白バイが先導。上空をマスコミ各社のヘリコプターが追尾する中、サンタアニタ競馬場のボブ・バファート厩舎に到着すると、200人を超える報道人が待ち構えていた。

 しばらく軽い運動にとどめて、3冠を戦い抜いて蓄積されているに違いない疲労の回復に務めた後、初めて時計を出したのが6月29日で、サンタアニタで3Fを追われて36秒4の時計をマーク。その後、7月6日には4Fから追われて47秒6、7月12日には5F=59秒2、6F=1分12秒4と、追い切りの距離を伸ばしつつ、徐々にシャープな内容の調教をこなしてきた。

 7月16日のデルマー開催開幕を前に、カリフォルニア南部の各厩舎も拠点をデルマーに移すが、バファート厩舎の移動は7月13日の夜から14日早朝にかけて行われ、アメリカンフェイローを乗せた馬運車はサンタアニタから6時間かけて14日の朝4時にデルマーに到着。さすがにこの時間では出迎えも少なかったが、その3時間半後に馬場入りした段階では6台のテレビカメラを含む多数のメディアが集結。その後、厩舎で行われたフォトセッションでは、10分以上にわたってカメラの放列の前でポーズをとるサービス精神を発揮している。

 デルマーで初めて時計を出したのは7月18日で、6F=1分11秒4をマーク。そして7月23日にも追い切りを消化し、5F=58秒8、6F=1分11秒0というこの日の1番時計で駆け抜けている。

 デルマーのメイントラックは、この開催からポリトラックからダートに戻っているが、新たに敷設したダートがどこもそうであるように、現段階では時計のかかる仕様となっている。例えば、23日に6Fから追われた馬で、アメリカンフェイローの次に速かった馬の時計が1分14秒0だったから、3冠馬の追い切りがいかに出色であったかがおわかりいただけよう。

 この後は7月28日にもう1本追った後、7月29日にハスケルの舞台となるモンマスパークに移動することになっている。

 G1ハスケルインヴィテーショナルには、アメリカンフェイロー以外に少なくとも6頭は出走してくる模様だ。

 中でも直近の実績が最上位なのが、キーンアイス(牡3、父カーリン)だ。G2リズンスターS(d8.5F)3着、G2ルイジアナダービー(d9F)4着の成績を残して3冠戦線に突入し、G1ケンタッキーダービー(d10F)は7着に敗れたものの、G1ベルモントS(d12F)では3着に健闘している。G2リズンスターS2着、G2ルイジアナダービー3着と、この両競走でいずれもキーンアイスに先着したウォーストーリー(セン3、父ノーザンアフリート)もハスケルに出走予定だ。ただし近走は、G1ケンタッキーダービー16着、6月20日にシッスルダウンズで行われた特別のオハイオダービー(d8,5F)4着と、やや精彩を欠く競馬を続けている。

 潜在能力の高さという点で、ライバル勢の中で抜けているのがコンペティティヴエッジ(牡3、父スーパーセイヴァー)であろう。デビューから無敗の2連勝でG1ホープフルS(d7F)を制覇し、ケンタッキーダービー候補に挙げられたのだが、残念ながらその後、左前脚に亀裂骨折を発症して戦線を離脱。3月27日にガルフストリームのタマラックS(d7F)でカムバックし、ここを8.1/4馬身差で制して3連勝を飾ったものの、ケンタッキーダービーの出走馬を選ぶポイントシステムでは獲得ポイント“0”に終わってダービー出走を断念。ダービー当日のチャーチルダウンズで行われたアンダーカードのG3パットデイマイル(d8F)に出走し、このレースをステークスレコードで制して4連勝。ところが次走、ベルモントSのアンダーカードとして行われたG2ウッディスティーヴンスS(d7F)では、スタート直後に他馬と接触して番手を下げると、戦意を喪失したようなレースで6頭立ての6着に敗退し、デビューから継続していた連勝が止まっている。前走大敗の要因が依然として解明されていないこと、8Fを越える距離を走ったことがないことなど、不安材料もあるが、大駆けの可能性も残しているのがコンペティティヴエッジである。

 その他、6月21日にモンマスパークで行われたG3ペガサスS(d8.5F)を制し、待望の重賞初制覇を果たしたミスタージョーダン(牡3、父カンタロス)、そのG3ペガサスSが頭差の2着だったテックトン(牡3、父バーナーディーニ)、7月11日にモンマスパークで行われた条件戦(d8.5F)で2勝目を挙げたトップクリアランス(牡3、父マジェスティックウォリアー)らもハスケルに出走の構えを見せている。

 枠順は30日(木曜日)に確定するが、組み合わせという面ではアメリカンフェイローにとって、負ける要素が見当たらない情勢といえよう。日本時間では3日(月曜日)朝6時30分の発走となるG1ハスケルインヴィテーショナルに、皆様もぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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