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【障害レースを語ろう】西谷誠騎手×高田潤騎手(1)『最強馬決定戦!名手ふたりにとって“中山大障害”とは』

  • 2016年12月05日(月) 12時01分
おじゃ馬します!

▲西谷騎手&高田騎手が今月のゲスト! 障害名手ふたりのディープなトークをご堪能ください


先月のゲスト石神深一騎手に引き続き、今月も中山大障害に注目! 石神騎手が騎乗するのが春の中山GJを勝ったオジュウチョウサンですが、今年はライバル馬たちも超強力。そこで、西谷騎手&高田騎手という障害の名手ふたりをゲストにお招き。「お互いに一目置いてる」という濃い関係のふたりが、障害の魅力を余すところなく語り合います。(取材:東奈緒美)

(※取材日は11月24日です。西谷騎手が騎乗予定だったサナシオンは右前浅屈腱炎発症のため、12月3日付で登録抹消となりました)



年に2回しかないGIだけど、春よりも意識は高い


 西谷騎手が高田騎手の4期先輩にあたりますが、普段のおふたりはどういう感じなんですか?

西谷 競馬のことであったり調教のことであったり、お互いよくしゃべるよね?

高田 うん。調教に関しては俺も結構こだわりは持ってるんだけど、誠さんもすごく持ってるし、技術も経験もある。そういう面でも、他のジョッキーと誠さんとしゃべる時とでは、話の内容が全然違うかな。

西谷 全然違うかもね。競馬が終わった後も、2人で密談したりして。話してておもしろいよね。2人とも馬に乗るのが好きだし。

高田 他の人には言わへんけど、誠さんには話せることは多い。誠さんとなら深いところまで話せるからね。お互い認め合ってるというか、一目置いてる感じ。誠さんが癖馬に乗ってると、「どんなレースをするのかな?」って、すごく興味があるし参考にもさせてもらってる。

西谷 俺も、潤を参考にすることは相当あるよ。潤は向上心がすごく高いから。

高田 ここ! ちゃんと書いといてや(笑)。

 おふたりならではのディープなトークが聞けそうですね! さて、中山大障害があと1か月に迫ってきました。今のお気持ちはいかがですか?

高田 一年を通じて、このレースを目標にしてるところはあるからね。「今年はこの馬で行こう」とか思いながらやって来ているので、常に意識してるレース。「来たな」って感じやね?

西谷 うん。年に2回しかないGIだしね。

高田 春と暮れやけど、春よりも意識は高いよね。

西谷 (JRA賞)最優秀障害馬に向けても、こっちの方が印象は強いからね。俺らの中では“最強馬決定戦”。だから、1着以外のやつは相当ヘコむし、まずは年に2回しかないお祭りに参加してる事が大事だよね。

高田 そうそう。乗ってないのが一番サムい(苦笑)。「俺一年何してんねん!」ってなるもん。絶対に乗ってたいし、乗っとかなあかんレースだと思ってる。

 お祭りっておっしゃいましたけど、恐怖感はあるものですか?

高田 そりゃあ、怖いでしょう。

西谷 うん。それは人気に関係なくね。

高田 ただ、レースが始まってしまえば、怖がってるジョッキーなんていいひんと思うけどね。直前より今の方が感じるのかな。怖さだけじゃなく、ドキドキ感やワクワク感もあるよ。

 観る側からしても、あのレースはハラハラします。

高田 お客さんからしたら、絶対おもしろいレースやと思う。テレビより現地で観てもらった方が迫力もあるし。俺、1回生で見たことがあるの。当日の騎乗が中山やったんやけど、大障害には乗ってなくて。「ものスゴイことやってんな」って思ったわ。観てるだけでドキドキしたもん。

思い出の一戦 マルカラスカルvsキングジョイ


 西谷騎手は中山大障害を過去3勝(99年ゴッドスピード、06年マルカラスカル、09年キングジョイ)。どんな思い出がありますか?

高田 3つも勝ってええなぁ!

西谷 ええなぁ(笑)? ゴッドスピードは、最初に跨った頃はまだ逃げ先行の馬で、初めてGIに挑戦した時は暴走して大敗(99年中山GJ)。で、脚質転換して追い込み馬になってからの制覇だったんだよね。

高田 そうなんや。惨敗したん?

西谷 1番人気で9着かな。鞍ずれもしてたんだけど、赤レンガの時もバッタバタやったもん。そこから脚質を変えて獲れたので、このレースはよく覚えてる。最後は横山義行さん(ゴーカイ騎乗)との叩き合いでね。それでハナ差。2人で「4000m以上走ってきてハナ差かいっ!」って(笑)。

高田 ゴッドスピードに乗ったのって何年目?

西谷 4年目かな。まだ障害のイロハも分かってない頃で、師匠の瀬戸口先生がつかまってても勝てるような馬だって準備してくれたの。

高田 俺もそうだけど、障害に乗り始めて早い段階でそういう馬の背中を知れたのはラッキーだよね。

 高田騎手にとっては、どの馬になるんですか?

高田 初めて重賞を勝ったヒサコーボンバー。最初から障害がうまいジョッキーなんていなくて、馬から教わるしかない。いかに強い馬に乗るかが、技術を上げる一番の近道なんだよね。

 障害って着差が開くので、最初は勝ち馬がはるか彼方に見える。「勝つ馬ってどんなんやねん!」って思うでしょ。でも、勝てる馬に乗って初めて、「障害で勝つ馬ってこんなにすごいんや」って分かるようになってくる。それこそ重賞なんて手の届かないもんやと思ってたけど、勝ったことによってその後ポンポン勝てるようになったし。

西谷 勝ち方を馬に教えてもらうんだよね。障害に乗り始めた時なんて“怖い”しかないし、調教師も「落ちて来るなよ」しか言わなくて、それ以上も求めない。自分に余裕が出てくるのは、勝てる馬に乗ってからだよね。

 2度目の勝利は7年後、マルカラスカルの時でした。

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▲06年マルカラスカルでの中山大障害優勝時(撮影:下野雄規)


西谷 マルカラスカルは本当に強い馬。どこでも走ったし、スピードもスタミナもあるから中山のGIを両方勝ってるしね(06年中山大障害、08年中山GJ)。

 ただ操縦性がすごく難しくて、調教から暴走したりする危うさもあった。一度、中山大障害でふっ飛んでるからね(08年5着)。それこそ、その時に勝ったのが潤のキングジョイ。

 キングジョイは08年が高田騎手、09年が西谷騎手で、中山大障害を連覇していますよね。

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▲自身中山大障害3勝目、09年キングジョイでの優勝時(撮影:下野雄規)


西谷 キングジョイに関しては僕も勝ったけど、、最初は(白浜)雄造君が作って、途中で潤になって。僕はその後だったので、馬が完成されてる状態で乗ったからね。

高田 勝てるようにしといたで(笑)。

西谷 そうだね(笑)。勝てるように作ってくれてたので、「人の馬で勝った」という認識はすごくあった。だからこの時は、ゴール板入ってから1回も手を挙げてないです。

 高田騎手がベースを作ったんですね。

高田 07年の大障害が2着で、その時は雄造君の代打だったのかな? 1回のチャンスをものにできなくて、「悔しいです」って増本先生に言ったの。そうしたら「来年もがんばったらええやんけ」って。それで次の年に勝てたというね。あの時増本厩舎は2頭出しで、誠さんのマルカラスカルが1番人気、キングジョイが2番人気だったんだよね。

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▲▼08年は高田騎手騎乗で中山大障害を勝利(撮影:下野雄規)


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西谷 で、俺がコーナーで飛んで行った(苦笑)。

高田 曲がり切れへんでね。あれはすごかった。

西谷 あの時、返し馬の後に「今日はヤバい。どっかで曲がり切れへんかもしれん」ってみんなに言ったもんな。馬がキレてて、操縦が利かない状態になってたので。

高田 俺としては、同厩のマルカラスカルが1番人気だし、気持ち的にもポジション的にも楽をさせてもらったかな。ただ、俺中山のGIって2着が多いねん。たしか5回くらいある(07年中山大障害キングジョイ、09年中山GJキングジョイ、11年中山大障害ディアマジェスティ、15年中山GJソンブレロ、同年中山大障害エイコーンパス)。まあ、皐月賞も2着やったけど(06年ドリームパスポート)。このレースで2着はきついで。

西谷 きついなぁ。一年間このレースのためにやって来て、それで2着っていうのはね。

高田 しかも去年なんて、師匠の松田博資厩舎の最後の大障害でしょ。どうしても結果にこだわりたかったから。まぁ、最後に勝って締められへんところが、俺らしいのかな(苦笑)。誠さんはええやん! 師匠のところで勝ってるから。俺2着で終わったからね。負けた方がずっと残るしさ。

西谷 残るよね。その馬がその後に勝つんだったらいいんだけど。最近の日本の競馬はスピードが速いから、故障もつきもので。だから一発勝負な面はあるよね。

高田 ある。タフなレースになるし、それだけ馬にもダメージが残る。だから、一戦にかけてます。

 じゃあ今年こそ、2着のジンクスを取っ払いに。

高田 そうやね。まあでも、みんなこの一戦にかけてるし、今年に限って言えばメンバーがむちゃくちゃ強い。だから、今年のレースは絶対おもしろいよ!

(次回へつづく)



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※受付は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。
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東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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