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地方2歳馬の中央挑戦

  • 2016年07月08日(金) 18時00分


◆レベルも上がってきているホッカイドウ競馬のデビュー馬

 夏のJRA北海道シリーズが始まると、地方競馬的な楽しみは、ホッカイドウ競馬所属馬の函館・札幌での活躍……なのだが、残念ながら近年では勝つのが難しくなっている。ひと夏に複数頭が勝ったのは、2010年に2歳馬2頭が勝ったのが最後。2011年には3歳馬が1頭、そして2012年にすずらん賞をシーギリヤガールが勝ったのが最後となっている。

 JRA認定競走のシステムができたのが1995年のこと。その年は、最初に行われる2歳オープンのラベンダー賞に4頭の道営馬が出走して1、2、4、5着と上位を独占。それから何年かは道営馬がおもしろいように勝った。おもしろいようにと言っても、さすがに毎週毎週勝てるわけではなく、勝ってもひと夏にせいぜい数頭だが、地方のダートしか経験のない馬が、初めての芝で穴をあけるのがおもしろかった。

 地方馬が勝てなくなった理由はいくつか考えられる。

 まずは中央と地方の能力差が広がったこと。これは地方馬が弱くなったわけではなく、21世紀になって日本の馬が世界に出て行っても互角に戦えるようになったように、中央馬のレベルが格段に上がったと見るべきだろう。

 もうひとつは中央の2歳新馬戦の開始時期が早まったこと。4月の開幕から新馬戦が始まるホッカイドウ競馬の所属馬は、以前はそれだけですでに大きなメリットだった。それが近年では中央の新馬戦の開始時期が早まり、そのメリットもほとんどなくなった。函館2歳Sが7月中旬に繰り上がり、それまでその前哨戦として行われていた2歳オープンのラベンダー賞がなくなったとき(2012年から)はちょっとした衝撃だった。

 しかしその2012年、門別競馬場に屋内坂路の調教馬場がオープンしてからは、ホッカイドウ競馬デビュー馬のレベルも上がってきている(と信じている)。

 今年も函館2歳S(7月24日)への出走権を賭けたJRA認定ウィナーズチャレンジ2戦と栄冠賞が終了。6月9日のウィナーズチャレンジ(1200m)を勝ったピンクドッグウッド(牝、父サウスヴィグラス、田中淳司厩舎)と、6月30日の栄冠賞(1200m)を勝ったバンドオンザラン(牡、父スズカコーズウェイ、角川秀樹厩舎)の2頭が函館2歳Sへ挑戦となるようだ。ちなみに田中淳司厩舎から函館2歳Sへの挑戦は、2011年から今年で6年連続となる。

 地方馬がJRA北海道シリーズの重賞を勝ったのは、2007年函館2歳Sのハートオブクィーンが最後。9年ぶりの地方馬の勝利を期待したい。

 そして地方に在籍したままでの中央挑戦ということでは、コスモバルク(シンガポールで国際GI勝利)やプレイアンドリアル(2014年京成杯)で知られる岡田繁幸氏も今年は本気のようだ。川崎・河津裕昭厩舎のトラスト(牡、父スクリーンヒーロー)が、新馬戦を4馬身差で勝利し、2戦目のJRA認定・若草特別では2着に2秒4の大差をつける圧勝。いずれJRA北海道シリーズの2歳オープン戦に挑戦するようだ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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