スマートフォン版へ

2歳の素質馬が目白押しのブリーダーズC

  • 2016年10月12日(水) 12時00分


どの馬がクラシック最有力候補に躍り出るのか


 先週末、ニューヨーク州のベルモントパークでG1シャンパンS(d8F)とG1フリゼットS(d8F)が、ケンタッキー州のキーンランドでG1ブリーダーズフューチュリティ(d8.5F)とG1アルシバイアデスS(d8.5F)が行われ、1週前にカリフォルニア州のサンタアニタで行われたG1フロントランナーS(d8.5F)とG1シャンデリアS(d8.5F)をあわせて、G1ブリーダーズCジュヴェナイル(d8.5F)とG1ブリーダーズCジュヴェナイルフィリーズ(d8.5F)へ向けた主な前哨戦が終了した。

 前売りオッズ4倍-9倍の間に6頭がひしめく大混戦となっているのが、11月5日に行われる、牡馬とセン馬によるG1BCジュヴェナイルである。

 そんな中、わずかの差で1番人気に推されているのは、1日にサンタアニタで行われたG1フロントランナーSを逃げ切りで制したゴームリー(牡2、父マリブムーン)である。

 祖母ミスマンボがG1仏1000ギニー(芝1600m)3着馬で、4代母エストラバドが米最優秀芝牝馬という「芝血統」を背景に持つ同馬。1歳秋にキーンランド・セプテンバーセールに上場されるも15万ドルで主取りとなり、その後にゼニヤッタらの所有者として知られるモス夫妻にプライヴェートで購買されて、ゼニヤッタと同じジョン・シレフス厩舎に入厩。9月4日にデルマーで行われたメイドン(d6.5F)を4.1/4馬身差で制した後、いきなり挑んだのがG1フロントランナーSだった。

 このレースは、デビュー2戦目から前走G1デルマーフューチュリティ(d7F)まで3連勝中だったクリムト(牡2、父クオリティロード)がオッズ1.3倍という圧倒的な人気を集めていたが、スタートから先手をとったゴームリーが、半マイル=47秒18、6F=1分11秒48という平均ペースで逃げ、最後まで脚色衰えずに逃げ切り勝ち。クリムトも後方からよく追い込んだものの、ゴームリーから3馬身差の2着に終わっている。

 本番は前哨戦のように、単騎で逃がしてはくれないだろうが、デビュー戦では逃げ馬を前に見る2番手で競馬をしており、必ずしも逃げなくてはならないわけではないのが、ゴームリーの強みである。

 以下、8日にベルモントパークで行われたG1シャンパンSを制し、デビューから3連勝を飾ったプラクティカルジョーク(牡2、父イントゥミスチフ)、G1シャンパンSがハナ差2着だったシンダーガード(牡2、父マジェスティックパーフェクション)、8日にキーンランドで行われたG1ブリーダーズフューチュリティを3馬身差で快勝したクラシックエンパイア(牡2、父パイオニアオヴザナイル)、9月17日にチャーチルダウンズで行われたG3イロコイS(d8.5F)を8.3/4馬身差で圧勝したノットディスタイム(牡2、父ジァイアンツコーズウェイ)、そして前出のクリムトらが、10倍を切るオッズで並んでいる。

 牡馬のジュヴェナイル同様、11月5日に行われる牝馬のジュヴェナイルフィリーズも混戦模様になったのは、各地で行われた前哨戦がいずれも物足りない内容に終わったからである。

 そういうわけで、ブックメーカー各社が4-5倍の1番人気に推しているのは、9月3日にデルマーで行われたG1デルマーデビュータント(d7F)を快勝後、BCに直行するユニオンストライク(牝2、父ユニオンラッグス)である。

 G2ペンシルヴェニアダービー(d9F)など2重賞を制したハンサムマイクの半妹で、OBS4月市場にて37万5千ドルで購買されて、今年4月に開業したばかりの女性調教師シェルビー・ルイス(25歳)の厩舎に入厩。ちなみに同馬の馬主は、調教師の両親や兄で組織されたシンジケートである。

 7月31日にデルマーのメイドン(d5.5F)でデビューし、アメリカンフェイローの全妹という評判馬アメリカンクレオパトラの2着になると、未勝利の立場でG1デルマーデビュータントにぶつけ、ここではアメリカンクレオパトラを2着に退けて快勝。初勝利をG1で挙げる離れ業を演じた。

 しかも、ここで4着だったノーテッドアンドクォーテッド(牝2、父ザファクター)が、10月2日にサンタアニタで行われたG1シャンデリアSを勝ったことで、デルマーデビュータントとユニオンストライクの評価が更に上がることになった。

 以下、9月3日にサラトガで行われたG1スピナウェイS(d7F)で1着同着だったスウィートロレッタ(牝2、父タピット)とプリティシティダンサー(牝2、父タピット)、10月7日にキーンランドで行われたG1アルシバイアデスSを制したダンシングラッグス(牝2、父ユニオンラッグス)と、同競走の2着馬ダディーズリルダーリン(牝2、父スキャットダディ)、8日にベルモントパークで行われたG1フリゼットS(d8F)を勝って2戦2勝のイエローアゲイト(牝2、父ジェモロジスト)、そして前出のノーテッドアンドクォーテッドらが、ひと桁台のオッズにひしめいている。

 牡馬・牝馬とも素質馬が目白押しで、果たしてどの馬が一歩抜きんでて、来春のクラシック最有力候補に躍り出るのか、ブリーダーズCにおける戦いぶりに注目が集まっている。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング