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中谷雄太騎手(4)『同期・酒井学騎手のGI勝利に刺激を受けて』

  • 2015年11月23日(月) 12時01分
おじゃ馬します!

▲中谷騎手のインタビュー最終回。同期との絆を明かします


今回が中谷騎手のインタビューの最終回です。関東から関西への移籍というガラッと環境が変わったにも関わらず、すんなりと溶け込めたのは、持ち前の明るい性格だからなのか?! ご自身による性格診断から、話は同期との関係に。特に境遇の似ている酒井騎手のGI勝利には、感じるものがあったと言います。(取材:東奈緒美)

(前回のつづき)

がんばったら、いいことあるなって


 美浦から栗東ってまったく違う環境に入っていくのって、人見知りなタイプだと打ち解けるまでに時間がかかりそうですが…、中谷さんはすごい明るくて、コミュニケーションはみんなと取れる感じですかね?

中谷 そうですね。あんまり人見知りはしないかな。

 ご自身で分析すると、どんな性格ですか?

中谷 どうなんですかね? 矢作先生に聞いてもらうのが一番(笑)。何だろうな、気を遣ってないようで、案外気を遣ってるかな。でもそれは周りに見せないようにっていうか。

あとは基本的に楽観的かな。辛いことがあっても、1週間ぐらいしたら忘れるかな。考えててもしょうがねえか、みたいなところは、最終的にそうなるかな。あと、周りからすると少々面倒くさいかもしれない。「うるせーな、こいつ」って思われてると思う。

 そうなんですね。それは、仲のいい松岡騎手とかに言われるんですか?

中谷 言われる。「あんまり後輩にそうやって言うなよ。しゃーないやんって。自分だってやんだから」って。確かにそうやなって。正海は5つ下なんだけど、しっかりしてるからね。

 後輩に怒られて。

中谷 そうそう、後輩にね(笑)。栗東に来てからも(藤岡)佑介とか、浜中とか、普段から仲良くしてるのは後輩ばっかり。でも、後輩から嫌われるようじゃダメだとも思うし。それが僕の強みかなっていうのはありますよね。

 親しみやすいお兄さん的な存在なんですね。

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▲後輩とも仲がいい中谷騎手に、「親しみやすいお兄さん的な存在なんですね」


中谷 いや、バカにされてるんじゃないですか(笑)? イジられてるというか。でも、そういうのもいいかなと思ってね。

 栗東に来たことで、池添騎手だったり酒井騎手だったり、関西の同期と一緒に仕事できるというのは楽しいですか?

中谷 楽しいですね。僕がこっちに来たときは、「雄太が来たから!」って、謙ちゃんとか学とか同期みんなで集まってごはん食べに行ったりしてね。去年も、学が菊花賞を勝った時に、謙ちゃんの家に集まって盛大に勝ち祝いをやったりして。

 個性派というか、いろんなタイプの方がいらっしゃいますよね。

中谷 これだけバラエティーに富んでる期も珍しいですよね。福永先輩たちの期もそうだけど、うちらの期もみんな濃い。むしろ、キャラが濃いから生きていけるみたいなね。

 お互いには、どんな関係なんですか?

中谷 昔からなんですけど、仲はいいんだけど、一人一人が自立している感じですかね。変にべったりというのではない。謙ちゃんとか(太宰)啓ちゃんは出身が競馬関係ですから、そういう意味で負かしてやりたいっていう気持ちもありました。だから、普段は仲がよくて、競馬ではいいライバル。まだうちの同期、ほとんど辞めてないからね。しぶといね(笑)。水面スレスレまで行っても、またふっと上がってくるから。

 お話を伺っていて、中谷騎手と酒井騎手は、境遇が似てるのかなと思いました。辛いときも経験して、そこから必死で這い上がってきたというところが。

おじゃ馬します!

▲トーホウジャッカルで菊花賞を制した酒井学騎手、自身2つ目のGIタイトル


中谷 それは、ありますね。学がダメだったときも見てるし、そこからどんどん良くなって、重賞を勝って、GIまで勝つようになって。その時は自分のことのようにうれしかったし、がんばったらいいことあるんだなって、教えてくれたというか。ジョッキーをやってる間にいいことが起きるかどうかは分からないですけど、ここで頑張っておかないと、その先いい人生を送れないかなって。これでダメなら仕方ないっていうくらいまでがんばって、やり切って騎手を辞めたいですね。

 大きなアクシデントなく来てる方よりも、壁を乗り越えた方のほうが、いざというときに強いですよね。

中谷 それは本当に強みだなと思います。精神的にも強いと思うし。だから、今の若手で腐ってる子を見ると、かわいそうだなって思うんですよね。気持ちが分かるだけに。

 今の若いジョッキーたちには、厳しい環境って言われますもんね。

中谷 だけど、僕らの時って師弟関係がすごく重要視されていて、高松一派だったら高松一派の馬しか乗れなかったんです。でも今の子って、ポンっと成績出したら、ある程度いい馬にも乗れるわけですよ。そういう意味では、俺らの時のほうがよっぽど厳しかったと思います。だから、むしろ今の子は楽だなと思いますね。

 そういう環境でも、出て来る人は出て来てたわけで。

中谷 そうそう。減量期間が5年に延びるという話があるじゃないですか。僕は必要ないと思います。3年でダメなやつはダメだと思うし、3年で減量なくなっても出てくるやつは出てくるし。以前に比べて若手が伸びないとか、そういうのはないと思います。本人次第だと思いますよ。どれだけ頑張るか。頑張っていれば、必ず見ててくれる人がいるし。

 中谷騎手は、身をもって経験してますもんね。

中谷 僕の場合は、矢作先生にこれだけバックアップしてもらっていますからね。だから、僕が少しでも活躍することが、先生への恩返しだと思っています。

 ちなみに、同じように田中博康騎手も、今栗東で活動されていますけども。

中谷 博康はね、気にかかる。あいつは海外に行ったり、向上心がすごく強い。それだけに、もっと乗れてもいいのになって思って、ずっと見てるんですけどね。仲もいいから、一緒にご飯食べに行ったりもするんです。全然考えてないような子だったら別にどうも思わないですけど、博康は真剣に考えてるし、競馬に対する思いもすごくあるのでね。自分と重なる部分もあるし、応援しながら見てるんですけど。

 何かをきっかけに、浮上する騎手もいますもんね。最後に、これから騎手として、どんなことを目標にしていきたいですか?

中谷 次は重賞を勝ちたいんですけど、それはめぐり合わせの部分もありますのでね。仕事のスタイルは変える必要ないと思うし、今まで通り一生懸命仕事して、そういう馬にめぐり合ったときにチャンスを掴めるように準備はしておきたい。精神的な面であったり、技術的な面であったり、自信を持って乗れるような状態にしておくこと。成績も今年より来年、来年より再来年って、右肩上がりで上っていかないといけないですし。

 まだまだこれから、という感じですか?

中谷 もちろんこれからだと思いますし、確実に結果を出さないといけないとも思っています。周りの方が救ってくれて、せっかくここまでいい流れを作ってもらったので、あとは自分の力でどれだけ上に行けるか。奢らないでしっかりとやっていきたいです。

(了)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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