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我慢の競馬と斤量差で実績馬を一蹴/白山大賞典

  • 2015年10月07日(水) 18時00分

(撮影:武田 明彦)



柴田大知騎手の落ち着いた好判断

 エーシンモアオバーにこのレース3連覇が期待された一戦。それにしても地方小回りコースの長距離戦における、岩田騎手のレースを支配するペース配分は絶妙だ。一昨年、昨年と、エーシンモアオバーでマイペースの逃げに持ち込み、ゴール前での後続の追撃を完封。今回もスタート後に先頭に立つと、1周目のスタンド前でペースを落とした。今年も岩田騎手がうまくペースを落としたなあ、と見ていたら、そうはさせじと競りかけて行く馬がいた。最終的に単勝1番人気となったソロルだった。

 しかしそこでソロルは一気に行き切ってしまえばよかったのだが、並びかけたところで1コーナーの入口。ソロルにとってさらに不運だったのは、2番手を追走していたスギノハルバードも連れてペースを上げ、3頭が併走状態になったこと。ラチ沿いがエーシンモアオバー、真ん中がスギノハルバード、ソロルはさらにその外を回ることになった。結果、岩田騎手が軽く手を動かしただけで、2コーナーを回るところでは再びエーシンモアオバーが単独で先頭に立つことができた。

 エーシンモアオバーにとって厳しいレースとなったのは、1〜2コーナーで一旦ペースアップしたうえ、さらにソリタリーキングにも早め3コーナーで勝負にこられたこと。そこからのロングスパートでは、逃げ馬にとってはなかなかに苦しい。しかも昨年より1キロ重い58キロを背負ってのことだ。

 道中で2度、レースに動きがあったところで、エーシンモアオバーの真後ろでじっと我慢をしていたのが、勝ったマイネルバイカだった。仕掛けたのは、ソリタリーキングがエーシンモアオバーに外から並びかけようとした3〜4コーナーの中間。そして4コーナーからはこの3頭が4番手以下を離しての追い比べとなった。54kgのマイネルバイカに対して、エーシンモアオバーとソリタリーキングは58kg。直線、200mちょっとの瞬発力勝負となって、多少の能力差はあっても、さすがに4kgもの斤量差は大きかった。マイネルバイカは、エーシンモアオバーとソリタリーキングの間を割って抜け出せたという幸運もあって、ゴール前で突き抜けた。

 マイネルバイカは4番人気という気楽さもあっただろうが、勝負どころを待って追い出したのは柴田大知騎手の落ち着いた好判断といえよう。昨年1月の東海Sでニホンピロアワーズの3着、10月にはオープン特別のブラジルCを勝っているという実力で、地方のJpnIII特有の実績馬に厳しい別定重量ゆえ、逆に重賞勝ちがないことで54kgという斤量に恵まれた。今回は補欠1番目からの繰り上がり出走での勝利となり、ここで賞金を加算できたことでは、今後、ダートグレード戦線でのレース選択がある程度自由になりそうだ。

 一方のソロルは1番人気ゆえ、エーシンモアオバーを逃げ切らせるわけにはいかないという気負いはあっただろう。それで1周目の直線でみずから動くことになったが、すぐに1コーナーに入るところだったというタイミングはやや疑問だった。ソロルは勝ち馬から11馬身ほども離されての5着、連れて動いたスギノハルバードはさらに離れてのブービー。それを考えれば、その2頭の早めの仕掛けがあり、さらに3コーナーでのソリタリーキングの追撃にも対応したエーシンモアオバーは、2着に負けたとはいえ、1馬身半差で食い下がったということでは、9歳にしてなお健在をあらためて示した。

 惜しくも白山大賞典3連覇を逃したエーシンモアオバーだが、このあとは名古屋グランプリ3勝目を狙うそうだ。金沢、名古屋では結果を残しているが、不思議と浦和記念は5度も出走して2着、3着が一度ずつあっただけで勝っていない。金沢、名古屋が栗東からそれほど遠くないのに対し、浦和へは長距離輸送となることが敗因として挙げられたこともある。左回りであまり結果を残していないということもありそうだ。

 8歳のソリタリーキングは、今年だけで57〜58kgを背負って2着3回に3着1回。地方のダートグレードではほとんど崩れることがないが、ここ2年ほどは他馬の引き立て役に回っている感じがある。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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