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武豊の逃げと蛯名の内枠と菊花賞のG1レーシング

  • 2015年10月22日(木) 12時00分


キタサンブラックには菊花賞ではなく有馬記念を勝って欲しい。

と、セントライト記念後の週に1回お願いして、その翌週にも念のためお願いした。でも今週は菊花賞だからもう一度お願いしておく。
やっぱり、どこをどう見ても、北島のサブちゃんが唄うステージは菊花賞後ではなく、有馬記念後だと思う。京都が違うと言っているわけではない。年末の年の瀬こそが相応しいと思うからだ。もし競馬の祭典・有馬記念が暮の京都で行われるのなら京都でもいい。

とはいえサブちゃんの「G1を勝ったら唄う」はおいしいネタのはずで、競馬も芸能も売りのスポーツ紙がほっとくはずがない。だからその動向を探っていたら、もうすでに2紙でその記事を確認した。関東でこうなんだから関西ではもっと扱われているか。週末、キタサンブラックを本命にする記者がいたら、その記者の予想とともに祭りの神輿がさらに上がるかもしれない。土曜の一面、もしくは日曜の裏一面をサブちゃんが飾る可能性は大だ。

でも京都競馬場のステージ造園課のみなさんはどう対応するのだろう(そういう課があるかは知りませんが…ってふつうはない)。そして中山のステージ造園課のみなさんはどんな気持ちで菊花賞を見るのだろう。

あくまでも自分は有馬記念こそ唄うに相応しい場所と思っているけれど、その一方で、ここでもいい勝負になる、なってしまうとも本気で思っている。だから菊花賞は見せ場ありつつの、有馬へ前向きになれそうな、それでいて手ごろな人気になりそうな(多少押し出されるのは仕方がない)着順で走って欲しいと願っている。どんな着順だよ!って自分でも思うけれど、いろんな要素が絡み合って、いい敗戦は出来上がるからひとことでは申せません。

とは言ったもののキタサンブラックは菊花賞でもやはり怖い。
スプリングS、セントライト記念と中距離のG2を2勝している。この実績は重い。今回のメンバーで重賞を2勝している馬はキタサンブラックだけ。仮に本賞金を実績と捉えると、本賞金6100万のキタサンブラックより上なのはサトノラーゼン(7500万)とリアルスティール(6300万)だけだ。しかもその差はわずか。
リアルスティール、サトノラーゼンにはダービーで完敗しているけれど、リアルスティールにはスプリングSで勝っているし、サトノラーゼンには500万のレースで3馬身差で勝っている。

前走のセントライト記念の勝ち方も自分には余裕があったように感じられた。距離不安がつきまとっているようだけど、それは肉体的なスタミナの問題というより精神的なスタミナの問題にも思え、そのあたりが成長したのかもしれない。だとしたら、上手く折り合えれば、菊花賞でも太刀打ちできてしまう……………。(おっと…)

実績3位で、予想ながら現在5人気。
これで3人気以内にいたら謹んで消させてもらうけれど、5人気はいいとこだ。おそらく最高で4人気、最低で6人気くらいではないか。

人気もちょーどよくなってしまう。そこも怖い。
キタサンブラックはヤナガワ牧場の生産馬だ。
ヤナガワ牧場生産馬というと、最近ではコパノリッキー、コパノリチャードと、立てつづけにG1を奪取した2頭が記憶に新しい。なんだか勢いを感じさせてくれて、それだけで怖い。人気もあるよりはない方がいい。実際、フェブラリーSは16人気、高松宮記念は3人気だった。穴馬主の異名を取るコパさんの馬だから穴を開けたのかもしれないけれど、もしかしたらそれはヤナガワ牧場の伝統かもしれない。

今から27年前の1988年、スーパークリークが勝った菊花賞で、7人気で2着したガクエンツービートという馬がいた。その馬を生産したのがヤナガワ牧場だった。ガクエンツービートはスーパークリークが圧勝する中、猛然と追い込んで3着馬にハナ差で2着した。騎手は竹原。シブい騎手だった。枠連3-8。4110円。若かりし頃、このレースをガクエンツービート本命で仕留めたからよ〜〜く覚えている。それゆえに伝統と思うわけだ。

フェブラリーSはダート。高松宮は1200。菊花賞は3000。どれも今の日本では主流の距離、コースではない。だからこそ社台系に太刀打ちできるとも言える。
そのヤナガワ牧場がコパさんにつづき、今度はサブちゃんにG1を進呈しようというのか? ひぃ〜こわい。

おっととっと、キタサンブラックには菊花賞ではなく、有馬記念を勝ってほしいという個人的お願いを書くつもりだったのに、ちょっとした手違いでノスタルジーにまで飛んで行ってしまった。とにかく、キタサンブラックには、有馬で人気になりすぎない、でも光を灯す感じで負けて欲しいと願うんであります。
(本当は惨敗してもいいんです。有馬で人気が下がるから。でもそれだと休養してしまいそうでしょう。だから光は必要なんであります)

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菊花賞の武豊
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菊花賞で武豊騎手はレッドソロモンに騎乗する。
菊花賞の武豊騎手についてはここ数年けっこう書いている。去年も書いた。

勝てると確信している馬と自力で勝つには厳しいと感じている馬では騎乗法を替えているのではないか? そんなことを書いた。

武豊騎手の菊花賞の戦法
14年トーセンスターダム 5人気 12-13-11-11 8着 差し
13年マジェスティハーツ 2人気 18-18-17-13 13着 差し
11年ショウナンマイティ 8人気 15-16-12-9 8着 差し
10年ローズキングダム  1人気 13-13-10-10 2着 差し
09年リーチザクラウン  1人気 1-1-1-1 5着 逃げ
08年スマートギア    5人気 14-14-13-7 4着 差し
07年ドリームジャーニー 2人気 18-18-15-8 5着 差し
06年アドマイヤメイン  3人気 1-1-1-1 3着 逃げ
05年ディープインパクト 1人気 7-7-7-7 1着 中団
04年ハーツクライ    1人気 15-15-14-10 7着 差し
03年サクラプレジデント 3人気 12-12-16-15 9着 差し
02年ノーリーズン    1人気 落馬
01年ダンツフレーム   2人気 15-15-15-13 5着 差し
00年エアシャカール   2人気 8-9-10-7 1着 中団
99年アドマイヤベガ   1人気 9-9-9-9 6着 中団
98年スペシャルウィーク 1人気 10-10-9-8 2着 ほぼ中団

絶対的に勝ち負けできそうな馬は中団競馬。
それ以外は差しか逃げ。差しは追い込みといってもいいくらいに後方だ。ちなみに逃げと差しを比べると逃げの方が面白い。

一番自信があったと思われるのが中団に陣取ったディープインパクトであることがわかる。
っていうか、2000年に入ってからはディープ以外はほぼ差しでときどき逃げ。人気はほぼ関係なし。ローズキングダムでも差し系だった。
いい馬にたくさん騎乗しているがゆえに、絶対的に強い馬と、人気はあっても実はそこまで強くない馬の判断が的確に出来てしまい、このような騎乗になっているのではないか。これが仮説だ。名馬にたくさん乗っている武豊騎手ならではの知恵の悲しみに思えてならない。

では今年はどうか?
レッドソロモンは先行系の馬だ。
この馬に関しては、ここ2戦の調教師のコメントを読むとよくわかる。
「逃げて欲しくはない。でも瞬発力勝負には持ち込んで欲しくもない」
こんな主旨だ。

つまり、頃合いを見て、自分でペースを上げていくような競馬で粘りこんで欲しいと言ってるように聞こえる。2走前のWSJSでは最初から逃げてしまった。前走の神戸新聞杯では先行させたけど、ペースに付き合いすぎて最後瞬発力勝負になってしまった。
要は難しいペース判断が求められるわけだ。それゆえの川須騎手から武豊騎手への乗り替りではないか?

だとすると、今回の戦法は、差しではなく先行となる。
自分は菊花賞では武豊騎手にはいつも逃げて欲しいと思っているので、レッドソロモンへの騎乗は興味しかわかない。メンバー的には逃げそうな馬や早めに仕掛けそうな馬が今年は揃っていて、思うような主導権は取れなさそうに思える。けれど、逆に言えば、自分で仕掛けなくても望むべくペースになる可能性もあるということだ。

リアファルは今回は逃げないと思う。この馬に関しては神戸新聞杯のときに書いた。
間違いなく一介の逃げ馬ではない。それは2走前のマレーシアCでよくわかる。逃げて直線を向いて、飲み込まれそうになってから伸びた。あの前向きさは逃げ馬のそれではない。そのことはルメールも当然わかってるはずで、菊花賞では誰かが主張すればきっと下げるはず。

となると逃げそうなのはミュゼエイリアンの横山の典さんかスピリッツミノルの酒井騎手か。この2騎手ならペースは緊まりそうだけど、できれば武豊騎手に逃げてもらって、番手に横山の典さんがいい。
この二人がペースを作ったら面白そうだ。ワクワクする。

ちなみに武豊騎手がアドマイヤメインで逃げて3着したときに勝ったのはソングオブウインド(武幸)だった。道中最後方にいて、3角からマクって、4角8番手から差し切った。でもレースに勝ったのは2着ドリームパスポート(横山典)だった気もする。道中6、7番手にいて、抜け出したところをクビ差でソングオブウインドに差し切られたからだ。

道中6、7番手。福永騎手のリアルスティールか岩田騎手のサトノラーゼンがいそうだ。

リーチザクラウンで逃げて5着したときに勝ったのはスリーロールス(浜中)だった。道中3〜5番手で先行していた。
道中3〜5番手。ルメールのリアファルがいそうだな。サブちゃんのキタサンブラックもいるかもしれない(ひぃ〜)。

どちらも勝ったのは8人気の馬だった。予想では現在8人気はワンダーアツレッタ。
この馬には春に若葉Sで0.3差つけて勝っている。だけど自身は予想14人気。よだれの出そうな人気だ。
正直勝てるとは思わないけれど、ペース次第では3着は望めると思っている。

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菊花賞の蛯名
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内枠の蛯名

京都の長距離(菊花賞&天皇賞春)ではこれにつきる。
菊花賞ではタンタアレグリアに騎乗する。

以下は蛯名騎手の菊花賞の成績。

過去20年で12回騎乗。
14年 2枠4番 サウンズオブアース 4人気2着
13年 6枠11番 ヒラボクディープ 17人気17着
11年 1枠1番 トーセンラー 3人気3着
09年 8枠16番 ナカヤマフェスタ 4人気12着
04年 7枠14番 ハイアーゲーム 3人気11着
03年 8枠16番 ヴィータローザ 7人気7着
02年 6枠11番 タイガーカフェ 11人気13着
01年 2枠2番 マンハッタンカフェ 6人気1着
00年 5枠9番 ジョウテンブレーヴ 5人気8着
99年 3枠5番 ラスカルスズカ 4人気3着
98年 4枠7番 ダイワスペリアー 4人気6着
95年 7枠15番 ホッカイルソー 7人気3着

3枠より内に入ったのは4回。やったー! すべてで馬券になっている!!!
(大事なのは「すべて」の部分です)

4枠より外で馬券になったのは20年前のホッカイルソーのみ。

天皇賞春はここでは書かないけれど、内枠ほど強いのがわかる。フェノーメノ1着だけでなく、アルナスライン2着もマンハッタンカフェ1着もカレンミロティック3着も内枠だった。

タンタアレグリアで気に入っているのはダービー。
やや出負けして、道中後方の17、16番手を追走し、直線で馬群の中から伸びて7着した。
完敗は完敗だけど、サトノラーゼンとは0.5秒差、リアルスティールとは0.2秒差だった。これならば、菊花賞で太刀打ちできる。

過去で言えば、菊花賞3着のローゼンクロイツや菊花賞2着のフローテーションや菊花賞4着のレーヴドリアンや菊花賞4着のベールドインパクトみたいな感じだ。3着4着ギリギリの境界線ではある。でも人気もなさそう(予想10人気)。これなら買える。

セントライト記念のレース後の蛯名騎手のコメントは「次はもっとやれるでしょう」だった。
レース後コメント好きの自分の見立ててでは、こういう表現の蛯名騎手の期待値は高い。
レースぶりも後方競馬ではなく菊花賞を想定したかのような中団競馬だった。

ダービー7着。
セントライト記念からの上積み。
これだけで3着か4着は狙える。
で、最後に枠。
内枠に入ったら、タンタアレグリアを積極的に買いたいと思う。

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菊花賞注目馬
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レッドソロモン 武豊の逃げ
タンタアレグリア 蛯名の内枠
アルバートドック 神戸新聞杯はぜんぜん仕上がってなかったらしい。最初から叩いて菊花賞狙いだったか? それで7着は悪くない。

タンタアレグリアもアルバートドックもG1レーシングの馬。G1レーシングとは社台系追分Fを中心にしたクラブ馬主。まだ重賞勝ちはアルテミスSの1勝のみだけど、いつG1を勝ってもおかしくないラインナップのはずだ。
そのG1レーシングが今回3頭の馬を出走させる。
アルバートドック
タンタアレグリア
スティーグリッツ

3頭出しは、サンデーRの2頭、キャロットの2頭もよりも多い。もしかしてキャラ立ちさせてきたか? 
「菊花賞ならG1レーシング」
そんなキャッチでの売り出し作戦か? いくら天下の社台グループのクラブ馬主とはいえ、他クラブとの差別化は重要だろう。それもこれも今回出走する3頭の成績で決まる。

スティーグリッツはここでは外してみた。理由は割愛するけど、3連複のヒモでは拾おうと思っている。

リアルスティールとリアファルには大きな敬意を持って接するつもりです。ただどちらか1頭は圏外を期待しております。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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