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ガルフストリームパークセール開催

  • 2017年02月15日(水) 12時00分


◆大物を探すならココ

 北半球のブラッドストックマーケットは、春を迎えて2歳トレーニングセールのワールド・サーキットが始まる時季となっている。

 その皮切りとなる、「ファシグティプトン・ガルフストリームパーク2歳セール(開催3月1日、公開調教2月27日)」の上場馬が出揃った。

 まずは、セールの名称を御覧になって、「おやっ?!」と思われた読者が多いと思う。昨年までは、「ファシグティプトン・フロリダ2歳セール」と銘打たれていた市場が、改称したのである。もともとは、同じフロリダ州内のコールダー競馬場(現在のガルフストリームパーク・ウェスト競馬場)での開催が長く続いていたセールで、その当時の名称は「ファシグティプトン・コールダー2歳セール」であった。

 ところが、コールダー競馬場における競馬開催日程が増え、それにともない現役の在厩馬が増加。厩舎地区にセール上場馬を収容しきれなくなってしまったため、セールは2010年の開催を最後にコールダー競馬場から撤退。その後の4年は、同じフロリダ州内のトレーニングセンターでの開催となり、2011年、2012年、2013年の3年間はパームメドウズが、2014年はアデナスプリングス・サウスが会場となった後、2015年からガルフストリームパーク競馬場での開催となっている。

 実は、主催するファシグティプトン社は、コールダーからの撤退を余儀なくされた時から、ガルフストリームパークにおけるセールの開催を希望していた。理由は、そのロケーションだ。

 もともとの舞台であったコールダー競馬場も、地域として活気あるエリアに立地していたわけではなく、治安も決して良いとは言えない一帯にあった。その後のパームメドウズ、アデナスプリングス・サウスは、競走馬の育成場という本来の目的からして、いずれも相当な片田舎に立地し、治安は悪くなかったものの、近在に気の利いたレストランがあるわけではなく、つまりは、馬主さんたちを集めてイベントを催す場所として、理想的とは言い難かったのだ。

 そこへ行くと、大きなモールに隣接し、ショッピングに行くにも食事に行くにも至便で、なおかつ、車で10分も走ると高級リゾートホテルが林立する海岸に出られるという、上級馬のセールを行うに相応しいロケーションにあるのが、ガルフストリームパークである。コールダー撤退後、すぐにガルフストリームに移れなかったのは、ガルフストリームパークにもコールダー同様に、馬房不足という課題があったからだ。フロリダ州の外に出ることはないものの、フロリダ州内で開催地が転々とする可能性が残されていたゆえ、ファシグティプト
ン社は11年以降のこのセールを、「フロリダセール」という名称で開催してきたのであった。

 2015年、セールがガルフストリームパークに移ることが出来たのは、広大な駐車場の一角にセール上場馬専用の馬房が新たに建設されたからだ。こうしてスタートしたガルフストリーム開催も今年で3年目を迎え、なおかつ、今後もガルフストリームで継続的に開催できるメドが立ったことから、2017年から「ガルフストリームパークセール」と称することになったのである。

 北米だけでなく、世界各国で行われている2歳セールには、それぞれにキャラクター付けが行われているが、「少々お高い買い物になるかもしれないが、大物を探すならココ」というのが、コールダーセールの頃からの、この市場に対する評価であった。

 その伝統は健在で、昨年も、G1ケンタッキーダービーを制したナイクィスト(父アンクルモー)が、15年の当セールにて40万ドルで購買された馬であった。

 更に、カナダのダービーに相当する加G1クイーンズプレートを制したサーダッドリーディッグス(父ジオポンティ)もまた、15年の当セールに上場され、こちらは19万5千ドルで主取りになっていた馬だった。

 昨年の上場頭数は96頭だったから、そこにアメリカとカナダのダービー馬が潜んでいたという事実は、「大物を探すならココ」という定評を裏打ちするものと言えよう。

 このセールで購買されて日本にやってきた馬は、14年が3頭、15年が7頭、16年が5頭と、決して数は多くない。だがそんな中から、2重賞を制した他、G1NHKマイルC2着、G1高松宮記念3着の実績を残したアルビアーノ(父ハーランズホリデー)、オープン特別の伏竜Sに勝ち、G3ユニコーンSで2着となったストロングバローズ(父マインシャフト)、オープン特別のヒヤシンスSに勝ち、G2UAEダービーで3着となったゴールデンバローズ(父タピット)らが出ているから、日本の競馬との相性もよさそうである。

 今年のカタログ記載馬は162頭。このうち5頭は、3年連続で全米リーディングサイヤーの座に輝くタピット産駒である。上場番号15の父タピットの牝馬は、祖母がG1アラバマS勝ち馬レディジョアン。上場番号38番の父タピットの牡馬は、G1ベルモントフューチュリティS勝ち馬クヴェーの半弟。上場番号80番の父タピットの牡馬は、G1スピナウェイS勝ち馬スウィートロレッタの全弟。上場番号90番の父タピットの牡馬は、母がG1クレメントLハーシュS勝ち馬レディオヴフィフティと、購買者垂涎の良血馬揃いである。

 全米2歳チャンピオンのシャンハイボビー、G1ケンタッキーダービーやG1ドバイワールドCを制したアニマルキングダム、欧州でG1クイーンアンSやG1インターナショナルSを制したデクラレーションオヴウォー、G1ケンタッキーダービー勝ち馬オーブ、北米で芝のG1を5勝したポイントオヴエントリーといった、若手種牡馬の初年度産駒となる2歳馬たちもエントリーしており、彼らが公開調教でどんなフットワークを見せるかにも注目が集まっている。

 これから各地で展開されていく2歳馬マーケットがどんな様相を呈するのか。今後の動向を占う上でも、見逃せないマーケットとなりそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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