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損得抜きの「挑戦」こそ海外遠征の成功を生む/トレセン発秘話

  • 2016年06月03日(金) 18時00分


◆GIといっても1着賞金は日本の1000万下ほど

「海外に行ってこそ、初めて日本の良さが分かるんだよね」

 よく耳にする言葉だ。

 エイシンヒカリの帯同馬としてフランスに遠征。5月25日のモントルトゥー賞(メゾンラフィット競馬場)をエイシンエルヴィンで制した中尾調教師はまさにこの言葉を再び“体感”した。

「十数年前にフランスに研修に行った時も思ったけど、今回も全く同じ思いを抱いた。日本の競馬は本当に恵まれているなって」

 レース当日のパドックでは、イレ込みやすいエイシンエルヴィンのため、1周しただけで先に馬場に出してくれたのだそうだ。馬の精神面を考慮して融通を利かせてくれた主催者側の気配りには感謝していた中尾調教師だが、「実はパドックで見ているファンもほとんどいなかったから、そりゃあイレ込みにくいよね(笑い)」と閑散とした状況も説明してくれた。

 準重賞という位置づけでありながら、1着賞金は日本円で約318万円。こちらでは未勝利戦以下の賞金だ。ファンの熱気、高い賞金…様々な面で日本の競馬の良さを再確認せずにはいられない遠征でもあったようだ。

 エイシンヒカリを管理する坂口調教師もこんなことを言っていた。

「ウチの場合も輸送費、保険代、従業員にかかる費用もろもろを考えれば、イスパーン賞を勝っただけでは赤字だと思う。GIといっても1着賞金は日本の1000万下ぐらいのものだからね。そりゃ日本と向こうの賞金を比較したら外国人騎手が日本に来たがるわけだよ」

 凱旋門賞など高額レースもあるにはあるが、全般的に決して高くはない賞金にもかかわらず、リスクを負って海外遠征に打って出る陣営の目指すものはまさに「栄誉」。それを見事にもぎ取ったエイシン陣営はまさに称賛に値する。こうした損得抜きのチャレンジ精神の蓄積がなければ、海外遠征の真の意味での成功はあり得ないのかもしれない。(栗東の坂路野郎・高岡功)

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