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2強が競り合いサウンドトゥルーに幸運が/日本テレビ盃

  • 2015年10月08日(木) 18時00分

(撮影:高橋正和)



着差ほどの強さかは疑問

 人気3頭が上位入線も、波乱の決着。それは、3連複150円、3連単3110円という配当が示すとおり。

 全馬ほぼ互角のスタートも、人気2頭は軽く押して行く程度で馬群から抜け出し、1コーナーに入る前に早くも3番手以下との差を広げた。ここから2頭の一騎打ちになってしまうのか、と正直思った。しかし結果は、そうはならなかった。スタート後は中団よりうしろにいたサウンドトゥルーだったが、向正面から徐々に位置取りを上げていき、3コーナー過ぎでは単独3番手に。直線を向いたところで早くもコパノリッキーは一杯になり、クリソライトが単独で先頭に立ったものの、直線半ば過ぎでサウンドトゥルーが並ぶ間もなく交わし去っていった。2着のクリソライトに3馬身差、3着のコパノリッキーにはさらに7馬身差。重賞3度目の挑戦での初制覇が、GI(JpnIも含む)馬相手に圧勝ともいうべき結果となった。

 包まれると走る気を失くすことがあるコパノリッキーが3番という内枠に入っただけに、今回は行くしかない。とはいえそれほど仕掛けるわけでもなくスンナリとハナに立った。一方のクリソライトは6番枠からで、コパノリッキーに1/2〜3/4馬身程度の差でぴたりと追走した。クリソライトは帝王賞のときのように掛かっているふうでもなく、また前のコパノリッキーも無理しているようにも見えず、3番手以下とは単にスピードの差にも思えたのだが、やはりペースは速かった。前半4Fが47秒2で、中間の1Fに12秒7とやや緩むところがあり、そして後半の4Fは50秒3と上りがかかった。前後半4Fのタイム差はじつに3秒1。そして勝ちタイムは、今年が1分50秒2、昨年が1分50秒1、一昨年が1分50秒3と、いずれの年も良馬場でほとんど同じ。しかし前後半4Fずつのタイム差は、昨年が1秒0で、一昨年が2秒3。ということからも、やはり今回は実績馬2頭が競り合って飛ばしすぎた。レースの上り3F38秒1は昨年より1秒以上遅く、上り37秒2のサウンドトゥルーだけが普通に上ってきた。

 とはいえ、着差ほどサウンドトゥルーが強いレースをしたかといえば、そうとも思えない。もともと後方追走から末脚勝負というタイプで2強には最初から勝負にはいかず、しかし2強が他の馬たちとは関係なく競り合ってくれたことで、サウンドトゥルーに幸運の女神が微笑んでくれた、というような勝利だった。

 そもそもクリソライトはたびたび惨敗があるように、常に力を発揮するというタイプではない。帝王賞でハイペースの2番手を追走しながら、ホッコータルマエに3/4馬身差で2着に食い下がったようなレースが今後もできればと思ったが、馬券を買う立場としては引き続きどこで狙ったらいいかというのは難しそう。コパノリッキーは骨折休養明けで万全の仕上がりではなかったのだろう。パドックでも何か集中していないような雰囲気はあった。

 実績馬が凡走すれば、馬券的には大波乱となりそうなところだが、そうならなかったのは、実力にあまりに開きがあったため。結局中央4頭が上位独占となったのだが、3着コパノリッキーから4馬身離れて4着のラヴィアンクレールは、準オープンは勝ったもののオープンでは苦戦というレベル。南関東勢は地元船橋の2頭が出走しただけ。昨年の地方年度代表馬サミットストーンは怪我による休養明けでプラス13kg。陣営のコメントにもあったとおり仕上がり途上。同じ1800mの報知グランプリCを勝っているバトードールは、そのときの勝ちタイムが1分53秒7で、今回が1分54秒3で7着。休み明けを考えれば自分の時計では走っている。

 昨年まで日本テレビ盃は9月の秋分の日、もしくはその前後に行われていたが、今年はその開催が2週うしろにずれた。これによって大井の東京記念の翌週に行われていたものが、今年は中2週となった。これまで中央の一線級との対戦を避け、地元南関東の有力馬は日本テレビ盃ではなく東京記念のほうに集まる傾向にあったが、それでも中2週となれば東京記念の上位馬の何頭かは日本テレビ盃にも出走してくるかとも思ったが、まったくそうはならなかった。『地方競馬に吠える』のコラムで以前にも書いたが、ダートグレードにおける地元有力馬不在の空洞化は、なかなかに悩ましい。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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