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船橋競馬場がひとつになった日 ―2011年/かしわ記念

  • 2016年05月04日(水) 18時01分

地元船橋所属馬による制覇には特別な意味が…


 ゴールデンウィークのダートグレード競走豪華3連戦、大トリを飾るのは『第28回かしわ記念(JpnI)』。上半期マイル戦の頂上決戦でアブクマポーロ、アジュディミツオー、ブルーコンコルド、エスポワールシチー、フリオーソ、ホッコータルマエなどここに書ききれないほど多くの名馬たちが制してきた歴史ある一戦です。

 今回はまず、かしわ記念の中でも船橋競馬場にとって特別な一日となった2011年のレースを振り返りたいと思います。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災で被害を受けた船橋競馬場。人馬が無事だったことはなによりでしたが、海辺に近い埋め立て地のため、馬場や厩舎地区が液状化。被災した写真が新聞等にも掲載され、3月、4月の開催は中止となり「船橋は大丈夫なんだろうか」と不安な気持ちが募りました。

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▲開催中止を知らせる看板


 早期再開へ向けて懸命な復旧作業を行っている状況の中で、船橋所属騎手や関係者による募金活動が行われました。自分たちの競馬場も被災しているにもかかわらず、被災地のため、京成船橋駅前やJR習志野駅前などの街頭に立ち募金活動をするみなさん。遠くから募金に駆け付けた船橋競馬ファンの方もいらっしゃったそうです。

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▲京成船橋駅前での募金活動の様子


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▲JR習志野駅前での募金活動の様子


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▲併せて、コースの復旧工事も行われた


 関係者のみなさんの力が集まり船橋競馬が再開された5月のゴールデンウィーク開催は「東日本大震災復興支援競走」として行われ、募金活動やチャリティーオークションなども実施されました。

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▲再開された船橋 パドックの掲示板の下に“復興支援競馬”の文字が


 そんな中で行われた『第23回かしわ記念』。3連覇のかかるエスポワールシチーが1番人気。前走フェブラリーSを後ろからの競馬で2着に激走。新境地を見せたフリオーソが2番人気。

 レースはスタートダッシュを決めたラヴェリータが逃げ、フリオーソは3番手から。3コーナーを回り先頭に立ったフリオーソがそのままゴール! 内で食い下がったラヴェリータが2着。エスポワールシチーは3着でした。

 スタンド前をゆっくりとウイニングランするフリオーソ。「思い出のレースはかしわ記念。フリオーソがいたから今の僕がある」とJRA移籍の際に語っていた戸崎圭太騎手は、このときファンの大声援に応え、何度もガッツポーズを繰り返していました。

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▲フリオーソのウイニングラン 鞍上の戸崎騎手は何度もガッツポーズ


 全日本2歳優駿に始まり、ジャパンダートダービー、ダイオライト記念連覇、帝王賞2勝、日本テレビ盃、川崎記念と数々のビッグタイトルを手にしてきたフリオーソが、唯一勝てていなかった地元のJpnIレース・かしわ記念。7歳にして忘れ物をきっちり手にした嬉しい瞬間。

 無事に再開された船橋競馬場での地元船橋所属馬による制覇は、船橋競馬のファンや関係者にとってはもちろん、全国の地方競馬ファンに勇気と元気を与えてくれる輝かしい勝利でした。

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▲フリオーソを労う戸崎騎手(撮影:高橋正和)


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▲今は亡き川島正行調教師と固い握手(撮影:高橋正和)


 あれから5年。今年もまた熊本をはじめとする九州地方で大きな地震が発生してしまいました。被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 船橋競馬では5月4日に「熊本地震被災者支援競走」を実施し売得金の一部を寄付するとともに、開催連日、募金活動やチャリティーオークションも行われます。みなさんのご協力をお願いいたします。

モーニン、サウンドトゥルーら豪華メンバー集結


 さあ、今年のかしわ記念の話題に参りましょう。いやぁ〜、本当に凄いメンバーが揃いました。ここにホッコータルマエの名前が無いだけで、現在考えられるダート界のトップホースが集結した、オールスター戦と言っていいでしょう。

 JRAからはフェブラリーS上位組が揃って参戦。迎え撃つ地方勢もハッピースプリントとソルテの名前が! 早く対戦が見たいですね。

 まずはフェブラリーS組のJRA勢から見ていきましょう。

 フェブラリーSをコースレコードで制した4歳馬、モーニン。デビューから7戦目というスピードでGI制覇。実績馬を相手に正攻法で押し切ったことは大きく評価していいでしょう。地方競馬で行われるダートグレード競走は初出走で、もちろん船橋競馬も初めてです。

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▲デビューから7戦目でフェブラリーSを制したモーニン(撮影:下野雄規)


 モーニンの2着だったこちらも4歳馬、ノンコノユメも船橋初参戦。ご存知ジャパンダートダービーを勝ったJpnIホース。ユニコーンS、武蔵野Sとマイル重賞2勝の実績馬。いつもの後方待機の競馬で、次元の違う末脚を見せてくれることは間違いありません。

 フェブラリーS、4着のベストウォーリア。昨年のかしわ記念でワンダーアキュートの2着。盛岡の南部杯を連覇したマイルの実績馬。強豪馬たちと戦ってきたこちらも実績十分な存在。

 コパノリッキーはフェブラリーSで中団からの競馬となり、直線で思いのほか伸びず7着。レコード決着のレースで少し忙しかったのかもしれません。2014年、2015年のフェブラリーSとJBCクラシックをともに連覇。一昨年のかしわ記念の勝ち馬の巻き返しに期待したいです。

 別路線の有力馬はサウンドトゥルー。東京大賞典でホッコータルマエを破りGIホースに。船橋では日本テレビ盃を快勝しています。東京大賞典の勝利コメントで「これまでは挑戦者の立場でしたが、これからは受けて立つ番」と話していた大野拓弥騎手。充実期を迎えた6歳馬が、人馬ともにパワーアップした姿を見せてくれるでしょう。

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▲東京大賞典でGI初制覇を果たしたサウンドトゥルー(撮影:高橋正和)


 昨年のNARグランプリ年度代表馬・地方競馬の総大将ハッピースプリントが今年はここから始動。昨年はかしわ記念3着、帝王賞3着。12月に浦和記念を制しました。

 森下淳平調教師に抱負を伺うと「強いメンバー相手にどれだけやれるかですが、この馬も力をつけている。1600mなら最後まで止まらず脚を使える」と、今回の結果によってはマイル前後に照準を合わせていきたいと今後のお話しもしてくださいました。

 さらに現在7連勝中のソルテ。ここまで大楽勝で勝ち星を重ね、満を持しての登場です。マイル戦で10勝しているうち、マイル重賞6勝。その中には船橋の京成盃グランドマイラーズも含まれています。今回ハッピースプリントとも初対戦。この地方馬2頭の戦いも楽しみですね。

 フェブラリーSで1、2着だった4歳勢による新王者誕生か、それとも実績ある古馬たちが待ったをかけるのか、地方勢がどこまで存在感を示すのか…?! あらゆる角度から楽しめる、想像しただけでもワクワクする高レベルな戦いです。必見の『第28回かしわ記念』、現地で、テレビで、ネットで、みなさんそれぞれのスタイルでご観戦ください!

※次回の更新は5月31日の18時。翌日に浦和競馬場で行われる「さきたま杯」のコラムをお届けします!



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【ダートグレード競走とは】
中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。

埼玉県出身。フリーアナウンサー。競馬好きが高じてこの世界へ。2001年から15年間、グリーンチャンネルで「中央競馬全レース中継」のキャスターを務める。2016年度から「グリーンチャンネル地方競馬中継」のコメンテーターとして出演。さらに全国各地の競馬場のトークイベントに参加するなど、中央競馬・地方競馬の垣根を越えて活躍中。

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