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【再起をかける(1)】一度は途切れた心の糸“真の復活へ”三村展久騎手/読者リクエスト

  • 2016年11月30日(水) 18時01分


ホースマンの道は様々である。トップを歩む者、戦う場所を変える者、虎視眈眈と上を狙う若手…。そんな中、自らの生きる道を求めるふたりのホースマンを取材した。

一人目は三村展久騎手(高知)。福山のトップ騎手が、廃止を機にもがく日々を送っている。三村騎手が再び輝く姿を待つファンからの取材リクエスト。彼の本音、覚悟に迫った。

そして二人目は、高嶋活士元騎手(JRA)。デビューから2年後の落馬事故により引退。騎手としての人生は短かったが、現在は東京パラリンピックを目指す障がい者馬術の選手として活躍。新たなステージで再起をかける、ふたりの姿に迫る。

(※掲載スケジュール:三村騎手は11月30日、高嶋元騎手は12月1日。2日連続で公開します)


ノンフィクションファイル

福山(2013年廃止)の元リーディングジョッキーがもがいている。現在、高知所属の騎手・三村展久(32歳)。廃止前の2011、2012年で福山リーディングに立ち、福山最後のレース「ファイナルグランプリ」をビーボタンダッシュで優勝した。「自分の気持ちも体も福山時代の感じに戻したいのに…情けない」と、福山廃止後、大井、佐賀と渡り歩いてきた過去を振り返る。「自分の甘さが原因」と言う元リーディングジョッキーに一体何があったのか。(取材・文・写真:大恵陽子)

競馬場の廃止でプツンと切れた糸


 三村展久が福山の廃止を知ったのは、知人からの電話だった。

「携帯電話を見たら不在着信がいっぱい入っていて、かけ直した時に知らされました。身内の訃報を聞いたような気持ちで、あっけにとられました」

 実感は湧かなかったという。

 三村はこの時、2年連続で地元リーディングに輝いていた。「ポジション争いが激しく、人気馬でもスタートでクビ差出遅れるだけで厳しい」という小回りコースで獲得した栄冠は、当時20代の若者にとって大きなものだった。

「県外の招待レースによく呼ばれるようになり、いい意味での緊張感が張り詰めていました。リーディングジョッキーになると出場できるスーパージョッキーズトライアル(SJT)に出たくて、地元で1位を取れるようがんばっていました」

 SJTで優勝すると、JRAの舞台で行われるWSJS(当時、現在はWASJ)に地方競馬代表として出場できる。三村はSJTで2年連続3位。それも僅差だった。

 より大きな舞台で戦いたいという思いは、普段のトレーニングにも表れた。

「馬の背中の反動を抜けさせるのには、股関節が一番いいと考えています。そのためには股関節の柔軟性が必要だと感じ、ストレッチを取り入れ180度開脚ができるほどでした。また体重が重たいのでジョギングをしたり、下半身がしっかりしていると馬の大きさやパワーに合わせた動きができるので足腰に負荷をかけるよう調教でも姿勢を意識しました」

 リーディングジョッキーとしての矜持があった。しかし、廃止により張り詰めていた糸はプツンと音を立てて切れた。

「もういいやって思いました」

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