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ホッコータルマエの快進撃はここから始まった/佐賀記念

  • 2017年02月06日(月) 18時00分


きっかけを掴んだ2013年の佐賀記念


 昨年、競馬ファンに惜しまれつつも引退・種牡馬入りしたホッコータルマエ。長年に渡ってダート界に君臨し続け日本競馬史上初のGI/JpnI・10勝を達成した名馬が、トップホースへの階段を上る最初のきっかけとなったレースが2013年の佐賀記念でした。

2013年の佐賀記念、ゴールの瞬間


 ホッコータルマエは2012年1月、3歳になってからの遅いデビューで、初戦は11着。その後少しずつクラスを上げていくものの、当時はあまり高い評価を得ていませんでした。ハタノヴァンクールの3着だった端午S(OP)の最後の伸び脚などすでに光るものはありましたが、初めてのダートグレード競走挑戦だったジャパンダートダービーは5着。続く8月のGIII・レパードSで重賞初制覇。続くGIII・みやこS3着、GI・ジャパンCダート3着、フェアウェルS(OP)2着。翌2013年1月、4歳となっての初戦、GII・東海S3着など重賞レースで上位争いをするものの勝ち切れないレースが続いていました。

 迎えた2013年2月11日『第40回佐賀記念』。1番人気はホッコータルマエ。前年のジャパンCダートで3歳ながらニホンピロアワーズ、ワンダーアキュートら歴戦の古馬に並んで3着と健闘したことなどが評価され、単勝1.5倍に推されました。2番人気は名古屋グランプリを勝ったばかりの7歳馬エーシンモアオバー。3番人気は8歳馬キングスエンブレム。

エーシンモアオバー、キングスエンブレムらがライバルに


断然の1番人気となったホッコータルマエ


 2コーナー奥の引込み線からスタートする右回り2000m戦。レースはエーシンモアオバーが逃げ、ホッコータルマエは2番手。内からキングスエンブレムが3番手。隊列は変わらず、2周目4コーナーでエーシンモアオバーとホッコータルマエが抜け出します。直線に入るとホッコータルマエが手応え十分に突き放し、3馬身差をつけてゴール。2着エーシンモアオバー、3着キングスエンブレム。1、2、3番人気の順という固い決着。

 ジャパンダートダービーを勝った同い年のハタノヴァンクールが1月30日のJpnI・川崎記念を制したばかり。みやこSとジャパンCダートではハタノヴァンクールに先着しているホッコータルマエ。先に結果を出したハタノヴァンクールとの力差をどのように感じているのか…レース直後に幸英明騎手に話を聞いてみると、力強い言葉が返ってきました。

「負けられない気持ちで佐賀まで来ました。能力は抜けていると思っていましたが、今日は力が違いましたね。同世代の中でも“僕の馬が一番強い”と信じています。ぜひ大きいところを勝ちたいです!」

 幸騎手の言葉を裏付けるかのようにホッコータルマエは勝ち続け、5月のかしわ記念でJpnI初制覇。重賞5連勝で帝王賞も制し、ダート王者に輝きます。その後も多くのタイトルを獲得し、ついに2016年1月、川崎記念でGI/JpnI・10勝という前人未到の大記録を達成。過去の名だたる名馬たちも挙げることのできなかったGI/JpnIレースの二桁勝利を現実のものとしたのです。

 そんな史上初の快挙へのきっかけを掴んだのは2013年の佐賀記念。すべてがここから始まったと言っていいでしょう。3歳夏の休養を挟んで秋からの競馬を使いつつ状態を上げ、成長する中で迎えた佐賀競馬場でのレース。対戦メンバーや、コースの形態など様々な条件が合致し、飛躍の一戦となりました。

この佐賀記念を飛躍の一戦とした


 あれから4年。このレースをきっかけにステップアップすることができるのはどの馬か?第2のホッコータルマエはいるのか?佐賀記念を迎える度にそんなことを考えながらレースを見るようになりました。それでは今年の出走メンバーを見てみましょう。

地方馬による勝利も手が届くところに


 JRA勢ではまず連覇を狙うストロングサウザー。昨年のレースは大外11番枠からのスタートで道中は6番手からの競馬。2周目の向正面から内々を回り、直線で抜け出して2.1/2馬身差で重賞初制覇を飾ります。さらに7月のJpnIII・マーキュリーCも制し重賞2勝目を挙げました。佐賀記念もマーキュリーCも馬群を捌いて直線では内を突いての勝利。重賞経験の少ないメンバーが揃った今回、ここぞという時に動ける差し脚を繰り出すことができれば最有力候補と言っていいでしょう。

JRA勢の筆頭は昨年の覇者ストロングサウザー(写真は2015年ラジオ日本賞優勝時、撮影:下野雄規)


 タムロミラクルは昨年10月に京都の平城京S(1600万下)を勝ってオープン入り。重賞初挑戦だったGIII・みやこSは9着。前走・ポルックスS(OP)は大外から追い込んで3着。長く使える脚が魅力。今回、ミルコ・デムーロ騎手とのコンビで挑みます。

 昨年8月の札幌でGIII・エルムSを制したリッカルド。中団追走から勝負所で進出し、昇級初戦で重賞初制覇。前目で競馬をすることも多く、今回はどんな戦法を取るのかにも注目。

 ロンドンタウンは昨年10月に中山の内房S(1600万下)を勝ってオープン入り。続くGIII・武蔵野S8着、GII・東海S7着と苦戦。カネヒキリ産駒の明け4歳馬。今後の成長が期待される1頭です。

昨秋オープン入りしたカネヒキリ産駒ロンドンタウン(写真は2016年西日本スポーツ杯優勝時)


 そして今回なんといっても注目が集まるのが愛知のカツゲキキトキト。JRA勢はストロングサウザー以外、重賞経験の少ない面々。経験値から言ってカツゲキキトキトは当然有力候補に浮上します。昨年7連勝で挑んだJpnI・ジャパンダートダービーで6着。黒潮盃ではミスミランダーの2着、地元に戻って秋の鞍で4馬身差の快勝。JpnIII・白山大賞典は地方馬最先着の6着。続く東海菊花賞、ターコイズオープンを連勝。JpnII・名古屋グランプリではアムールブリエ・ケイティブレイブの3着に大健闘。年明け1月3日の名古屋記念1着。昨年から地元で負け知らず。高いパフォーマンスを発揮し続け、全国区の実力であることは間違いありません。

有力候補として注目が集まる愛知のカツゲキキトキト(写真は2016年ジャパンダートダービー出走時、撮影:高橋正和)


 近年JRA勢が上位を独占している佐賀記念ですが、2008年、チャンストウライ(兵庫)以来となる地方馬による勝利も手が届くところにあるのではないでしょうか。地方競馬ファンとして応援にも力が入ります。

 ストロングサウザーの連覇か?カツゲキキトキトの勝利か?川崎記念のようなニューフェイスの台頭があるのか?今年の佐賀記念の勝利をきっかけにステップアップしていくのは果たしてどの馬でしょうか。

※次回の更新は2月28日(火)の18時。川崎競馬場で行われる「エンプレス杯」のコラムをお届けします!


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【ダートグレード競走とは】
中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。

埼玉県出身。フリーアナウンサー。競馬好きが高じてこの世界へ。2001年から15年間、グリーンチャンネルで「中央競馬全レース中継」のキャスターを務める。2016年度から「グリーンチャンネル地方競馬中継」のコメンテーターとして出演。さらに全国各地の競馬場のトークイベントに参加するなど、中央競馬・地方競馬の垣根を越えて活躍中。

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