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距離に対する適性の高さを示したアムールブリエ/名古屋グランプリ・名古屋

  • 2016年12月16日(金) 18時00分


5歳で引退はちょっともったいない


 これが引退レースとなったアムールブリエは、やはりこの距離でこそという強さを見せた。

 ケイティブレイブと2頭の組み合わせの馬連複が180円と人気が集中。2kg余分に背負っていた白山大賞典ではケイティブレイブに1馬身先着を許したアムールブリエだが、今回は同斤量となって、しかしその2kgという差がなくなった以上に、距離に対する適性の高さを示した。

 逃げたのはケイティブレイブで、アムールブリエは前半、1馬身ほどの差でピタリと2番手を追走。しかし2周目の向正面に入るとケイティブレイブは徐々に後続との差を広げ、勝負どころの3コーナーではアムールブリエとの差は5馬身ほどに広がった。このあたりではさすがにケイティブレイブが楽々と逃げ切るかに思えた。しかし、映像のカメラが一旦後方に振られ、そして再び前に戻った4コーナー手前で驚いた。アムールブリエが直後に迫っていたからだ。それはまさに一瞬の出来事。直線を向いてケイティブレイブをとらえたアムールブリエは、そのまま3馬身突き放しての勝利となった。ケイティブレイブの脚が上がっていたのも確かだが、アムールブリエは3コーナーから3番手以下との差をみるみる広げているだけに、むしろアムールブリエのスタミナを評価すべきだろう。

 名古屋グランプリは長距離戦らしく年によって勝ちタイムにかなり違いがある。2012年にエーシンモアオバーが勝ったときの2分40秒3がコースレコードとして残っており、過去10年では2010年ワンダースピードの2分46秒6がもっとも遅いタイムでの決着となっている。今年の勝ちタイムは2分41秒7で、過去10年では3番目に速いタイム。それでいてアムールブリエの上り3F37秒5(レースの上りは38秒2)はかなり速い。

 昨年もアムールブリエは3番手追走から37秒6で上がって勝っているが、昨年の勝ちタイムは2分45秒7と遅かった。道中のペースにかかわらず、アムールブリエには最後まで同じような脚を使えるスタミナがあるのだろう。3年前の覇者で、同じようにダートの長距離戦に適性を示したシビルウォーあたりとやっても、おそらく負けないのではないかと思える強さだ。繁殖という役目が待っているとはいえ、5歳で引退はちょっともったいないような気がする。

 無理にハナを主張する馬もいなかったために、今回はケイティブレイブがすんなりと逃げる展開になった。2周目の2コーナーあたりから徐々にペースアップして後続との差を広げていったあたりでは、さすが武豊騎手と思ったが、4コーナー手前で脚が上がってしまった。とはいえアムールブリエ以外の馬たちには差をつけての2着だから、ペースを上げてなし崩し的に後続に脚を使わせる作戦はうまくいった。しかしそれにも屈しなかったのがアムールブリエだったということ。

 それにしてもケイティブレイブはこれで重賞初挑戦だった兵庫チャンピオンシップから7戦連続連対。ホッコータルマエが引退して、川崎記念あたりに出てくればおもしろそうだが……。浦和記念のあと目野調教師は、「GI挑戦は……まだ若いですから」と話していたように、古馬のGI(JpnI)挑戦はまだ先になるのだろうか。

 地元のカツゲキキトキトが3着に食い込む健闘を見せた。離れた後方を追走して最後だけ脚を使っての上位入線ではなく、メイショウヒコボシ、モズライジンという中央馬をすぐ前に見る5番手での追走。さすがに勝ちに行くレースではなかっただろうが、ペースが上がった3コーナー過ぎで、その前の2頭をとらえきった。JRAの有力メンバーが今回とほとんど同じだった白山大賞典では52kgで6着だったのが、今回は54kgを背負っての3着。白山大賞典の経験も生きたのだろう。

 カツゲキキトキトは6月の東海ダービーを勝ったあと、錦見調教師が「馬がもう少し大きくなるだろうと思ってるので、そうしたら本格化すると思う。まだ一緒に走っている相手が弱いので、どれだけ力があるのか楽しみ」という話をしていたのだが、その言葉どおり、当時より馬体重も20kgほど増え、確実に進化していることを示した。逃げようと思えば逃げられるし、控える競馬もできる。輸送も問題ないとあれば、来年はダートグレード戦線での活躍も期待できそうだ。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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