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競馬の日

  • 2016年09月17日(土) 12時00分


 9月16日は「競馬の日」なのだという。この稿がアップされる前日の金曜日だ。

 1954(昭和29)年の9月16日、日本中央競馬会(JRA)が設立されたことに由来する。大正時代に始まった倶楽部時代、その後の日本競馬会時代を経て、終戦後は農林省畜産局が運営する国営競馬となり、吉田茂政権の行政改革の一環で日本中央競馬会法が制定され、JRAの設立に至った。

 おそらく、9月16日が「競馬の日」であることを知っているファンや関係者はものすごく少ない。

 繰り返す。9月16日、である。語呂合わせで覚えるなら「クイム」か「クイロ」「ココイム」「ココイロ」などか。いずれにしても、何のこっちゃ、という感じがする。

 なぜ定着しないのか。理由はいくつか考えられる。

 まず第一に、この日が競馬の日だと知っていても、得をすることがないからだ。

 国民の祝日になるわけではないし、パットの残高が自然に数百万円増えているわけでもない。「きょうは『競馬の日』なんだって」と誰かに言って、それをきっかけに話が弾むことも考えづらい。毎月29日の「肉の日」に、スーパーで肉の安売りがあるのとは対照的だ。

 得をするようになっていないのは、主催者やメディアが、この日を特別扱いしようとしていないからだろう。ざっとJRAのサイトを見たところ、「きょうは競馬の日です。みんなで競馬の楽しさについて語りましょう」的な記述はない。

「競馬の日」で検索して出てきた記念日を紹介するサイトによると、9月16日は「オゾン層保護のための国際デー」でもあり、「ハイビジョンの日」「マッチの日」でもあり、メキシコとパプアニューギニアの「独立記念日」で、マレーシアが成立した「マレーシアの日」でもあるという。

 今、この稿の語呂合わせのところを読み返して思ったのだが、9月16日を「クイロ」とするのは、「悔いろ」に通じて、あまりよろしくない。もうちょっと前向きな覚え方を編み出したい。

 30年ほど競馬をしてきた私が、「きょうは『競馬の日』です」と書いたり言ったりするのはこれが初めてだ。過去に何度もJRAの設立に関する原稿を書き、9月16日という日付まで記したこともあるのだが。

 今回は、ツイッターのタイムラインを眺めていたら、この記念日に触れている人が何人かいて、「へえ」と思った。

 おそらく、来年もこんな感じだろう。誰かのツイートを見て、「そうか」と思い、

 ――去年はエッセイのネタにしたけど、同じことは書けないよな。

 と、ため息でもついていると思われる。

 それにしても、いつから9月16日が「競馬の日」となり、そもそも、誰がこの日を「競馬の日」にすると決めたのだろう。JRAの関係者だと思われるが、それを確かめるためだけに広報に電話をするのは、やはりためらわれる。

 世の中には、知らなくてもいいこと、知らなくても別に困らないこと、知らないほうがいいこと、知らずにあれこれ勝手なことを言うほうが楽しいこと、が、一杯あるものだ。

 さて、先日、乗馬となったスマイルジャック(セン、11歳)が、関東の大学の馬術部に移動した、と連絡があった。

 11歳という馬齢と、セン馬になったこともあるのだろうが、とてもおとなしくなったという。

 今、詳細に関して問い合わせ、返答を待っているところだ。

 競走馬、種牡馬につづく「第三の馬生」を歩みはじめたスマイルジャック。取材する機会が得られれば、またここでリポートしたいと思う。

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作家。1964年札幌生まれ。ノンフィクションや小説、エッセイなどを、Number、週刊競馬ブック、優駿ほかに寄稿。好きなアスリートは武豊と小林誠司。馬券は単複と馬連がほとんど。ワンフィンガーのビールで卒倒する下戸。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』など多数。『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』で2011年度JRA賞馬事文化賞、小説「下総御料牧場の春」で第26回さきがけ文学賞選奨を受賞。netkeiba.com初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリー『ダービーパラドックス』。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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