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「今よりももっと信頼される騎手になりたい」藤岡佑介騎手にインタビュー

  • 2015年08月11日(火) 18時00分
競馬の職人

藤岡佑介騎手



藤岡佑介騎手「僕自身の中の引き出しをたくさん持っていたいです」

 猛暑日が続いていますが皆さん体調はいかがですか? 競馬場は最高の避暑地です。お盆休暇を利用してお出かけ下さい。あと、水分補給もお忘れなく!

 先日トレセンに取材に行き林騎手に中山グランドジャンプ制覇の記念に作った扇子をいただきました。この扇子とM・デムーロ騎手とC・ルメール騎手に頂いたキャップがこの夏最高のアイテムです。猛暑が続いていますが、丸坊主頭の僕にキャップは欠かせません(笑)。

競馬の職人

林騎手からいただいた扇子、デムーロ、ルメール両騎手からいただいたキャップ



 アツイと言えば東西で熱戦が繰り広げられていますね。札幌日経オープンではペルーサ号がルメール騎手の手綱さばきで5年3か月の最長ブランクを克服してのレコード勝利。南の小倉ではアズマシャトル号で小倉記念を若手の松若風馬騎手が初重賞制覇。秋競馬に向けて馬も騎手も大きく成長してくれるのが楽しみです。

 今週は、藤岡佑介騎手です。藤岡家と言えば父が調教師(藤岡健一師)、子が兄弟で騎手という競馬一家。このコラムに登場していただきました城戸騎手、藤岡康太騎手とで藤岡厩舎を支える3本の矢だと思います。3本の矢の要になる佑介騎手に突っ込んできました。

常石 今日はよろしくお願いします。

藤岡佑 さあー、何から話しましょう。

常石 お聞きしたいこといっぱいあるんです。きっといろんな方に聞かれていると思うんですが順調に勝ち鞍も上げられ、2010年のサマージョッキーズシリーズの優勝やフェアプレー賞を受賞(2010、11年)した後の2013年4月から11月までフランスへ長期遠征に行かれましたよね。どうしてフランスを選んだんですか?

藤岡佑 一度は海外に行って勉強したいという思いはあったのですが、なかなか踏ん切りがつかなかったし、機会もなかったんですが2012年のエリザベス女王杯直前に乗り替わりになってしまい(オールザットジャズ)今のままではあかんと思う出来事が続けてありました。精神的な強さが足りないなと思いました。行っても帰ってきたら乗る馬もなく誰も声をかけてくれないかもしれない、などいろいろ悩んだけど行くと決めたからには、それだけの覚悟はいると思いました。フランスの競馬は厳しくて僕なんか受け入れてくれないのでは、と思う不安もありました。気持ちをぶれない様にしっかり持とうと決めました。そうすると不安もなくなり、やるだけのことはやってみようと思えるようになりました。フランスに行って活躍したいというのではなく日本と違ういろんなことを経験することで日本に帰ったときいかに有効に生かせるかなということです。

常石 すごい決意ですね。だから長期なんですね。

藤岡佑 1週間や1か月くらいでは競馬場を見て終わりでしょう。その土地のことは生活しないとわからないでしょう。

常石 佑介騎手が実例を作ってくれたら後輩も行きやすくなるでしょうね。

藤岡佑 そうなればいいですね。

常石 帰られてからは競馬が変わりましたか?

藤岡佑 メンタル面では強くなりましたね。通訳もなかったしフランス語を少し勉強したけど難しい…(笑)

常石 僕もいつもバイリンガルやで、って言ってます。滋賀弁と大阪弁とちょっと障害があるので僕だけがわかる言葉と・・・(爆笑)

藤岡佑 それは特技ですね(笑)

常石 フランス語だけでなく(笑)、フランス遠征の経験は今の佑介騎手に大いに生かされていますよね。お父さんは藤岡健一調教師、弟さんは康太騎手、と藤岡家は競馬ファミリーですがその辺はどうですか?

藤岡佑 康太とは時々競馬談義をしますが全くタイプは違い、康太なりに考えて乗っているので応援しています。城戸君は、まだまだ減量がありますが減量がなくなった後に厳しい試練が待ってると思います。そこを乗り越えられるような精神の強さを持ってほしいですね。騎乗については馬の癖を早く見つけるようにと、悪いところではなくこの馬の持ついいところを見つけそこを有効に生かせる競馬をしたらいいと思う、などと本人には話しています。これは自分にも言い聞かせていることですが。

常石 佑介騎手はスタートがうまいですよね。

藤岡佑 ありがとうございます。うまく出るか出ないかでレース結果の80%くらいは決まってしまう、と思っていますので馬の持つ能力を信じて結果を出していきたいと思います。

競馬の職人

厩舎スタッフと談笑する藤岡佑介騎手



常石 今日はすごくうるさい馬の調教をしていましたね。今にも放馬しそうでハラハラして見ていました。怖くなかったですか?

藤岡佑 手慣れた厩務員さんのなだめ方に『さすがだな〜』と感心していました。こんな人たちに助けられていますよね。しっぽに赤リボンはついていますが僕が乗るときは落ち着いていましたよ。

常石 今日の調教は無理かなと思っていましたが、人のいない場所へ連れて行き、ゆっくり時間をかけて落ち着かせていましたね。

藤岡佑 これが馬のいいところを見つけることかな? これくらい気の荒い馬のほうがいい競馬をしてくれることが多いですよね。たとえばゴールドシップのような馬とか、僕自身は気の荒い馬に乗るのは好きですよ。いろんな厩舎から多くの馬に乗せていただけるので結果も出して自分をアピールしていきたいと思っています。

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調教へ向かう藤岡佑介騎手



常石 今年も35勝を挙げましたし、JRA通算も584勝(編集部注:2015年8月9日終了時点)していますよね。600勝が可能になってきました。楽しみですね。

藤岡佑 いやいやまだまだですがここまで来られたのも皆さんのおかげです。今よりももっと信頼される騎手になりたいです。『この馬乗ってみて』と声をかけていただいたとき、跨って馬の持つ癖をつかんで、どうすればこの馬は走るかな、などを考えられるように僕自身の中の引き出しをたくさん持っていたいです。結果を残していくことで馬も僕も成長できると思います。

常石 深くいろんなことを考えているんですね。ワンカラットやスーパーホーネットなど活躍馬に多く騎乗されていましたがこれからの展望はありますか?

藤岡佑 僕には何か足りないものがあるんでしょうね。まだ中央のGIを勝てていないんです。是非取りたいタイトルです。

常石 2着が多くいつも惜しい競馬をされていますね。今の佑介騎手ならチャンスは十分あると思います。騎手クラブの仕事もして、騎手の皆さんの世話もしているんでしょう。多忙ですね。それだけ信頼が厚いということでしょう。600勝を達成したときにはプレートを僕も持ちたいですね。

藤岡佑 その時はよろしくお願いします。頑張ります。

常石 貴重な話が聞けてうれしかったです。今日はありがとうございました。

***

 社宅が近かったので康太騎手同様に騎手になる前から犬の散歩時に会ったりしていたので親近感を覚えます。とってもさわやかな佑介騎手でした。若手に信頼され先輩にも好感度が高い佑介騎手でした。残り16勝となってきたことで今年中の600勝達成も楽しみになってきました。大きい数字ですよね。今後の活躍も楽しみにしています。つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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