スマートフォン版へ

リアルスティールの全妹カデナダムール

  • 2016年10月19日(水) 12時00分
アースオブフェイム(牡 美浦・和田正道 父ダイワメジャー、母アースサウンド)
 母アースサウンドは現役時代、ダート短距離でOPクラスまで出世し、全日本2歳優駿(JpnI)で3着、兵庫ジュニアグランプリ(JpnII)で2着などの成績を残した。500kg近い恵まれた馬格から繰り出す先行力はアメリカ血統から受け継いだもので、母の父Yes It's Trueはフランク・J.ドフランシスメモリアルダッシュS(米G1)など8つのGレースを勝った名スプリンター、2代母の父Fit to FightはメトロポリタンH(米G1)など3つの米ハンデG1を制した活躍馬。これらの血の影響は強固だと思われるので、ダイワメジャーを父に持つ本馬もダートのほうが走りやすいタイプだろう。ダ1200-1400mで強力な先行力を武器に活躍するはず。

カデナダムール(牝 栗東・矢作芳人 父ディープインパクト、母ラヴズオンリーミー)
 リアルスティール(16年ドバイターフ-首G1、15年共同通信杯-GIII)、プロディガルサン(15年東京スポーツ杯2歳S-GIII・2着)、ラングレー(14年毎日杯-GIII・4着)の全妹。この配合で牝馬に出たのは本馬が初めて。「ディープインパクト×Storm Cat」はキズナ、アユサン、ラキシス、エイシンヒカリなどが出ているニックス。2代母MonevassiaはKingmamboの全妹で、3代母Miesqueは80年代の世界最強マイラー、という世界レベルの良血は魅力的だ。母方の奥は底力あふれる血で構成され、とくに重厚なヨーロッパ血統から成る名牝Flower Bowlが入るのがいい。こうした血は「ディープインパクト×Storm Cat」を活かすのに必要だと思われる。エイシンヒカリにもFlower Bowlが入っている。配合どおりの素質が伝わっているなら重賞級の活躍が期待できる。

キャリコ(牝 栗東・池添学 父ディープインパクト、母モシーン)
 母モシーンは豪18戦8勝。オーストラリアンギニーズ(豪G1・芝1600m)、ランドウィックギニーズ(豪G1・芝1600m)、VRCオークス(豪G1・芝2500m)など4つのG1を含めて重賞を6勝した名牝。母の父Fastnet Rockは豪リーディングサイアーに2回輝いた名種牡馬で、デインヒル系ながら母方にスピード豊かなオーストラリア血統を抱えているため、産駒は日本の高速馬場にも適応しており、ブラヴィッシモやメラグラーナ(いずれも芝1400mベスト)が活躍している。母はNorthern Dancer 4・5×4で、Danzig、Nureyev、Nijinskyを経由している良形。名血Sir Tristram 5×4も期待できる。2代母の父ストラヴィンスキーは「Nureyev×Blushing Groom×Mr.Prospector」で、ヴィルシーナの母ハルーワスウィート、ミッキークイーンの母ミュージカルウェイと配合構成がよく似ている。3代母Benedictionは仏1000ギニー(G1)を勝ったディープインパクト産駒Beauty Parlourの2代母でもある。どこをどう切っても走る配合で、不安点は5月16日という遅生まれだけ。芝向きのマイラー・中距離タイプとして大成しそうだ。

ハナレイムーン(牝 美浦・堀宣行 父ディープインパクト、母ハウオリ)
 全兄キロハナは、2戦2勝としてクラシック戦線に名乗りをあげた矢先、骨折が判明して3歳春を棒に振った。復帰後2戦し、再度骨折。二度目の復帰を果たして2着のあと、現在は休養中。素質は高いものの体質の弱さがある。母ハウオリは芝1600-2000mが守備範囲で準OPまで出世した。2代母ノースフライトは安田記念(GI)、マイルチャンピオンシップ(GI)を制した名牝。「ディープインパクト×キングカメハメハ」「父ディープ、2代母の父トニービン」はいずれも成功パターンで、配合的には文句なし。体質の弱さがなければおもしろい。

パールズシャイン(牝 栗東・池添学 父ディープインパクト、母スペリオルパール)
 全兄ラストインパクトは、金鯱賞(GII)をレコード勝ちするなど3つの重賞を制し、ジャパンC(GI)2着、ドバイシーマクラシック(首G1)3着などの成績を残している。母スペリオルパールは不出走ながら、四冠を制覇し年度代表馬にも輝いたナリタブライアン、同じく年度代表馬のビワハヤヒデの半妹にあたる良血で、近親にはファレノプシス(98年桜花賞-GI、98年秋華賞-GI、00年エリザベス女王杯-GI)、キズナ(13年日本ダービー-GI、13年ニエル賞-仏G2など重賞5勝)などがいる。Pacific Princessのファミリーから出たディープインパクト産駒の優秀さはよく知られるところで、過去3頭出走して前出のキズナとラストインパクト、そしてモンドインテロ(16年目黒記念-GII・5着)が出ている。本馬は母が16歳時の産駒だが、血統的には申し分ないので重賞級の期待が掛けられる。

ビートマッチ(牝 美浦・萩原清 父ルーラーシップ、母パーフェクトマッチ)
 母パーフェクトマッチはクイーンC(GIII)4着、フローラS(GII)5着などの成績がある。父ルーラーシップはスピード面や晩成傾向への懸念があるので、母方にサンデーサイレンスを入れ、Mr.Prospectorのクロスを作るのは有効な手立てだと思われる。母は「サンデーサイレンス+Mr.Prospector」という血統構成なので父の配合相手としてちょうどいい。Mr.Prospector 4×4はKingmambo≒ジェイドロバリー3×3と言い換えることもできる。さらに、ダイナカール≒マックホープ3×4という牝馬同士の4分の3同血クロスは、アメリカの名牝Numbered Account(Busanda≒Striking 2×3)を彷彿させる鮮やかなもの。2代母マッチザピースはNijinskyとRobertoを併せ持っているので、これらの組み合わせとニックスの関係にあるキングカメハメハとは合うと思われる。桜花賞馬レッツゴードンキ(父キングカメハメハ)と配合構成がよく似ているので、距離がもつレッツゴードンキ、といったイメージだ。500kgを優に超える馬体は牝馬にしては珍しく雄大なもの。それだけに足もとの不安も懸念されるが、スケールの大きな好配合馬なので仕上がれば楽しみが大きい。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング