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【東京ダービー密着】的場文男 59歳の決意「俺はこの馬に懸ける」〜プロローグ

  • 2016年05月27日(金) 18時01分
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▲俺はこの馬に懸ける―。アンサンブルライフで、悲願の東京ダービー制覇へ(写真:高橋正和)

TCK全面協力のもと、netkeibaで実施中のトゥインクルレース30周年企画のキャンペーンボーイに就任している的場文男騎手。的場騎手といえば『大井の帝王』として知られ、さらに「なぜか東京ダービーだけ勝っていない」というのは有名な話。そこで今回は、的場騎手の35回目の東京ダービー挑戦に密着。全4回のコラムを通して、的場騎手のダービーに懸ける想い、そして今年繰り広げられるドラマを追っていきます。第1回はプロローグとして、的場騎手と東京ダービーの歴史を振り返ります。今年こそ、悲願達成なるのでしょうか。(取材・文:赤見千尋)

2着9回に「的場はダービーを勝てない」


 的場文男騎手のすごさは、中央競馬を中心に見ているファンにも広く浸透していることだろう。59歳となった今も、誰よりもパワフルな追い方でファンを魅了し、『大井の帝王』として君臨し続けている。通算勝利数は日本歴代2位の6874勝(2016年5月25日現在)。歴代1位の7151勝を誇る佐々木竹見元騎手の背中に近づいている。

 5月18日には大井記念で9度目の勝利を挙げ、自身の持つ地方競馬最高齢重賞勝利記録を塗り替えた。ダートグレードの最高峰である帝王賞を3度勝利し、年末の大一番東京大賞典も勝っている。いくつもの記録と勲章を持っている的場騎手が、唯一手に入れていないのが『ダービージョッキー』の称号なのだ。

 なぜ的場騎手は東京ダービーを勝っていないのか。これまで34戦して2着9回3着4回。決してチャンスがなかったわけではないし、勝っていないだけで結果を出していないわけでもない。大井の帝王を持ってしても、勝利を掴むことができない。それがダービーのダービーたる所以なのかもしれない。

 2着9回ということで、的場騎手ご自身にとっても悔しいレースが多かったのではないだろうか。ご本人に伺ってみると、「一番悔しかったのはシナノデービス(1987年2着)、次に悔しかったのはブルーファミリー(1993年5着)」と答えてくれた。34回の挑戦の中で、1番人気馬に騎乗した2度のレースである。

 シナノデービスはデビューから5連勝で羽田盃を勝ち、大本命に推された東京ダービーで初めて負けた。ブルーファミリーもデビューから7連勝で羽田盃を勝ち、同じく大本命に推された東京ダービーで初めて負けている。今以上に『大井の帝王』として絶対的な存在だった当時、この2戦の負けは相当大きなものだったに違いない。確かなことは当時を知る人たちにしかわからないけれど、ブルーファミリーで負けた辺りから「東京ダービーだけ勝てない」というジンクスが浸透していったのではないだろうか。

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▲当時、圧倒的不利とされていた外枠が影響し、ブルーファミリーでは5着に敗れた(写真は羽田盃優勝時、提供:TCK)

 この2頭の他には、意外にも1番人気馬に騎乗していない。特にここ数年は、5、6番人気の穴馬に騎乗するめぐり合わせとなっている。その中で、特に昨年のパーティメーカーでの2着は、ファンを大いに熱狂させ場内を興奮の渦に巻き込んだ。

ダービー制覇は人生の宿題


 パーティメーカーは門別でデビューし、2歳の時に盛岡の芝重賞『ジュニアグランプリ』を制覇。南関東移籍後は重賞勝ちこそなかったものの、JRA勢相手の『全日本2歳優駿』で5着に健闘して能力の高さを見せている。しかし、3歳になってからは上位争いに食い込めなくなり、5戦連続で馬券圏外という結果のまま東京ダービーを迎えた。パーティメーカーに騎乗することを選んだのは、的場騎手自身だという。

 管理する小久保智調教師は、「この馬だと決めたら、的場さんは迷わないんですよ。パーティメーカーは前哨戦の京浜盃も羽田盃も結果を出すことができなかったけれど、迷わず乗ってくれたんです。それで2着に持って来るんですから、本当にすごいと思いました」。

 この時のレースで、先に抜け出したのは同じ小久保厩舎のラッキープリンスだった。小久保調教師はその姿を確認すると、さらに後ろから追い込んで来るパーティメーカーを見て、「的場! 的場!」と声を張り上げて応援した。結果、ラッキープリンス1着、3/4馬身差でパーティメーカーが2着に入った。小久保厩舎にとってはワンツー制覇の快挙であり、浦和勢にとって25年ぶりの東京ダービー制覇となった。「ラッキープリンスで勝てて、もちろんすごく嬉しかったです。ただ、的場さんに勝って欲しかったというのも本音ですね」。小久保調教師は嬉しさの中に複雑な想いがあったことを話してくれた。

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▲昨年の東京ダービー。懸命の追いを見せるも、同厩のラッキープリンスに3/4馬身差で敗れた(写真提供:TCK)

 的場騎手にとっては、東京ダービーで9度目の2着。ゴール板を過ぎたあと、ラッキープリンスに騎乗した今野忠成騎手が左手を差し出しハイタッチをしようとしたところ、的場騎手は笑いながら拒否をしたように見えた。「2着に負けて、ガックリきたのでは…」そう思っていたところ、向正面から1000m以上激しく追い通しのレースとなり、さすがの的場騎手も疲労困憊してしまい、片手を離したら落ちそうだったのだという。その後、今野騎手とはガッチリと握手を交わしている。全身全霊を懸けての追い込みに、近走不振だったパーティメーカーも力を振り絞ったのだと感じる、魂のこもった騎乗だった。

 レース後的場騎手は、「2着に負けたのは、まだ騎手を続けろってことなのかな。ダービー制覇は人生の宿題」と話していた。あれから一年。今年の東京ダービーは、昨年と同じく小久保厩舎のアンサンブルライフで挑む。的場騎手に迷いはない。「他にも有力な騎乗馬がいたけれど、俺はこの馬に懸ける」。35度目の挑戦は、6月8日(水)に幕を開ける――

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▲的場文男59歳 35度目の東京ダービー挑戦は6月8日(水)に幕を開ける――(写真:高橋正和)




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