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文句なしのダートGI日本記録達成/川崎記念

  • 2016年01月28日(木) 18時01分


単に最多の10勝を記録しただけではない


 史上初となるGI(JpnI)競走10勝目のかかっていた7歳ホッコータルマエ(父キングカメハメハ)が、1番人気に応えて押し切り、ついにGI格競走10勝の日本記録を達成した。と同時に、これは1985-87年のカウンテスアップ(父フェートメーカー)以来となる川崎記念3連覇達成の快記録だった。

 現在、秋後半から春にかけて、「南部杯」→「JBCクラシック」→「チャンピオンズC」→「東京大賞典」→「川崎記念」→「フェブラリーS」と連続する中距離ダートGIシリーズが完成し、これはそのまま「ドバイワールドC」に続く路線でもある。

 4歳後半からこのGIシリーズを目標とすることになったホッコータルマエは、ここまで通算35戦【17-4-6-8】の中に、JBCクラシック(金沢)、東京大賞典(大井)2回、川崎記念(川崎)3回、チャンピオンズC(中京)の勝ち鞍がある。南部杯2着、フェブラリーS2着、東京大賞典の2着も含まれる。

 ほかに存在する4歳以上牡馬の出走できるGI競走は、「かしわ記念(船橋)、帝王賞(大井)、クラシックと同日のJBCスプリント」だけであり、ホッコータルマエは、「かしわ記念」と「帝王賞(2回)」を勝っている。また、まだ本物になる前の2012年のジャパンダートダービー(3歳限定)も5着しているので、ホッコータルマエの関係しないダートのビッグレースは日本には存在しないといっても言いすぎではない。さらにはドバイワールドカップ(2015年)も5着に食い込んでみせた。

 ダートGI格の競走を勝ちまくったチャンピオンは多いが、ホッコータルマエはただ単に最多の10勝を記録しただけではない。「6つの異なるGIを計10勝」もした文句なしのダートGIの日本記録達成なのである。この記録に、ヴァーミリアンの「6競走9勝」、エスポワールシチーの「5競走9勝」が続いている。

 2015年6月の「帝王賞」を勝ってGI格10勝にリーチをかけたあと、11月のJBCクラシックから3連敗を続けたが、前2戦のチャンピオンズC、東京大賞典ともに先行抜け出しの正攻法をとるホッコータルマエにとって、みんなの目標になる苦しいレースの連続だった。今回の川崎記念も3コーナー手前の勝負どころでマークしてきたサウンドトゥルーに、一瞬インをすくわれかけるなど危ない場面もあったが、一気のスパートで離し、どこからでも動ける自在性で上回った。アタマ差とはいえ中身は完勝に近い。

 この時期に定着してからの川崎記念は、このあと2月のフェブラリーSと強く結びつくが、勝ったホッコータルマエは、昨15年と同様、このあとは3度目の「ドバイワールドカップ挑戦」の日程を組むことになるはずである。

 ホッコータルマエの父キングカメハメハは、2011年以降、日本のダート戦サイアーランキング「1,1,1,2,1」位に君臨するチャンピオンサイアー。その父キングマンボは今年1月にアメリカで死亡(26歳)したが、キングマンボが世界を代表する大種牡馬として最初の評価を受けることになったのは、初年度産駒として日本でエルコンドルパサー、アメリカンボスが大活躍し、さらには続いてスターキングマン(2004年の川崎記念2着)、そしてキングカメハメハが登場したからである。

 ホッコータルマエはやがて種牡馬となるとき、大種牡馬キングマンボの主流血脈「キングカメハメハ直系のホッコータルマエ」となる。キングカメハメハの後継馬の中でも、とくに無類のダート巧者の血を伝えたい。父キングカメハメハには、その父ミスタープロスペクターを通し、アメリカの伝説の3冠馬カウントフリート(1940年生まれ)の血が流れている。

 ホッコータルマエの牝系がアメリカに渡った1940年代、ファミリーを発展させる出発点になった5代母フライトバードの父が、カウントフリートである。したがって、ホッコータルマエには父母両系からクロスしているミスタープロスペクターを通してだけでなく、異才とされたカウントフリートの血が最初から牝系のベースになっている。川崎記念3連覇のホッコータルマエの種牡馬としての期待は、当然、圧倒的なダート巧者の父となることである。

 2着に惜敗した東京大賞典の勝ち馬サウンドトゥルー(父フレンチデピュティ)は、ホッコータルマエと同じ上がり3ハロン37秒2で頭差に追いすがった。あと一歩及ばずの敗因は、ビッグレースの経験の差と、川崎が初コースだったことか。

 なぜ、あまり関係なさそうなカウントフリートの名が出てきたのかというと、典型的なアメリカ血統サウンドトゥルーの属する一族の代表馬といえばカウントターフ(その父カウントフリート)であり、カウントターフは1951年、第一回川崎記念の行われた年のケンタッキーダービー馬なのである。

 川崎記念というなら、1996、97年に連勝したホクトベガであり、1998、99年に連勝したアブクマポーロがつづく。なぜか、この2頭の血統表にもカウントフリートが登場する。もっと探せばいくらでも出てきそうだが、3連覇したカウンテスアップは名前が似ているだけである。


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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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