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ここを目標に能力を発揮したキョウエイギア/ジャパンダートダービー・大井

  • 2016年07月14日(木) 18時00分

(撮影:高橋正和)



バルダッサーレをうまく利用したキョウエイギア

 ユニコーンSで一騎打ちとなったゴールドドリーム、ストロングバローズが人気を分け合い、2頭の馬連複が1.9倍と断然の支持を集めた。ともにこれまで2着以内を外していないという戦績もあってのことだろう。

 しかしこの2頭は本当に抜けて強いだろうか?と疑問を感じて、出した結論がマイペースの逃げに持ち込んだときの◎ケイティブレイブだった。

 そのとおり、ケイティブレイブは単騎でマイペースの逃げに持ち込んだ。ノーモアゲーム以外の中央馬が続いて、その中には名古屋のカツゲキキトキトもいた(これについては後で触れる)。それらを前に見るような位置からレースを進めたのが、中央からの転入初戦で東京ダービーを制したバルダッサーレだった。

 向正面では2番手以下に4〜5馬身ほどの差をつけての逃げに持ち込んだケイティブレイブは、スタートして2F目の11秒5を除けば、12秒台後半のラップを並べ、1000m通過は61秒8という平均ペース。この淡々とした流れを打破したのがバルダッサーレだった。

 マイペースのまま逃げ込みを図りたいケイティブレイブだったが、3コーナー過ぎではバルダッサーレに2馬身ほどまで差を詰められ、もう一度差を広げたことによって脚を使わされてしまった。直線を向いても先頭だったが、2番手5頭の集団から抜けてきたキョウエイギアに並ぶ間もなく交わされて4馬身差をつけられた。

 勝ったキョウエイギアにしてみれば、一気に勝負に行ったバルダッサーレをうまく利用した。3コーナー手前でバルダッサーレが動いたあたりでもじっと我慢。3〜4コーナーではバルダッサーレのうしろについていく形で進出し、メンバー中唯一となる上り38秒台の脚を使って差し切った。

 人気の2頭はといえば、ゴールドドリームは6番手追走から直線勝負といういつもの競馬をしたものの、直線ではケイティブレイブと脚色が一緒になって3着。ストロングバローズのほうも、好スタートから2番手に控えるいつもの競馬をしたが、こちらは直線を向いて残り200mのはるか手前でデムーロ騎手が追うのをやめてしまうような感じで7着。

 勝ったキョウエイギア、2着のケイティブレイブに共通するのは、ユニコーンSを使わなかったということ。キョウエイギアの矢作芳人調教師は、大井の2000mが合うと見て、早くからユニコーンSではなくここを目標にしていたとのこと。それゆえ鳳雛Sを勝ったあとは2カ月弱の間隔でここに臨んだ。兵庫チャンピオンシップを圧勝したケイティブレイブのほうも、「ユニコーンSを挟むと日程が窮屈になるから」(目野調教師)とのことで、ここを目標に調整してきていた。

 対して人気2頭は、ユニコーンSまでの激戦の疲れもあっただろうし、地方の馬場、もしくは大井コースが合わなかった可能性もある。ともに中央では1800m戦を勝っているとはいえ、ユニコーンSのレースぶりからもしかするとベストはマイルあたりで、距離が長かったということも否定できない。

 個人的なことで言えば、残念ながら◎ケイティブレイブは2着に負けてしまったものの、ユニコーンSの1、2着馬に対する疑問は当たっていた。この世代のダート路線は、アメリカに挑戦したラニまで含めて、今後もさまざまな条件によって勝ったり負けたりということになると思う。それゆえ別路線組から世代のダート最強馬が出てくるという可能性もある。

 あらためて中央勢と対戦してどうかと思われた東京ダービー馬バルダッサーレは4着。東京ダービーでは後方追走から馬の行く気に任せて3コーナー過ぎで先頭に立ったが、今回は吉原騎手が強気に仕掛けていった。ディーズプリモが飛ばして逃げた東京ダービーのほうが1000m通過は速く61秒0。しかしレース中盤あたりからペースは落ちていて、バルダッサーレが先頭に立った3コーナー過ぎ、1400m通過は1分28秒1。対して今回はほとんど淀みなくレースが流れたため、逃げたケイティブレイブの1400m通過は1分26秒8。そこでバルダッサーレは2馬身ほどうしろにいたので、今回の自身の1400m通過推定タイムは1分27秒2。その時点で東京ダービーより1秒ほどタイムが速かったため、さすがに直線で突き抜けるというまでには至らなかった。それでも中央の上位勢と互角の能力は見せた。

 そして今回、木之前葵騎手で臨んだカツゲキキトキトは6着。スタートして最初のゴール板あたりで3番手の外につけたところでは、どこまでついていけるだろうと思って見ていたのだが、5着のダノンフェイスから5馬身離されたとはいえ、バルダッサーレ以外の地方馬には先着して6着という結果は立派だ。レースを見なおしてみると、ゲートが開いてすぐのところでは気合をつけているものの、その後は完全に流れに乗っている。さすがに連戦連勝で重賞を圧勝してきたスピードを見せた。ときに勝負圏外の後方をトコトコついていって、直線だけ脚を使って上位に来る地方馬はたまにいるが、カツゲキキトキトは中央の有力馬と同じペースで先行してという結果には価値がある。走破タイムの2分8秒2は、東京ダービー2着馬のプレイザゲームよりコンマ1秒速い。東海ダービーを勝ったあと、錦見勇夫調教師が「まだまだ強くなる」と語っていただけに、このあと大井・黒潮盃、水沢・ダービーグランプリなどに遠征すれば、相当に期待できそうだ。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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