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名前とG1制覇

  • 2017年02月11日(土) 12時00分


◆ムーヴザワールドにかかる記録 

 今週土曜日はクイーンC。そして日曜日は共同通信杯。厳しい寒さが続く中でこういうレース名を聞くと、春がすぐそこまで迫ってきているような気がします。その共同通信杯にはムーヴザワールドという馬が出てきますね。同馬には、とある記録がかかっているのをご存知ですか?

 実は、今後この馬がG1レースを勝てば、名前が「ム」で始まる馬による史上初のG1制覇となるのです。

 このネタの元になったのは、以前、朝日新聞の有吉正徳さんから伺った「ケ・ム・ユ・ヨで始まる名前の馬は、まだG1を勝ったことがないんですよ」という話。有吉さんは「JBIS・サーチ」という競走馬データベースサイトで「第5コーナー〜競馬余話〜」というコラムを担当されていて、その第44回にそれについての話が出てきます。

 有吉さんが調べたのは、グレード制が導入された1984年以降とのこと。それより前には、1955年の皐月賞をケゴン、62年の桜花賞をケンホウ、80年のオークスをケイキロクが制していますから、「ケ」で始まる馬は勝ったことがあると言ってもいいでしょう。また、71年のスプリンターズSでケンサチオーという馬が勝っているので、現在のG1レースの前身までさかのぼるとすれば、56年の安田賞(現・安田記念)を勝ったヨシフサの「ヨ」も“前例あり”ということになります。

 しかし、「ム」と「ユ」で始まる名前の馬は、そこまで歴史をたどっても(第1回天皇賞とされるレースより前に行われた帝室御賞典は除く)、現行のG1レースを勝ったことがありません。ついでに、今年からG1に昇格する大阪杯、ホープフルS(ラジオたんぱ杯、ラジオNIKKEI杯を含む)も調べてみたのですが、「ム」、「ユ」で始まる優勝馬はいませんでした。ムーヴザワールドがG1を勝てば、歴史を塗り替える一大事になるわけです。

 逆に、最も多くG1(3歳牡牝3冠レースと天皇賞春・秋、宝塚記念、有馬記念は創設以来。それ以外はグレード制が導入された1984年以降の全レース)を制している馬の頭文字は何でしょう?

 正解は「タ(ダを含む)」。日本ダービー馬9頭(タチカゼ、ダイゴホマレ、タニノハローモア、ダイシンボルガード、タニノムーティエ、タケホープ、ダイナガリバー、タヤスツヨシ、タニノギムレット。2位は『カ・ガ』の6頭なのでダントツ)をはじめ、延べ80頭が優勝しています。

 その「タ・ダ」で始まる馬でも、フェブラリーSと高松宮記念は未勝利(ただし、高松宮記念の前身・高松宮杯では73年にタケデンバードが優勝)。今年もフェブラリーSの登録馬に「タ・ダ」で始まる馬はいませんから、“完全制覇”は早くても来年以降になります。

 とりあえずこれからも「ム」と「ユ」、それに「ヨ」で始まる強豪馬が出てきたら注目してみてください!

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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