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カイザーバルの全弟でフェデラリストとも血統構成が同じムードメーカー

  • 2016年11月16日(水) 12時00分
クロスアミュレット(牝 栗東・梅田智之 父ハーツクライ、母アドマイヤテレサ)
 コーフィールドC(豪G1)、ダイヤモンドS(G3)を制したアドマイヤラクティの全妹。母アドマイヤテレサは阪神牝馬S(G2)4着馬で、芝1400〜1800mを得意とする馬だった。母の父エリシオは凱旋門賞(仏G1・芝2400m)の勝ち馬、2代母の父CaveatはベルモントS(米G1・ダ12f)の勝ち馬というスタミナ豊かな血を受けているため、父ハーツクライの長距離適性も相まって、アドマイヤラクティはステイヤーとして大成した。母の父エリシオは、父としてはポップロックとヘルスウォールが目立つ程度だったが、母の父としてはサダムパテック、アドマイヤラクティ、ファタモルガーナ、ダノンリバティ、コスモヘレノスなど、続々と活躍馬を送り出している。ハーツクライはSeattle Slewと相性良好で、Nijinskyを併せ持つとさらに効果が高まる。このパターンはアドマイヤラクティのほかにカレンミロティック(13年金鯱賞-GII)、エニグマバリエート(14年ホープフルS-GII・5着)、タウレプトン(5戦2勝)などが出ている。連対率37.0%、1走あたりの賞金726万円はきわめて優秀。本馬はアドマイヤラクティの全妹なのでこのパターン。芝向きの中距離タイプだろう。

サトノクロニクル(牡 栗東・池江泰寿 父ハーツクライ、母トゥーピー)
 サトノラーゼン(15年京都新聞杯-GII、15年日本ダービー-GI・2着)の4分の3弟。父がディープインパクトからハーツクライに替わった。母トゥーピーは仏1000ギニー(G1)2着馬で、このとき5馬身差で優勝したのが仏牝馬二冠など5つのG1を制した名牝Divine Proportions(通算10戦9勝)なので致し方ない。母の父Intikhabはエリザベス女王杯(GI)を連覇したSnow Fairyの父として有名。父ハーツクライの代表産駒ヌーヴォレコルト(14年オークス-GI)とワンアンドオンリー(14年日本ダービー-GI)はいずれも母方にMr.ProspectorとDanzigを併せ持っていた。本馬はこのパターンに当てはまり、なおかつRoberto+Mr.Prospectorというもうひとつの成功パターンにも当てはまる。芝向きの中距離タイプ。

フィアーノロマーノ(牡 栗東・高野友和 父Fastnet Rock、母Heart Ashley)
 父Fastnet Rockは2011-12、2014-15年の二度豪リーディングサイアーとなったデインヒル系の名種牡馬。デインヒル系のスプリント血統は基本的にパワー過多で、速い時計が出る日本の芝にはフィットしきれないところがある。しかし、Fastnet Rockに関しては、日本でデビューしたブラヴィッシモが阪急杯(GIII)3着、メラグラーナが芝短距離路線でオープン入りを果たすなど、時計の速い馬場にも対応可能なスピードを伝えている。母方のオーストラリア血統が素軽さを与えているのだろう。本馬の母Heart AshleyはCupid(16年インディアナダービー-米G2など重賞3勝)の半姉で、シカダS(G3・ダ6f)、ミスプリークネスS(G3・ダ6f)などを勝った。2代母Pretty'n Smartはヴァイスリーガル=Vice Regent 3×2というパワフルな血統なので、本馬は芝とダートどちらでも行けそうだ。1400〜1800mが適距離だろう。

ムードメーカー(牡 美浦・菊沢隆徳 父エンパイアメーカー、母ダンスインザムード)
 カイザーバル(16年秋華賞-GI・3着)の全弟で、ダンスファンタジア(父ファルブラヴ/11年フェアリーS-GIII)、シャドウダンサー(父ホワイトマズル/14年京都新聞杯-GII・4着)、フローレスダンサー(父ハービンジャー/京都2歳S-GIII・4着)などの半弟でもある。母ダンスインザムードは桜花賞(GI)、ヴィクトリアマイル(GI)の勝ち馬で、ダンスパートナー(95年オークス-GI、96年エリザベス女王杯-GI)、ダンスインザダーク(96年菊花賞-GI)の全妹にあたる超良血。ダンスパートナーはエンパイアメーカーとの間にフェデラリスト(12年中山記念-GII、12年中山金杯-GIII)を出しており、本馬とフェデラリストは父が同じで母同士が全姉妹なので、血統構成はまったく同じ。冒頭に記したようにカイザーバルの全弟でもあるので将来性十分。芝向きの中距離タイプ。

ローレルヴィクター(牡 栗東・羽月友彦 父バトルプラン、母シルクアワード)
 「バトルプラン×スピニングワールド」という組み合わせ。父バトルプランは Flanders(米2歳牝馬チャンピオン)を母に、Surfside(米3歳牝馬チャンピオン)を半姉に持つ超良血。サウジアラビアロイヤルC(GIII)を勝ったブレスジャーニー、札幌2歳S(GIII)2着のマイネルシュバリエなどを出しているが、全体的な産駒成績を見ると芝よりもダートを得意としている。母の父スピニングワールドは、父としては凡庸だったものの、母の父としてはヌーヴォレコルト、エーシンダックマン、ステラウインドなどの活躍馬を出して成功している。本馬はMr.Prospector 4×3、Storm Bird≒Nijinsky 4×4、Secretariat≒Riverman 5×4と、名牝Flandersの構成要素を強調しているので好ましい。芝・ダート兼用のマイラーだろう。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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