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シュエット・ジュマン“素敵な牝馬”の熱き戦い/ブリーダーズゴールドC

  • 2016年08月10日(水) 18時00分


角居師「あの強い馬に勝てたのはびっくり」


 8月11日(木)、門別競馬場で行われる『第28回ブリーダーズゴールドC』。かつては秋のGI・JpnI戦線を目標とする実力馬たちが始動するレースとして位置付けられていましたが、2014年からは大きく形を変え、新たに牝馬限定重賞となりました。

 グランダム・ジャパン古馬シーズンの対象レースにも指定され、JBCレディスクラシックを見据えた古馬牝馬たちの夏の戦いに生まれ変わったのです。

 同時に2014年8月14日、2歳牝馬限定・地方全国交流重賞の『フルールC』が新設され、リリーC、フローラルC、エーデルワイス賞、ブロッサムCと続くホッカイドウ競馬の2歳牝馬戦線のさらなる充実も図られました。

 この2つのレースは同じ日に行われ、門別競馬場ではシュエット・ジュマン・フェスティバル(素敵な牝馬の祭り)と銘打った女性を対象にした様々なイベントが開催されました。

 実はこの日、私も現地にいてパドック進行やイベントに参加していたんですが、夏のレディースデーの賑やかな雰囲気は、生まれ変わったブリーダーズゴールドCの新しい門出を祝うムードに包まれていました。

 その2014年にこのレースを制したサンビスタ。記憶に新しい女王を簡単に振り返りたいと思います。

 サンビスタとは「サンバを愛してやまない人」という意味で、天皇賞・春を勝った父スズカマンボ、フェアリーSを勝った母ホワイトカーニバル、両親の名前から連想して名付けられたそうです。

 ともにグランド牧場の生産馬でもある父母から生まれたサンビスタはダートでデビューし、初勝利を挙げたのは3戦目。徐々に成績を上げていったもののオープン入りしたのは5歳になってからという遅咲きでした。2014年3月に初めて挑戦した重賞・エンプレス杯は雨の不良馬場で3着。7月の函館のマリーンS(OP)では牡馬に混じって2着に好走していました。

 続く『第26回ブリーダーズゴールドC』はこの年のエンプレス杯、マリーンCを圧勝したワイルドフラッパーが1番人気で単勝はなんと1.1倍。人気が集中していたものの2か月半ぶりの実戦で、馬体重はプラス14kg。対するサンビスタはエンプレス杯でワイルドフラッパーに敗れているとはいえ2番人気で4.3倍。この2頭の再戦に注目が集まっていました。

 レースはワイルドフラッパーが逃げ、マーチャンテイマー、リアライズキボンヌ、そしてサンビスタとJRA勢が前に行く展開。ゆったりとした流れで向こう正面までの位置取りはそのまま。レースが動いたのは3コーナーのカーブを回る時。

 外目を進んでいたサンビスタが徐々に内側に位置取りを変え、逃げるワイルドフラッパーのインを狙って進出。直線の入り口で並んだ2頭でしたが、内からサンビスタが差し切り、リードを広げて3馬身差でゴール。見事重賞初制覇を飾りました。

2014年のブリーダーズゴールドCで初重賞制覇を飾ったサンビスタ(撮影:田中哲実)


 角居勝彦調教師は「馬の出来が本当に良かったけれど、あの強い馬(ワイルドフラッパー)に勝てたのはびっくりしています」と、驚きのコメントを述べていましたが、その後、秋に行われたJBCレディスクラシックを制覇。JpnIホースに輝き、その強さが本物であることを証明しました。

 牝馬限定重賞となった最初の年の覇者が、しっかりとこのレースの重要性を体現してくれたと言っていいでしょう。

アムールブリエ、久しぶりの牝馬限定重賞参戦


 それでは今回の注目馬たちをご紹介していきましょう。今年は地方の他地区からの出走がなく、JRA勢vsホッカイドウ競馬勢というメンバーになっています。

 筆頭は昨年の覇者アムールブリエ。去年のレースで前年の勝ち馬サンビスタとゴール前一騎打ちの形に持ち込み、最後はアタマ差とらえてゴール。印象に残る好レースで、その後のレディスプレリュード、JBCレディスクラシックは敗れてしまったものの、歴戦の牡馬を相手に名古屋グランプリを勝利。

 さらに年明け1月の川崎記念ではホッコータルマエの3着に大健闘。続くエンプレス杯ではファストフレンド以来となる連覇を達成するなど大活躍。その後は牡馬相手の重賞レースを2戦し、久しぶりの牝馬限定重賞参戦となります。

今年のエンプレス杯ではファストフレンド以来となる連覇を達成したアムールブリエ(撮影:高橋正和)


 今年3月のエンプレス杯の後、松永幹夫調教師は「去年はJBCレディスクラシックで結果を出せなかったので、もう1回チャレンジしたい」と今後のプランを語っていました。秋の大目標に向けて、ここは負けられない1戦です。

 関東オークスを制した3歳女王、タイニーダンサーも楽しみな1頭。元ホッカイドウ競馬所属で門別競馬場では7戦5勝。栄冠賞、フローラルC、エーデルワイス賞、北海道2歳優駿と重賞4勝を挙げた舞台。サンビスタと同じグランド牧場の生産馬というのも心強い縁を感じます。

門別競馬場では7戦5勝のタイニーダンサー(写真は関東オークス優勝時、撮影:高橋正和)


 前走・スパーキングレディーCは初の古馬との対戦で3着でしたが、今回、自分の庭のような走り慣れた舞台に戻って巻き返しの可能性十分です。

 こちらも3歳のビービーバーレル。芝の重賞・フェアリーSの勝ち馬で、桜花賞にも出走(9着)。ダートに路線変更した初戦、大沼S(OP)では50kgという軽量を活かし古馬に混じって2着に健闘。今回は武豊騎手と初コンビとなり、54kgでどこまでやれるか注目です。

武豊騎手と初コンビでどこまでやれるか注目のビービーバーレル(写真はフェアリーS優勝時、撮影:下野 雄規)


 ビービーバーレルと同じく3歳時にフェアリーSを制したノットフォーマル。芝の重賞戦線を歩んできましたが、2014年のエーデルワイス賞(12着)以来、2回目のダート戦の挑戦となります。久しぶりのダートでどこまで力を出せるでしょうか。

 さらに1000万下を勝って重賞初出走のエンプレス杯に挑み、アムールブリエの3着に健闘したティンバレスも出走。エンプレス杯では逃げてレースを引っ張りましたが、果たして今回は?

 ホッカイドウ競馬勢ではジュエルクイーンに注目。前走はノースクイーンCで2着。2014年のエーデルワイス賞2着で、この年のグランダム・ジャパン2歳シーズンの優勝馬。その後も全国の地方交流重賞で活躍しており、デビュー以来24戦して掲示板を外したのは芝に挑戦したデイリー杯クイーンC(16着)のみ! 出来るだけ上位を狙って欲しい1頭です。

 今年も門別競馬場ではシュエット・ジュマン・フェスティバル(素敵な牝馬の祭り)が開催されています。今週は様々な関連イベントが行われ、牝馬のお祭りらしい華やかなムードに包まれます。夏の北海道に定着しつつある、秋を見据えた素敵な牝馬の戦い、ブリーダーズゴールドCをお見逃しなく!

※次回の更新は8月15日(月)の18時。盛岡競馬場で行われる「クラスターC」のコラムをお届けします!



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【ダートグレード競走とは】
中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。

埼玉県出身。フリーアナウンサー。競馬好きが高じてこの世界へ。2001年から15年間、グリーンチャンネルで「中央競馬全レース中継」のキャスターを務める。2016年度から「グリーンチャンネル地方競馬中継」のコメンテーターとして出演。さらに全国各地の競馬場のトークイベントに参加するなど、中央競馬・地方競馬の垣根を越えて活躍中。

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