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【競馬学校】コバジュンこと小林淳一教官(2)『競馬学校の入学試験 実は!ここを見てる』

  • 2016年06月13日(月) 12時01分
おじゃ馬します!

▲難関の競馬学校の入学試験 試験官たちはどこを重点に見ているのでしょうか?!


未来のスタージョッキーを夢見る子どもたちが集まってくる競馬学校(騎手課程)。3年間全寮制での学校生活を経て、晴れてプロのジョッキーとなるわけですが、その入り口は狭き門。そこで今回は、入学試験ではどんなことが行われ、試験官たちがどこを重点に見ているのかを探ります。「乗馬未経験者は不利?」「保護者の体型を見られるって本当?」など、気になる噂の真相も!(取材:赤見千尋)


(前回のつづき)

競馬学校 再び無償化に


赤見 菜七子フィーバーもあって、競馬学校の女性の受験希望者が増えそうですね。

小林 そうですね。今年の受験の応募締切は7月25日なので、動向はまだ分からないですが、今年入学した35期には1名いるんですよ。

赤見 競馬学校として、将来的に女性騎手についてどう考えているんですか?

小林 もちろん、藤田や今の騎手課程生の子に続いて、どんどん出てきてほしいなと思っています。ただ、今までも女性を意図的に取らなかったわけではないんです。受験をしてもらって、何か光るものがあったり、セールスポイントがあれば、合否に男女の区別はありません。

赤見 そもそも女性は受ける人数自体が少ないですもんね。

小林 女性の受験者の割合が、男性に比べて断然少ない。もしも同じ人数が受けてたら、同じだけ受かってるかもしれないですよね。藤田の効果はすごいですから、女性騎手としてJRAの顔になっていってくれればいいですね。

赤見 競馬学校は、在学期間が3年間で全寮制。年齢的には中学卒業から20歳未満の、いわば多感な時期の子たちが入ってきますよね。

小林 そうですね。寮生活だったり、体重制限があったり、厳しいとは言われますけども、僕らの時代に比べたら、今はそこまでではないと思います(笑)。

赤見 時代背景もありますから、確実にそうでしょうね(苦笑)。

小林 騎手課程ですと35期、34期、33期の合計で19名です。近年の過去5期の入学者数で言いますと、35期8名、34期5名、33期6名、32期7名、31期6名です。
(→競馬学校の入学試験の詳細は、騎手課程生募集案内を参照ください。http://jra.jp/school/entry/jockey/ ※外部サイトへ移動します)

赤見 以前は学費が0円でした。それが有償になったのは、これも時代の流れなのかなと感じるのですが。

小林 実は今年入学した35期から、また変わったんですよ。実質の負担金はなくて、食費だけをいただいています。在校生たちも昨年までは有償でしたが、今年からは同じように無償になりました。

赤見 そうすると、学費が発生していたのは10年間ぐらいでしょうか。どうして変わったのですか?

小林 有償になったのは平成17年度からなんですけど、「自己負担」というのがクローズアップされた時期がありました。その時に競馬学校でも、入ってくる子たちには相応のお金をいただいた方がいいのではないかという意見もありまして。

赤見 途中で辞める子もたくさんいますもんね。

小林 それもありますね。それが、今後の競馬学校の在り方を検討する中で、騎手になって活躍してくれることは、JRAだけでなく競馬サークル全体にとってもとても有意義なことなので、そこに関してはお金はいただかず、能力のある子たちがいっぱい集まって、騎手になってくれる方がいいだろうという判断で、かじを切り直したという事情があります。

赤見 素晴らしい選択ですよね。さらに減量も5年に伸びたじゃないですか。そうやって過程生の間口を広げるということで、「若手を育てよう」というのが強まっているように感じます。

おじゃ馬します!

▲間口を広げて、「若手を育てよう」というのが強まっているように感じます


小林 昨今は、外国人ジョッキーや地方ジョッキーがJRAに乗りにきて、厳しい状況になってきています。なので改めて「若手騎手を育てる」という気持ちは強くなってきていますよね。

赤見 競馬学校の試験は難関と言われますが、ポイントというとどんなところでしょうか?

小林 本年の試験内容は決定していないのですが、例年ですとまず一次試験は身体検査、体力テストである運動機能検査、学科試験、本人面談などがあります。学科は国語と社会で、中学校で勉強する基礎的なものです。

赤見 一次試験でも面接があるんですか?

小林 あります。集団面接なんですけど、やる気があるのか、本当に騎手を目指したいのかというところが判断材料になります。

赤見 それで、二次試験が4泊5日の合宿。ご飯を食べないで無理して体重を落としてきたな、とかすぐに分かっちゃいますね。

小林 分かりますね。一次よりしっかりした体力テストがあるので、「この子、元気ないな」「疲れているのかな」というのが見えると、体重を絞ってきたのかなと想像できます。その絞ってきた体重で、学校の3年間を耐えられるだろうか、というところも見ています。

赤見 最近の子は身長が高いですから、体重は重要なポイントになりますか?

小林 すごく素質があって入ったとしても、体重で苦労する場合はありますからね。ただ、その辺は兼ね合いかなと思っています。身長が高いからダメというわけではなく、本当に頑張れる子は、自己管理でしっかりとやれますからね。

赤見 そうですよね。武豊さんだって170cmありますもんね。二次では保護者面接もあるんですよね? 保護者の体型でその子の将来の体型を見定める、という噂を聞いたことがあるのですが…本当ですか?

小林 僕らの時代には、そういう噂はあったような気もしますが(笑)。保護者の体型もひとつの判断材料ではありますが、一番見ているのはそこではないんです。重点を置いているのは、保護者が親が子どもに対してどう思っているのか。

赤見 と言いますと?

小林 騎手になりたいという子どもを本当に応援しているのか、とか。逆に、保護者だけが熱心な場合もあります。保護者が競馬ファンで、子どもにジョッキーになってほしいという。一方の子どもの気持ちはそこまでではない、ということもありますよね。

赤見 そういう場合、挫折した時に心が折れやすいということも?

小林 あると思います。途中で退学する理由の一つに、「親に勧められた」というのは結構ありますからね。これはどの世界もそうだと思うんですけど、親の希望で始めた場合、技術的に伸びなかったり、挫折することも多いのかなと。

赤見 これも気になる方が多いと思うのですが、乗馬経験者はやっぱり有利なんでしょうか?

小林 気にされる方は多いと思いますが、必ずしもそうではありません。現にすでにデビューしている騎手の中にも、入学時は乗馬未経験だった人もいますし、今の騎手課程生にも各世代に1〜2名くらいは馬を触ったことがなかった子がいます。先ほどお話に出た女性騎手課程生も、実は乗馬未経験者でした。

赤見 未経験なんですか? それはすごい勇気ですね。

小林 すごいですよね。なので、男性だろうと女性だろうと、乗馬経験者であろうと未経験者だろうと関係ない。何かしら光るものを持っている子、あとはやっぱり気持ちが大事だと思っています。「絶対に騎手になりたい」という気持ち。それは目には見えないですけど、言葉だったり行動だったりから感じられますよね。

赤見 光るものと、気持ちですね。具体的に、今後欲しい人材というのは?

小林 これは毎年言い続けていることなんですけど、乗馬に限らず、いろいろなスポーツをやっている子たちに受験してほしいです。馬に乗るって特殊なことなので、乗馬経験者だけだとどうしても狭まってしまうんですよね。いろいろなスポーツをやってる子が集まれば、騎手の幅が広がったり、いろいろなものが変わってくる可能性もあるのかなと。どのスポーツはということはなくて、いろいろな方面から是非受験してきてほしいです。

(文中敬称略・次回につづく)


■お知らせ■

JRA競馬学校では、平成29年4月入学の騎手課程生を現在募集中です。
願書受付期間は平成28年5月9日〜7月25日(スポーツ特別入試制度利用者は平成28年5月9日〜7月19日)。

詳細は以下のHPをご確認ください。(外部サイトへ移動します)
http://jra.jp/school/entry/jockey/

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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