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【30代 夢をあきらめない(1)】女王・宮下瞳騎手――かっこいいママ、かっこいい騎手になりたい

  • 2016年08月22日(月) 18時01分
地方企画

女王・宮下瞳騎手が“ママさんジョッキー”になって帰ってきた。地方競馬通算626勝を挙げ、女性騎手最多勝利記録を持ちながら、2011年、妊娠を機に引退。その後、2児のママとなった。「騎手としてやりきった」と決断した引退だったが、子供の言葉をきっかけに復帰を決意。昨秋から厩務員として競馬界に戻り、家事・育児・仕事すべてに手を抜かず努力を重ねた。39歳、ママになっても追い求めたい夢が宮下瞳騎手にはあった。大きな一歩を踏み出した復帰当日の様子をレポートする。

なお、今回から3回連続(隔週予定)で『30代、夢をあきらめない』をテーマに地方競馬コラムを連載する。今回はその第1弾。次回以降は“ピザ屋の店長からリーディングトレーナーになった調教師”や、“31歳で待望のデビューを控えた騎手”の話を紹介する。(取材・文・写真:大恵陽子)


※参考コラム:【最多勝女性騎手】引退から5年“女王”宮下瞳 騎手復帰へ

「ママ、最初は1着だった」息子からのかわいい声援


 8月17日。ジリジリと太陽が照りつける名古屋競馬場には朝10時30分の開門前から多くのファンが集まった。取材に来たマスコミは24社。大レースの熱気とは少し違う浮き足立った雰囲気に包まれた。

 前年度比118%、2206名の入場者の注目の的は、宮下瞳騎手。女性騎手最多勝の626勝を挙げ、“女王”と称された彼女が、ママさんジョッキーとして復帰する。

 過去に出産後もレースに騎乗したのは、牛房由美子元騎手(引退、浦和・通算21勝、騎手免許を返上せず出産・騎手を続行)のみ。世間では、育児中の女性の活躍が華々しく伝えられるが、深夜からの調教騎乗や怪我の危険が伴う騎手という職業では困難だと思われていた。

 しかし、宮下瞳騎手はその常識を覆そうとしていた。なぜ大きな一歩を踏み出せたのか。

「長男の優心(4)が“ママが馬に乗る姿を見たい。応援するよ”って言ったのがきっかけでした」

 小さな息子の大きなパワーに突き動かされ、騎手免許試験を一次試験(学科)から再受験。今年7月、合格した。

 復帰初日は3鞍に騎乗。パドックには、彼女の復帰を祝う横断幕のそばで、優心くんと次男・健心くん(1)、育児をサポートしてきた父・健二さんら親戚が見守った。

 復帰初戦の第2レース、騎乗合図がかかりパドックに宮下瞳騎手が登場すると、多くの競馬ファンから拍手や「おかえり」といった声援が飛んだ。

「ファンの方がどんな反応をしてくれるのかなって、正直不安だったんですが、声援を聞いて嬉しくて胸がジーンとしました。返し馬の時には、ゴール前に家族がいるのが見えて、子供の声援も聞こえてきました」

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 レースはスタンド奥からスタート。約5年のブランクながらスタートを決めると、1周目のスタンド前で「ママがんばれー!」と応援する子供たちの前を先頭で駆け抜けていった。

 そのまま逃げて自身のペースに持ち込んだが、4コーナー手前で後続に追い上げられ8着でゴールした。

「レース中に、騎手として戻ってきたんだって実感が湧いてきました。出産で筋肉が脂肪に変わってしまったのでジョギングや筋トレをしたり、調教にも昨秋から乗っていましたが、レースではまた使う筋肉が違うので、息が持つかな? って心配でした。最後までちゃんと追えてよかったです。スタートこそ出遅れなかったですが、ペース配分とかの判断が鈍っているのかな、と感じました。まずは復帰後初勝利を目指したいです」

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 優心くんからはあとでこんな言葉をかけられた。

「ママ、最初は1着だったのに。もっと頑張らないと」

 勝てなかったが、積極的にレースを引っ張る姿はしっかり見てくれていた。

 続く第3レースは、師匠の竹口勝利調教師(72)が管理する馬に騎乗。2走前には夫・小山信行騎手(47)が今回と同じ800m戦で騎乗し、勝利した馬だ。

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