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A.アッゼニ騎手(1)『イギリスの若武者登場!“日本で騎乗することが夢でした”』

  • 2015年12月07日(月) 12時01分
おじゃ馬します!

▲イタリア出身、イギリス競馬に所属するアッゼニ騎手(24)


今年最後のゲストは、短期免許で来日中のアンドレア・アッゼニ騎手です。イタリア出身の24歳。イギリス競馬を主戦場に、世界を舞台に戦っています。2014年英リーディング9位。同年セントレジャー(英GI)、2015年キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英GI)を制するなど、大舞台に強いジョッキーです。初来日騎手の気になる素顔とは。(取材:赤見千尋)


イギリスで始まった中内田調教師との縁


赤見 来日されて、短期免許期間の半分が過ぎました。実際に騎乗されてみて、いかがですか?

アッゼニ 日本の競馬はトレセンだったり競馬場だったり、施設がとても良いですね。それに、日本の文化も食べ物も大好きです。

赤見 食べ物だと何がお好きですか?

アッゼニ ヤキニク、スシ! 日本は美味しいものがたくさんありますね。そういう点でも日本が大好きだし、日本人もみんな良い人。初めて日本に来てわからないことばかりでしたが、僕を支えて助けてくれる方々が周りにたくさんいます。

赤見 日本をほめていただけて、なんだか嬉しいです。周りで特に仲よくしているジョッキーと言いますと?

アッゼニ ミルコ・デムーロジョッキー。ミルコとは、知り合って6年くらい経ちます。日本に来る前、香港やフランスでも一緒に乗っていました。同じイタリア出身なのもあって、とても親しい友達です。クリストフ・ルメールジョッキーとも仲良くさせてもらっています。個人的には、岩田ジョッキーがお気に入り。彼はとても面白いし、いつも笑わせてくれます。先日、素敵なプレゼントもいただいたんですよ。

赤見 岩田騎手とどんなふうにコミュニケーションを取るんですか?

アッゼニ 言葉の壁はありますけど、ジョッキー同士で通じるジェスチャーがあります。みんな、ジェスチャー1つで分かってくれますね。とにかくみんな、助けてくれます。「ここはどうなんだろう?」「どうしたらいいんだろう?」って聞いたら絶対に答えてくれますし、何か間違ったことをしてしまったり、やってはいけないことは、ちゃんと教えてくれます。例えば、レースが終わって帰って来る時は外のレーンを回るというのは、川田ジョッキーが教えてくれました。みんなとても親切です。

赤見 日本のレースについてなんですけれども、馬場とかコース形態とか、イギリスとは全く違うと思うのですが?

アッゼニ もちろん違いますけど、それはどこの競馬場に行っても毎回違うトラックですからね。日本の施設管理はパーフェクトです。コースもデコボコしてないじゃないですか。他の国の競馬場ってそういうところが多いですけど、日本はそれがない。それは素晴らしいことだと思います。

赤見 そういうコースだと、乗りやすいですか?

アッゼニ レースという意味では、乗りやすいとか簡単だとは思わないです。どこの競馬場に行っても、やはりレースは難しい。でも、日本のトラックの質の良さを考えると、人や馬の怪我は比較的少ないんじゃないでしょうか。

赤見 騎乗2週目の11/14(土)に初勝利。そしてその日に2勝目も挙げられました。まず初勝利の新馬戦ですけれども(ファンドレイザー、京都ダ1800m、栗東・中内田充正厩舎)、途中から手が動いているように見えたんですが、反応がまだちょっと?

アッゼニ 新馬戦だったし、まだ子どもっぽいところもありましたから、僕のアシストが少し必要だったみたいですね。だから、早めに追い始めたんです。

おじゃ馬します!

▲日本初勝利はファンドレイザーの新馬戦


おじゃ馬します!

▲勝利インタビューを受けるアッゼニ騎手


赤見 それでも、直線はいい伸びでしたね。

アッゼニ コーナー前まではまだ遊んでいるところがありましたが、直線向いたらいい脚を使ってくれました。初めて日本で勝てたので嬉しかったですし、身元引受のミツさん(中内田充正師)の馬で勝てたことがとても嬉しかったです。

赤見 中内田調教師とは、レース後どんな言葉を交わされたんですか?

アッゼニ もっとこの馬をよくしていくにはどうしたらいいかという、これからの対策ですね。ミツさんは海外の競馬の経験もありますし、英語も堪能なのでよく話し合えます。

赤見 たしか、イギリスの大学を卒業されているんですよね。

アッゼニ そうです。僕がミツさんと初めて会ったのもイギリスです。ミツさんの奥さんのお姉さんが、イギリスのロジャー調教師という方と結婚して、そのロジャー厩舎で僕がよく乗っていたんです。そのつながりで知り合いました。

赤見 そこからのご縁だったんですね。そして2勝目は準オープンのレースでした(アルバート、美浦・堀宣行厩舎、比叡S、京都芝2400m)。

アッゼニ はい。しかも特別レースでしたからね。自分が乗って勝てたのはもちろん嬉しいですけど、テン乗りの馬なので、結果を出せたのは厩舎の方がここまでやってくれたからです。感謝しています。来日した最初の週から(11/7〜)たくさんの騎乗機会をいただけました。早く勝ちたいと思っていたので、1日で2勝できてとても嬉しかったです。

赤見 ちなみに、日本に来る前は日本の競馬にどんなイメージをお持ちでしたか?

アッゼニ 日本の競馬は、JRAという主催者が大きくてしっかりしていること。向こうではジャパンCが放映されるので、それは見ていました。日本に来られるジョッキーの枠って、ものすごく狭いんです。その中に入ることをずっと目標にして乗り続けてきました。それが今年ようやく叶ったんです。

赤見 いつ頃からの目標だったんですか?

アッゼニ いつか行きたいというのはずっと思ってたんですけど、自分のなかで現実的な意識を持てたのは去年辺りからですね。去年ぐらいから成績が出始めて、それに合わせてだんだんと日本が見えてきたんです。このまま頑張れば、自分も日本に行けるんじゃないかって。

赤見 枠としては、本当にトップのジョッキーに限られますもんね。

アッゼニ そうですね。国によって違いますが、リーディングトップ10くらいでないといけないし、GIも勝たなければいけない。それは結構シビアですよね。先日の初勝利のインタビューでも言ったんですけど、日本に来ることは僕にとって、目標というか夢だったんです。それは僕だけでなく、他のジョッキーたちにとっても同じなんですよ。

赤見 日本に来る前は、イギリス以外でも乗られていたんですよね?

アッゼニ 去年の冬は香港で、今回もし日本でのライセンスが取れなかったら、アメリカのサンタアニタ競馬場で乗る予定でした。オーストラリアでも乗せてもらったことがあります。やはり世界のいろいろなところで乗りたいです。

赤見 その中でも日本に行きたいと思わせる、日本競馬の魅力って何ですか?

アッゼニ 日本には良い馬がたくさんいるからです。来る前からそういうイメージを持っていましたし、実際に乗ってからもそう思います。主催者もしっかりしていますよね。レースの賞金も恵まれていますしね。他の国と比べても、どこよりもしっかりしています。

赤見 目標叶って日本に来られて、騎乗数や成績面は想像と比べてどうですか?

アッゼニ 外国人ジョッキーで53キロに乗れるのは、アドバンテージだと思っているんです。そこが僕の強みだと思っていたので、そういう意味で乗り鞍はいただけるかなと思ってました。あとは、しっかり結果を出したい。もっともっと勝ちたいです。

赤見 騎乗している姿を見ていると、そこまで体重が軽いとは思わなかったです。53キロはたしかに強みですね。

アッゼニ ええ。わりと何でも食べるんですけど、普段から51キロを維持できています。ジョッキー向きな体質であることは、とてもラッキーなことです。(次回へつづく)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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