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「常識破りの2頭」小柄なのにパワフルなリード&血統から考えられない末脚のオーディン/吉田竜作マル秘週報

  • 2015年10月28日(水) 18時00分


“菊花賞のように競馬の“常識”が破られる時がある

 POGのリミットは一般的には日本ダービーまで。“これ”という馬を選ぶ基準もこの「ダービーの舞台にマッチするかどうか」が一番と言っていいだろう。本紙発行の「ザッツPOG」のような資料や、各愛馬会のホームページに載っている馬体の写真、口コミでの評判…様々な材料を基にそれぞれが取っておきの2歳馬を指名する。

 もっとも、これらの情報以上に重視されるものといえば、競馬の根幹でもある血統。分かりやすく例えるなら、ダービーを狙う馬としてキンシャサノキセキやサウスヴィグラス産駒をピックアップする人がいるのか…ってことだ。これはPOGの話だけではなく、実際の生産者の立場でも同じだろう。種牡馬、繁殖馬にはハッキリとした「色」があり、それを次世代へと伝えていくからこそ競馬は「ブラッドスポーツ」と呼ばれるのだ。

 しかし、時にそうした競馬の“常識”が破られる時がある。菊花賞はその好例と言えようか。勝ったキタサンブラックの母の父はサクラバクシンオー。自身が1993、94年のスプリンターズSを連覇しているだけでなく、その産駒もビッグアーサー、ベルカント、シーイズトウショウ…スプリント色の強い馬が圧倒的に多い。父系としてではないにしても、この血が入った以上は短距離、持ってもマイルまでと思うのが常識的な感覚だ。

 ところが、1800メートル(スプリングS)、2200メートル(セントライト記念)で重賞を勝ち、ついには3000メートルのGIさえも勝ってしまった。10月25日は「サブちゃんまつりの日」として深く記憶に刻まれると同時に、長く根付いた競馬界の常識が覆された日としても記憶されることだろう。

 イレギュラーなことが起こるからこそ、馬券でいえば万馬券にもなり、ファンは「競馬に絶対はない」という言葉を改めて実感する。果たして次に起こるイレギュラーな事態は? 現在POG期間中にある2歳馬が新たに常識をひっくり返してくれるかもしれない。

 その筆頭として取り上げたいのがGIIIファンタジーS(11月7日=京都芝外1400メートル)で復帰予定のアドマイヤリード(牝・松田博)だ。

 7月11日の新馬戦(中京芝1600メートル)で負かしたシルバーステートが次走未勝利戦レコードV→500万下・紫菊賞を快勝したことで再評価されているこの馬、馬体は400キロにも満たない。もともと小柄に出ることが多いステイゴールド産駒とはいえ、デビュー戦の馬体重が398キロでは気にせずにはいられないが、だからといって「ひ弱い」とか「非力」と侮るなかれ。先週の栗東ウッドコースは馬場が重かったのか、ゴール前で脚が上がる馬が続出したが、このアドマイヤリードはそんな馬場でアラバスター(2歳500万下)に持ったままで先着。小型馬にありがちなスピードに偏った感じではなく、そのフットワークは驚くほどパワフルなのだ。

「中京の新馬戦にしても軽い馬場ではなかったが(稍重)、難なくこなしてくれたからな。先週の追い切りもそうだが、馬場のことをあまり気にしなくていい馬なんだろう。カイバもよく食べているし、小柄でも丸みがあるのがいい」(松田博調教師)

 次なる舞台で「小柄=非力」という安易な“常識”を覆してくれるに違いない…おっと、その前に今週も“常識破りの2歳馬”候補がいる。

 土曜(31日)のオープン・萩S(京都芝外1800メートル)にはスマートオーディン(牡・松田国)がエントリー。こちらは祖父フジキセキ〜父ダノンシャンティと続くスピード色の強い血統ながら、デビュー戦となった9月20日の阪神芝外1800メートルで2着レヴィンインパクト(次走の未勝利戦を快勝)に2馬身半の差をつけて楽勝。その確かな末脚はキタサンブラック同様、距離の限界を超える期待を感じさせるに十分なものだった。

「追い切りの段階から完歩が大きくて、他の馬と違うと感じていた。新馬戦と同じ距離で、1つ勝った馬相手にどこまでやれるか。これをクリアすれば先が見えてくる」(松田国調教師)

 志半ばで引退を余儀なくされた父、そして祖父が果たせなかった夢を、このスマートオーディンが完成させることができるのか。常識の壁をぶち破ったその先に、「血の物語」は完成を見るに違いない。

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2010年に創刊50周年を迎えた夕刊紙。競馬確定面「競馬トウスポ」(大阪スポーツは「競馬大スポ」、中京スポーツは「競馬中京スポ」)は便利な抜き取り16ページで、中身は東スポグループだからこその超充実ぶり。開催3場の全36レース(2場開催の場合は全24レース)の馬柱を完全掲載しています。

関東・舘林勲、大阪・松浪大樹の本紙予想のほか、記者による好評コラム(「一撃・山河浩、馬匠・渡辺薫など)、そして競馬評論家・井崎脩五郎、爆笑問題の田中裕二、IK血統研など超豪華執筆陣の記事も読みごたえたっぷり。馬券作戦に役立つ情報が満載です。

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