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北海道トレーニングセール・その1

  • 2016年05月25日(水) 18時00分
北海道トレーニングセール

併せ馬で先着した静内農業高校生産馬の「ゴートゥザノースの14(左)」


過去のトレーニングセールは寒さ対策が必要だったが、今年は非常に快適であった

 昨日5月24日(火)、今年の北海道市場のトップを切って、札幌競馬場を会場に「北海道トレーニングセール」が開催された。

 セリ自体は24日だが、その前々日、22日(日)より下見が始まっており、翌23日(月)が公開調教の日である。この日、札幌は、朝から素晴らしい好天に恵まれ、風も弱く気温も高めで、絶好のコンディションとなった。これまで過去のトレーニングセールというと寒さ対策が必要で、スタンドに陣取って見ていると体感温度が低くブルブルと震えてくるような記憶しかなかったのだが、今年は非常に快適であった。公開調教の開始は午前10時。すでに日向は20度を超えるほどの陽気で、半袖で歩く人の姿が目に付いた。

 この市場の公開調教は、原則として2頭併せで行われる。全体を6クルーに分割し、1クルーあたり、19組〜23組程度に分けられている。走る順番は上場番号順ではなく、それぞれ飼養管理者(育成牧場)の都合に合わせバラバラになっており、公開調教のためのクルー表があらかじめ配布されている。

 2頭ずつ向こう正面から出発し、3〜4コーナーの中間点あたりから徐々に速度を上げ、直線にさしかかったあたりに立つ残り400mハロン棒から計時が始まる。しまいの2ハロンの走破タイムを計り、「12秒50、11秒65」などというようにその都度時計が発表される。

 原則的に同一牧場のペアで併せるが、中には異なる牧場同士の組み合わせもあれば、牡牝での併走というケースもあった。

 クルー表には、上場番号と内外の区別、馬名、性、父名、すでに配布されている調教VTR収録時の1ハロン時計、騎乗者名と斤量、飼養者名と上場申込社名、それに待機馬房番号が記載されている。公開調教を見て、気になった上場馬がいれば、その足で待機馬房まで出向き、実馬を見学できるシステムになっている。

 毎年のことだが、この北海道トレーニングセールでは、ホッカイドウ競馬所属のプロ騎手に騎乗を依頼する育成牧場が少なくない。今年も、岩橋勇二騎手、桑村真明騎手、石川倭騎手、服部茂史騎手、黒沢愛人騎手、阿部龍騎手などが門別からやってきて騎乗していた。中には、1クルーの中で4頭もの上場馬に乗り替わる“人気騎手”もいた。ゴール板を通過したら、すぐに下馬して育成牧場のスタッフに騎乗馬を渡し、すぐに次の騎乗馬に駈け寄ってまた騎乗するのであろう。本番のこの舞台でプロの技術に託した方が有利だと判断されたのか、ホッカイドウ競馬の騎手たちはなかなかの人気ぶりであった。また、フィリピン人やマレーシア人などの外国人の騎乗者の姿も目に付いた。

 この北海道トレーニングセールの公開調教では、かなり速いタイムが出る。特に、終いの1ハロンは、大半の馬が11秒台をマークしており、10秒台を出す上場馬も続出した。追わずに持ったまま走る上場馬は少なく、懸命に追われる馬が多かった。直線で鞭を使ってバシバシとたたかれながら走る馬もずいぶんいた。もちろんそれなりの理由があり、どうしても購買者の視線が走破時計に向けられてしまうため、より速く走らせることが求められるわけだ。そして公開調教時の時計が、翌日のセリの落札価格に大きく影響してくるからなのである。

 6クルー、242頭(単走もいるので125組)の上場馬が全て公開調教を終えたのは、午後3時半であった。10時から5時間半、ぶっ通しでひたすら公開調教が繰り返され、かなりの長丁場であった。

 2ハロンの合計で最速を記録したのは、80番「サルヴァドール14」(牝、父ルーラーシップ、販売申込者・追分ファーム)の出した11秒06と10秒77の計21秒83。

北海道トレーニングセール

2ハロン合計タイムの最速を記録した「サルヴァドール14」



また、終いの1ハロンのみでは、51番「キャトルセゾン2014」(牡、父クロフネ、販売申込者・千代田牧場)と、172番「パシャ2014」(牡、父トランセンド、販売申込者・石郷岡雅樹)の10秒68が最速であった。

北海道トレーニングセール

終いの1ハロンが最速だった「キャトルセゾン2014」


北海道トレーニングセール

終いの1ハロンが最速だった「パシャ2014」



 なお、中山のブリーズアップセールを欠場したJRA育成馬6頭が追加名簿でこのセールに上場されることになり、254番〜259番が充てられ、この前日の公開調教に登場した。いささか私事に属するが、他の媒体で昨秋以来ずっと追いかけて取材してきた「ゴートゥザノースの14」(牝、父サマーバード、静内農業高校生産馬)も255番に上場されることになり、疝痛による開腹手術というアクシデントを乗り越えて、元気に走る姿を見せていた。職員を背に僚馬と併せ、13秒55、11秒76のタイムで無事にゴール板を駆け抜けたのは何よりであった。

 無事と言えば、今年も全馬が落馬や故障もなく公開調教を終えたことを追記しておく。結果は既報の通り、241頭中152頭が落札され、売却率は63.07%、11億1866万4000円(税込)の総売り上げであった。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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