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池添学調教師(4)『適性さえあれば、国内にとどまらず海外にも』

  • 2016年02月22日(月) 12時00分
おじゃ馬します!

▲「兄・謙一騎手との意外な兄弟関係」「自他ともに認める群れないタイプ」池添調教師の素顔に迫る!


34歳の若さで難関の調教師試験を突破した池添学調教師。開業初年度から自身でも合格点という成績を挙げ、開業2年目の今年はますます注目が集まります。今回は、そんな池添調教師のリアルに迫ります。「兄・謙一騎手との意外な兄弟関係」「自他ともに認める群れないタイプ」「海外競馬への思い」…、池添調教師の素顔とは。(取材:東奈緒美)


(前回のつづき)

馴れ馴れしく話しかけるのも良くないかなって


 調教師試験に合格されたのが34歳の時でしたが、何回目の受験だったんですか?

池添 4回目ですね。

 結構早い方ですよね。

池添 どうなんですかね。親父が調教師を目指して頑張っていたのを見ていましたし、「そんな甘いもんじゃないぞ」というのも言われていましたので。気を引き締めて勉強しましたけど、自分としてはもう少し早く受かりたかったというか、精神的に結構きつかったんですよね。

 受からないと、というプレッシャーですか?

池添 そのプレッシャーは大きいです。特に一次試験に受かってからが…。一次は2回目で通ったんですけど、そこからがしんどかった。試験って1年に一度だけですし、受験者みんなが必死で立ち向かっている戦いですからね。とにかくもう、早く抜け出したかったです。

 合格のニュースが流れた時には、「兄弟で調教師と騎手は初」と話題になりましたが?

池添 そこは正直…、自分としては何とも思ってなくて(笑)。兄弟の比較というか、「調教師になったので、お兄さんを乗せるんですか?」とよく聞かれるんですけど、あまりそういうふうには見ないでほしいなとは、常々思っているんです。だって、向こうは一流ジョッキーで、僕は新米調教師ですからね。

 兄弟だからというより、同じ世界での先輩後輩という。

池添 そうそう。向こうはGIの舞台でもたくさん勝ってるわけで、それを比較するのは申し訳ないと。こちらは乗ってもらうようにお願いする側、そういう気持ちです。

 普段のおふたりの関係は、どういう感じなんですか?

池添 それがね、ちょっと変な感覚(笑)。兄貴は中学を卒業してすぐに競馬学校に入っているので、早くして家を出てるわけじゃないですか。思春期に語り合ってないので、最初の頃は、話すのもちょっと緊張しました。今はもちろんそんなことはないんですよ。ただ、離れてる期間が長かったので、それぞれがどういう生活をしてきたかっていうのもわからないですからね。

 距離感が難しいですね。

おじゃ馬します!

▲「年もひとつ違いで近いですし、距離感が難しいですね」


池添 そうなんです。僕が普通の大学生の時に、向こうはもうプロで、同じ世界で働くようになった時には、向こうは一流ジョッキーですからね。あまり馴れ馴れしく話しかけるのも良くないかなって。ただ、向こうは全然そんな感じではなかったですけどね(笑)。いつも普通に気さくに話してくれます。

 同じ調教師として、お父様はどんな先生ですか?

池添 僕が厩舎で働いてた時は持ち乗り(助手)だったんですけど、スタッフの立場からは良い先生でした。その分、息子としては物足りなかったですけどね(笑)。仕事がすごくやりやすかったです。細かいことは言わず、スタッフに任せたっていう感じで。それでいて、全然怒らないんですよ。あんなぶっきらぼうな顔をしているのに、実は優しいんです。

 良き先輩が身近にいますね。最近では若い調教師さんが増えてますが、横のつながりはあるんですか?

池添 僕はあまり友達がいないので…。誰かと一緒っていうことは、ほとんどないですね。1人が好きです。

 群れないタイプですか。

池添 気心の知れた相手となら楽しいんですけどね。そうではないとどうしても気を遣ってしまって。技術調教師の時にね、みんな先輩調教師と一緒に牧場を回ったりしてたんです。そういうの、うらやましいなと思って見てました。僕のことは誰も連れて行ってくれなかったので。まあ、僕もお願いしないからいけないんですけどね…。

 そうされなかったのは、あえてご自分の力でという?

池添 自分の力というより、自分はこういうふうにやるんだって頭の中で決めていたので、あえて一緒に動かなくてもいいかなって。

 調教師さんのお仕事として、お付き合いが要るときもありますよね?

池添 ありますね。よく「馬主さんとご飯とかいくでしょう?」って聞かれるんですけど、ほとんどないんです。お誘いがあれば行きたいのですが、あまりないですね。いろいろな方に声をかけてもらえるような調教師にならないといけませんね。

 そこはご自身としての課題ですかね。去年は23勝で、嬉しい瞬間が多かったと思うんですが、今年の目標はこの数字を超えていきたいなっていう?

池添 それはもちろん。ただ、年間でトータルすると23になりますけど、競馬自体は厩舎が続く限りずっとですからね。あまり一区切りでは考えないようにしてます。自分に変なプレッシャーもかかりますし。

 確かに、良い時も悪い時もありますもんね。目標のレースはありますか?

池添 特にこのレースというのはないですね。それぞれの馬の、その時その時の適性を見極めて、一番のレースを選んで勝たせられるのがベストだと思います。適性って考えると、何も日本のレースには限らないとも思いますしね。

 厩舎として、海外レースも視野に入っているということですか?

池添 海外は行きたいですね。海外というと、日本でGIを勝ったらというのが慣習のようになっていますけど、僕はそうではないと思っています。それぞれの馬の適性がありますから、合うレースがあれば、ドバイや香港、フランスやイギリス、行けるものならどこにでも行きたいです。

 最後に、ファンの方にメッセージをお願いします。

池添 開業して間もない厩舎ですけども、パドックに横断幕が飾ってあったり、勝った時にウイナーズサークルで、「池添先生、おめでとう」って名前を呼んでくれる方もいるので、そういうのがすごくうれしいです。この仕事をやっていて良かったなと思う瞬間ですね。そういう応援を励みに、これからも良い成績を出せるように頑張っていきますので、温かく見守ってください。

(了)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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