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ダノンバラードの4分の3同血ロードソリスト

  • 2016年09月21日(水) 12時00分
アンセム(牡 栗東・野中賢二 父ディープインパクト、母オータムメロディー)
 モハメド殿下の所有馬。全姉ピクシープリンセスはエリザベス女王杯(GI)で3着と健闘した。このほか半兄ジョヴァンニ(父アドマイヤムーン)はダート路線でOPクラスに出世し、半兄ケルヴィンサイド(父コマンズ)はユニコーンS(GIII)7着という成績がある。母オータムメロディーは「Kingmambo×Sadler's Wells」なのでエルコンドルパサーと同じ組み合わせ。Nureyev≒Sadler's Wells 3×2という大胆な4分の3同血クロスを持っている。「Mr.Prospector系×Northern Dancer系×Fall Aspen牝系」なので名馬Dubai Millenniumとも配合構成が似ている。3代母Fall Aspenは20世紀を代表する名繁殖牝馬の1頭で、競走馬となった13頭の産駒のうち11頭が勝ち上がり、4頭のG1馬を含む8頭の重賞ウィナーを送り出した。そのなかには本邦輸入種牡馬ティンバーカントリー(米2歳牡馬チャンピオン)も含まれる。完成はやや遅めかもしれないが、長打力のある配合だけにハマれば芝中距離でおもしろい。

インヘリットデール(牝 栗東・高野友和 父ルーラーシップ、母フサイチエアデール)
 フサイチリシャール(父クロフネ/最優秀2歳牡馬)、ライラプス(父フレンチデピュティ/05年クイーンC-GIII)、サイオン(父クロフネ/14年川崎記念-JpnI・5着)などの半妹。母フサイチエアデールは重賞を4勝した名牝で、4歳夏のマーメイドS(GIII)では牝馬ながら58kgを背負って55kgのトゥザヴィクトリーに完勝するという破格のパフォーマンスを見せた。桜花賞、二度のエリザベス女王杯と、GIでは2着を重ねたが、能力は並のGI牝馬を上回るものがあった。父ルーラーシップはキングカメハメハの後継種牡馬で、16年は国内最高となる280頭に種付けをこなした。仮にその父キングカメハメハとフサイチエアデールを交配するとMr.Prospector 3×3と強いクロスが生じるので、それを避ける意図があったのか両者の交配は一度も試みられたことがない。本馬はMr.Prospector 4×3となるので問題ないという判断なのだろう。父はスピードと瞬発力を強化したいタイプなので、母方にサンデーサイレンスとMr.Prospectorを併せ持つこの馬の配合は申し分ない。母が18歳時の産駒、という点だけが心配だが、問題なければ楽しみが大きい。

クロンヌ(牝 美浦・菊沢隆徳 父ダイワメジャー、母ゴールドティアラ)
 母ゴールドティアラは「Seeking the Gold×Chief's Crown」というパワフルなスピード血統で、マイルチャンピオンシップ南部杯(GI)などダート重賞を5勝した名牝。繁殖牝馬としてはゴールデンハインド(父クロフネ/12年万葉S-OP)、ロングロウ(父クロフネ/OP)などコンスタントに活躍馬を出している。それらの全姉ココシュニック(3勝)は繁殖牝馬としてステファノス(父ディープインパクト/14年富士S-GIII)を出した。活力があるファミリーだ。本馬の父はダイワメジャー。牝馬に出て母方にMr.ProspectorとDanzigを併せ持つので、芝・ダート兼用のスピードタイプだろう。1400mがベストで1600mまでは守備範囲。

ペルランヴェール(牡 栗東・平田修 父スマートファルコン、母モンヴェール)
 母モンヴェールは関東オークス(GII)3着馬。繁殖牝馬としてはこれまでに3頭の産駒がすべて勝ち上がり、そのなかの1頭、ゴールドアリュールとの間に誕生したゴールドドリームは、ユニコーンS(GIII)を勝ったほかジャパンダートダービー(JpnI)3着、兵庫チャンピオンシップ(JpnII)2着などの成績がある。父スマートファルコンはダート中距離のGI格のレースを勝ちまくった名馬でゴールドアリュールの代表産駒。したがって、ゴールドドリームの4分の3弟(母が同じで父同士が親子)となる。いまのところ勝ち上がった2頭の産駒はいずれもMr.Prospectorを抱えている。本馬も同じパターン。なおかつ、2代父ゴールドアリュールの成功パターンであるNureyevクロスと似たNureyev≒Number 4×4を持っているのは好感が持てる。ダート中距離で期待したい。

ロードソリスト(牡 栗東・橋田満 父ディープインパクト、母レディアーティスト)
 母レディアーティストはダノンバラード(13年アメリカJCC-GII、10年ラジオNIKKEI杯2歳S-GIII)の半姉で、ダート短距離ばかり走って6戦1勝(2着4回)の成績を残した。本馬の父はダノンバラードと同じディープインパクトなので、両馬は4分の3同血(父が同じで母同士が親子)の関係となる。「ディープインパクト×フレンチデピュティ」はダービー馬マカヒキをはじめ多くの活躍馬が出ている成功パターンで、これにHaloクロスが加わる配合は前出のマカヒキ(とその全姉ウリウリ)と同じ。また、母方にUnbridledが入るディープインパクト産駒も、前記のダノンバラードをはじめダノンプラチナ(14年朝日杯FS-GI)、ダコール(15年新潟大賞典-GIII)、ブランボヌール(15年函館2歳S-GIII、16年キーンランドC-GIII)などが出ている。さらに、父はGlorious Songと相性抜群で、本馬にはその全妹Angelic Songが入る。父の成功パターンが重ねられているので芝・ダートを問わずマイルから中距離でタフに活躍できそうだ。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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