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高いスピード能力も兼ね備えていたジューヌエコール(村本浩平)

  • 2016年11月22日(火) 18時00分


◆長所を生かすために育成調教では折り合いを重視

 ジューヌエコールがデイリー杯2歳Sを勝利した後、育成を手がけていたノーザンファーム空港牧場の東谷智司厩舎長に「重賞制覇おめでとうございます!」と連絡を取らせていただいた。

 その際、東谷厩舎長から、

「ルミナスポイントの仔、走るって言ったじゃ無いですか」

 と言われ、確かにメモを取りながらも、赤本の中で記事に出来ていなかったことを反省した。

 そのメモには「2歳戦向きと言える仕上がりの良さが感じられるだけでなく、高いスピード能力も兼ね備えているとの声も」

 と書かれていたが、その長所を生かすために、東谷厩舎長は育成調教で折り合いを重視した調教を心がけたという。

「行きっぷりもいい馬でしたが、集団調教では後ろで我慢させるように心がけました。それがレースでも終いの脚に繋がったと言えそうです」

 このデイリー杯2歳Sでも前にいる馬を射程圏内においてレースを進め、直線ではメンバー中最速タイとなる33秒6の末脚を使って勝利。ここまで3連勝という内容も含め、安定感なら現2歳牝馬では抜けた存在となっている。

「それでも、今年は同じノーザンファームに強い馬もいますからね」

 と苦笑いを浮かべる東谷厩舎長。その言葉通り、今年のノーザンファーム生産の2歳牝馬は、11月20日の時点でジューヌエコールを含む3頭が重賞で勝ち名乗りをあげている。

 しかも残る2頭とは、レースの度に競馬場をどよめかせるミスエルテと、1歳時からの高い評判を損ねることなく重賞馬となったリスグラシュー。しかもリスグラシューが1着となったアルテミスSで2着となったのがフローレスマジックであり、ディーパワンサ、サトノアリシアはオープンを優勝と、収得賞金上位馬がずらりと並ぶ。

 東谷厩舎長だけでなく、ミスエルテを管理してきたノーザンファーム早来牧場の岡真治厩舎長、そしてリスグラシューを管理してきた、同じノーザンファーム早来牧場の野崎孝仁厩舎長からも、

「阪神JFのライバルは身内となりそうですね」

 との言葉が二人の厩舎長から聞かれていたが、ここに来てミスエルテは朝日杯FSへの出走を表明。とはいっても、ノーザンファーム生産の収得賞金上位馬の多くが阪神JFに出走してくるのは明らかであり、ライバルが多いことに変わりは無い。

 ちなみに昨年、阪神JFを勝利したのは、東谷厩舎長の元を巣立ったメジャーエンブレム。東谷厩舎長にとっても連覇がかかるレースとなるが、阪神JFは過去10年でメジャーエンブレムを含めて7頭の生産馬が勝利と、ノーザンファームにとって非常に相性のいいレース。勿論、東谷厩舎長の務めるA-3厩舎にとっては初めての連覇がかかる。

「メジャーエンブレムの時にはスタッフに応援に行ってもらいましたが、この日は自分が競馬場まで応援に行こうと思います」

 と話す東谷厩舎長の前で、ジューヌエコールは更に成長した姿を見せてくれるに違いない。

 GI連覇と言えば、今週の京都2歳Sに楽しみな馬が出走してきた。2歳未勝利戦、紫菊賞を勝ってこのレースに臨むのがアダムバローズ。生産者の服部健太郎さんは、今年の皐月賞馬、ディーマジェスティを生産した服部牧場の代表でもある。

「ディーマジェスティが活躍しているうちに、次の重賞馬を出さなければと思っています」

 と以前に服部さんから話を聞かせてもらっていたが、ディーマジェスティが活躍した次の世代からアダムバローズが出てきたことは、まさに有言実行が叶ったと言える。

 萩Sを勝利してこのレースに臨むプラチナヴォイスもまた、アダムバローズと同じ日高地区の生産馬。生産牧場の矢野牧場は桜花賞馬アローキャリーの故郷でもあり、その時以来となるクラシック制覇の夢に、プラチナヴォイスが近づこうとしている。

 社台グループ(社台ファーム、ノーザンファーム、追分ファーム、(有)社台コーポレーション白老ファーム)が、毎年のようにクラシック候補生を送り出している一方で、日高地区の生産牧場からも主役となれる存在が出てくることを、昨年、ディーマジェスティが証明してくれた。

 そのディーマジェスティの全弟となるディーグランデも間もなくデビュー。兄弟を数多く手がけてきた、ファンタストクラブ木村牧場でも高い評価を受けており、こちらも兄同様の能力を発揮してくれたのなら、たちまち牡馬クラシック戦線を沸かせる存在となってくれるはず。牡馬、牝馬共に、来年のクラシック戦線がますます楽しみになってきた。

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