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7歳で活躍の場を見つけたレーザーバレット/兵庫GT

  • 2015年12月25日(金) 18時00分


むしろ地方の小回りコースでこそ

 最内枠に入ったルックスザットキルがおそらく逃げるのだろうとは思ったが、それにしてもほかに積極的に行く気を見せる馬がなく、ルックスザットキルはほとんど抑えたままで先頭に立った。

 もう1頭、逃げる可能性があったアキトクレッセントはゲートの中でうるさく、出遅れて最後方からとなってしまった。勝った昇竜Sのときもスタートで躓いていて、ユニコーンSはタイミングが合わず大きく出遅れての最後方から。スタートというよりも気性的な面で難があるようだ。さらに1周目のゴール板手前では砂をかぶったからなのか、口を割って嫌がるような素振りで、1〜2コーナーを回るところでは再び最後方に下がってしまった。3〜4コーナーでは中団の外まで進出したが、さすがにそこまでだった。

 早田功駿騎手ががっちり抑えて逃げたルックスザットキルのペースは前半3Fが36秒台前半。あまりペースは上がらなかった。それで向正面から早めに勝負を仕掛けたのが、前半は4番手の外目を追走していた北海道のポアゾンブラック。門別にも坂路ができて、この時期でも問題なく調教ができるようになり、輸送があっての前走から-6kgでの527kgは万全の仕上げだっただろう。凱旋出走となっての鞍上は、デビューから兵庫ダービー(2着)まで手綱をとっていた松浦政宏騎手。3コーナーではルックスザットキルをとらえて先頭に立った。

 そしてこれをぴたりと追走してきたのがドリームバレンチノ。大外枠からでもハイペースにならなかったため早めに好位につけることができた。59.5kgというトップハンデゆえ、岩田騎手は早めに先頭に立って、どこまで粘れるかという競馬に持ち込んだ。そして直線で先頭に立った時は、おそらく岩田騎手は勝ったと思ったのではないか。

 しかし1頭だけ他馬と違う脚色で追い込んで来たのがレーザーバレットだった。向正面ではまだ中団馬群の中で、ペースが上ったところでなかなか前との差を詰められなかったものの、3〜4コーナーでは馬群の中を縫うようにして位置取りを上げてきた。浦和・オーバルスプリントを勝ったときもそうだったが、地方の短い直線で見せる末脚は1頭だけ際立っていた。今回、2着のドリームバレンチノには3/4馬身差だったが、交わしてからまだ余裕があった。中山の京葉Sでは4コーナー最後方から直線一気で差し切っていたが、むしろ地方の小回りコースでこそこの馬の持ち味が生きるのではないかとさえ思える。オーバルスプリントが7歳での重賞初制覇だったが、7歳にしての本格化というより、7歳にして活躍の場を見つけたと言ってもいいかもしれない。

 ドリームバレンチノはレーザーバレットと2.5kgのハンデ差で、瞬発力勝負となっては仕方ない。明けて9歳になるが、まだまだ元気だ。ただダート短距離路線でJpnI(JBCスプリント)を勝ってしまった馬は、常に斤量との戦いになるのが難しいところ。

 ポアゾンブラックは実力を出し切っての好走だったが、勝ちに来ているだけに陣営にしてみれば3着は残念な結果だったかもしれない。相手関係次第ではいずれダートグレードでもチャンスがありそう。このまま兵庫に移籍するようで、北海道の所属では北海道スプリントCのほかは常に遠征が強いられることになり、しかし兵庫所属なら地元園田だけでなく、遠征も容易な名古屋・笠松に1400mの交流戦(地方限定も含めて)が充実しているので、活躍の場が広がりそうだ。

 地元馬ではもっとも人気を集めた(5番人気)ドリームコンサートが見せ場をつくっての4着。2番手追走から最後まで粘り、3着のポアゾンブラックにはクビ差だった。今回は52kgというハンデもあったが、中央では準オープンで頭打ちという成績だっただけに、前走の豪快な3〜4コーナーでのまくりからの圧勝というレースぶりを見ても、園田の小回りコースが合っているのだろう。

 さて、地方馬に関して言えば、NARグランプリの最優秀短距離馬の選考が難しくなりそうだ。地方最先着だったポアゾンブラックは、これでJpnIIIで2着2回、3着1回。ただ勝った重賞は、地区限定(北海道・東北交流)のグランシャリオ門別スプリントのみ。今回残念ながら出走取消となったラブバレットは、JpnIIIのクラスターCでの3着と、地方全国交流の笠松グランプリでの勝利がある。2頭のどちらが選ばれるか、もしくは該当馬なしか。ちなみに最優秀短距離馬の表彰ができた1999年以降、グレード(芝も含めて)のタイトルがなくて最優秀短距離馬に選ばれたのは、2010年ナイキマドリード、昨年のサトノタイガーの2例があるが、ともにJBCスプリントで2着があった。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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