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凱旋門賞と双璧をなす大一番、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS展望

  • 2016年07月20日(水) 12時00分


圧倒的1番人気は前年に続くこのレース連覇を狙うポストポーンド

 ヨーロッパ芝12F路線において、10月のG1凱旋門賞と双璧をなす大一番、G1キングジョージ6世&クイーンエリザベスSの発走が、今週土曜日(23日)に迫っている。

 18日(月曜日)正午に設けられていた5日前登録のステージを経て、現段階で10頭が出走を表明している。

 実は、なかなかにスリリングだったのが18日の登録ステージで、と言うのもこの段階で2頭の大駒に追加登録の噂が流れていたのである。

 1頭は、7月2日にサンダウンで行われたG1エクリプス(芝10F7y)でG1初制覇を果たした、ゴドルフィンのホークビル(牡3、父キトゥンズジョイ)だ。デビュー2戦目から2歳シーズン終了時まで専らオールウェザーを走っていた変わり種で、デビュー3戦目で初勝利を挙げると、そこから3連勝。3歳緒戦のLRニューマーケットS(芝10F)で久しぶりに芝を走り、ここも白星で通過したが、春のクラシックはスキップしてロイヤルアスコットに向かい、G3ターセンテナリーS(芝10F)で重賞初制覇。G1エクリプスSには追加登録を行って出走し、鮮やかな競馬でG1初制覇を果たすとともに、昨年7月から継続している連勝を6に伸ばしたのがホークビルである。エクリプスS直後は、「次走はインンターナショナルSか、愛チャンピオンSか」と言っていた陣営が、登録ステージ前日の17日に「扉は開かれている」と、追加登録に含みを持たせる発言をしたのだが、18日の朝になってゴドルフィンのジョン・ファーガソンが「ホークビルの次走はインターナショナルS」と発表。注目の上がり馬によるキングジョージ参戦は、幻に終わった。

 もう1頭は、6月18日のG2ハードウィックS(芝12F)を快勝し、馬主のエリザベス女王にロイヤルアスコットにおける23個目の勝ち星をプレゼントしたダートマス(牡4、父ドゥバウィ)だ。昨年9月まではハンディキャップクラスを走っていた馬で、特別初参戦となったのが、昨シーズンの最終戦となったケンプトンのLRフラッドリットS(AW12F)で、ここで勝ち馬から3/4馬身差の3着に好走。今季初戦となったチェルムスフォードのG3ジョンポーターS(AW13F66y)で重賞初挑戦初制覇を果たすと、続くチェスターのG2オーモンドS(芝13F89y)を制して芝の重賞初制覇。続いて挑んだG2ハードウィックSでも、G1・2勝の実績があるハイランドリール(牡4、父ガリレオ)との競り合いを制して優勝。重賞3連勝中という、こちらも注目の上がり馬なのである。

 キングジョージの追加登録料は7万5千ポンド(約1087万円)と高額なため、陣営がどんな判断を下すか注目されたが、こちらは18日に女王陛下のレーシングマネージャーを務めるジョン・ウォーレンが、「追加登録します」と宣言。今年のキングジョージに、女王陛下所有馬の参戦という大きな話題が加わることになった。

 これを受けて、ブックメーカー各社は早速反応。ダートマスに5.5倍から7倍のオッズを付け、キングジョージへ向けた前売りの2番人気に浮上させたのである。

 目下、各社とも2倍を切るオッズで圧倒的1番人気に推しているのは、前年に続くこのレース連覇を狙うポストポーンド(牡5、父ドゥバウィ)だ。昨年のキングジョージを起点として目下5連勝中で、4.1/2馬身差で制した前走のG1コロネーショーンC(芝12F10y)を見ると、5歳を迎えて益々馬が充実していることが窺え、死角の見当たらない大本命馬となっている。

 オッズ7倍から8倍の3番人気が、G2ハードウィックSでダートマスの2着だったハイランドリールだ。拠点はアイルランドだが、3歳時の昨年はアーリントンのG1セクレタリアトS(芝10F)、シャティンのG1香港ヴァーズ(芝2400m)と、アウェイで2つのG1に勝利。今季の春は、G1ドバイシーマクラシック(芝2400m)4着、G1クイーンエリザベス2世C(芝2000m)8着と、逆にアウェイで不本意な競馬を繰り返した後、G2ハードウィックSで好調時の姿を取り戻している。3歳時の成績を見ても、春先は不調で夏を迎えてパフォーマンスが向上しており、そういうタイプであるならばここでも無視しがたい1頭と言えよう。

 オッズ9倍から10倍の4番人気が、前走G1英ダービー(芝12F10y)4着のウィングスオヴディザイヤ(牡3、父ピヴォタル)で、この馬が3歳勢の代表となる。キングジョージは過去10年で3歳馬が2勝しているが、勝ち馬はいずれもウィングスオヴディザイヤと同じジョン・ゴスデンの管理馬で、古馬との間にある12ポンド(約5.44キロ)の斤量差を活かして、ある程度はやれるという成算が陣営にはあるのだろう。

 オッズ10倍から11倍の5番人気が、フランスから遠征してくるイラプト(牡4、父ドゥバウィ)だ。昨年のG1パリ大賞(芝2400m)勝ち馬で、G1凱旋門賞(芝2400m)で5着となった後にG1ジャパンC(芝2400m)に参戦し、6着と悪くない競馬をしたことからも日本のファンにはお馴染みの1頭である。今季初戦のG1イスパーン賞(芝1800m)は、途中でレースを投げてしまい最下位に敗れたが、前走G1サンクルー大賞(芝2400m)では馬群最後方で4コーナーを廻ってから直線だけで2着に追い込み、改めて力のあるところを見せている。

 常識的に考えればここまでが争覇圏で、ポストポーンドの軸が不動なので、馬券的にもあまり手は広げられない一戦だ。

 だが敢えて穴馬を挙げれば、6月26日にカラで行われたG3愛インターナショナルS(芝10F)で重賞初制覇を果たしたサーアイザックニュートン(牡4、父ガリレオ)になろうか。G1英オークス(芝12F10y)2着、G1独オークス(芝2200m)2着などの成績を残したシークレットジェスチャーの全弟で、タタソールズ・オクトバーセールにて360万ギニー、当時のレートで約5億9千万円という超高値で購買された馬である。2歳時、3歳時は期待に応える成績を挙げられなかった、ここへ来てようやく良化。「良血馬が上昇カープを描き出した時は天井知らず」の格言もあるだけに、今後のためにも見ておきたい1頭と言えそうだ。

 いずれにしても、秋の大一番であるG1凱旋門賞へ向けて、見逃せない一戦となりそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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